速報→「カスパール・ハウザー」JAM BAL JAN JAN パイレート
2010.4.18 17:00
JBJJPの新作。彼女たちの弱点とされるカツゼツの課題は残るけれど、こちらから前のめりで聴いていくうちに、聞こえてくるようになる不思議。座・高円寺1の舞台の広さをきっちり埋めて、あちこちにとびまわる物語はけっこう楽しい90分。 18日まで。
ある日発見された少年、カスパール・ハウザー(wikipedia)。言葉もおぼつかないし、狭い部屋に軟禁されていたことが伺える物証。謎は謎のままだが。
いくつかの芝居で取り上げられるカスパール(カスペル)ハウザーの物語。そこから発想したさまざまを盛り込みながら、ときに(アタシの友人の云う)ぼやき漫才風、時に詩的に流れる言葉、時にダンス、時にコントにさまざまにリミックス。おそらくはたくさん読んだものを脳内でさまざまに混ぜ合わせての出力。会話していても次々ほかの言葉思い浮かんでしまって、外から見ていると話飛びまくりでワケワカラナイ感じ。あの回転数ではないけれど、思いついて言葉にしてしまう感じはちょっとアタシの腑に落ちる感じ。
オープニングのあと、清水エリナが一人で語りまくる漫才風味。決して巧くない役者なうえにカツゼツは明らかに悪いのだけれど、この芝居のすべての言葉が彼女から生み出されたのだと思うと前のめりになって聴こうと思うのです。 クイズ形式で、野生児、豚娘、狼少女、若人あきら、ピアノマンなど、どこからきたのかわからない謎の人物のさまざま列挙するあたり、同性愛者に対するアップルのロゴの意味とか、ジャイ子のペンネーム、さまざまに盛り込み。これは盛り込みすぎなのはあきらかなのだけど、これを音で、あるいは戯曲で確かめたいと思ってしまうのです。録音したのを売ってほしいなぁ。
あるいは愛犬のしっぽのさまざまのが語られたかと思うとカスペール・ハウザーにまつわる断片が語られたり、あるいは音の洪水も、音楽の洪水も、ダンスのちからも楽しい。
実際の処語られていることの多くはwikipediaなどで調べればアタシでもたどり着けるようなエピソードが多いのだけれど、その膨大な情報を自分の中で租借して、彼女たちの風景としてきちんと描き出す力こそが、作家の強みなのです。 生まれから部屋に閉じこめられている間のカスパール・ハウザーについては、もちろん推測に過ぎないし、その心象風景は妄想ともいえます。blogに至ってはめちゃくちゃです。でも、その「気持ち」が見えるように感じることこそ、この作家の強みじゃないかと思ったりもするのです。
あるいは煙突掃除人というのを設定したのが秀逸でものがたりにぐんと深みが生まれます。その二人の会話は自問自答な感じもするけれど、暗闇に独りならば「幻聴絶好調」にもなる気がするのです。 アカゲザルの感覚遮断実験(母親から隔離して毛布で作った母親、ミルクはくれるが針金の母親というもののどちらに惹かれるかの実験)を通して、カスペール・ハウザーの心象風景に結びつける感覚のセンスのよさ。ハメルンの笛吹男、その一人がハウザーじゃないかというのはちょっとおもしろい。時間軸にならべて夢想するのは実に楽しい空間。一方でコミカルな感じ、 ボックスをさまざまに組み合わせ、最後の授業、最後の一葉、とかとの一瞬芸、 あるいはのど自慢四人がいい。コント風だけれど、「冥途枠」とか「オペラのタイトルが変」とかという飛びまくり感がたのしい。
とはいえ、云われ続けているように滑舌の問題はあまり改善していません。それでも、千秋楽のおかげかどうか、作演以外の役者たちのレベルを上げるという方法は確かに効果があります。舞台が広すぎるという指摘もありますが、アタシはむしろ広い舞台の方がむしろ生きる感じがするのです。
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