速報→「パンラが野毛にやって来た★GA~!GA~!GA~!」studio salt
2010.4.24 19:30
横浜のstudio salt、二回目の東京公演にして下北沢初進出、75分。29日までOFF OFFシアター。
公営で入場無料、毎年のように閉鎖が話題に上る野毛丘動物園。偶然のキッカケで、日本で留学中の皇太子から珍獣パンラが寄贈されることになった。小さな動物園に世間の注目が集まるが、万が一不手際があれば国際問題に発展しかねない。その"VIP"を迎えるために各部署からよりすぐりのメンバーで飼育チームが結成された。
初下北沢にもってきたのは劇団員だけのミニマルな構成。ソルトでは珍しいタイプのコメディ仕立てだといいます。いまひとつ冴えない男たちを描けるのはここの劇団員の強みですが、慣れない歓迎ソングやダンスを練習したり、それぞれの担当動物への想いがすれ違ったりというあたり は初日時点では当日パンフに云われているとおり「コメディは難しい」なと感じさせるある種の固さがあります。なかなか爆笑まではいきづらいところ。
歓迎ソングやダンスのダサさ出来なさ加減は、無料の公共動物園というのんびりした職員たちという感じによくあっていてほほえましいのです。そんな中で東享司は少々嫌みな中堅職員を好演。泣いてる彼をわりと周囲が放っておくのは切ないけれどよくある風景。結果として初日では一番笑いの起きたポイント。
モデルにした横浜野毛の「野毛山動物園」はエンゲキでは最近注目の「急な坂スタジオ」にほど近く、横浜のこどもたちの遠足ポイントの一つで、アタシも子供の頃に行ったきりだけど、ひさしぶりにwebを覗くと「動物を間近に感じ、動物とのふれあいやいのちを教育する場」としての側面が強くなっていて、この芝居の中で描かれている動物園の根っこがここにあるのだなということがよくわかります。人名に横浜市沿岸部の地名を散りばめるのも、ちょっといい感じ。
ネタバレかも
物語後半にいくつか散りばめられた少々ハードなテーマの方がここしばらくこの集団が作り上げてきたものに近く、作家や劇団の得意な方向なのは間違いがなくてさすがに安定感。
たとえば、子供にヒヨコを触らせる「ふれあい広場」で大きくなりすぎてしまったヒヨコをどうするのか、という素人とプロの視点の差。彼らが芝居の中で消えモノというか「食べること」をキーポイントに置くことが多いのは、それが「自分たちが生きるために他のものの命を奪うことだ」ということが通底しているのだけれど、今回の芝居の中ではこの部分こそが、彼らが大事に想うそのことをしっかりと描き込んだ場所になっています。
あるいは、パンラの公開が危ぶまれる緊急事態に対して隠蔽するのか否かというあたり、昨今騒がれるコンプライアンスとか隠蔽体質だとかというはなし。秘密にするのはよくないということはわかっていても、公開した場合に負わなければいけない負荷とのせめぎ合いという構図をごく単純化してコンパクトに戯画化して、しかし切実なかたちで描きます。会社員なら事の重大さは異なっても、こういうことは起こりうることで、その感覚は実に正しいのです。
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