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2010.03.07

速報→「喫茶久瀬」文月堂

2010.3.6 19:30

文月堂の新作。ベタな物語がむしろ気持ちいい120分強。7日までサンモールスタジオ。CoRichまつりの一次通過作。

商店街の古い喫茶店。客はいつもの通りの人々。借金を抱えながらも忙しく働いていた母親が亡くなり息子はこの店をたたむしかないと考えている矢先、この店の初代店長こと父親が20年ぶりに姿を見せる。

悪く云えばベタな、作り込まれた人情喜劇という仕立ての一本。「フーテンの父」と息子の葛藤を物語の主軸としながらも、40歳を目前にした売れないバンド男や、仕事に燃える出戻り女の恋心、アルバイトそれぞれの事情、どう考えても騙し・騙されの関係の不釣り合いな男女、友人たちが次々結婚していく焦り、どこか抜けた詐欺師風情など、さまざまな人生の局面の人々をぎゅっと圧縮してパッケージ。120分という時間に対しては過剰ともいえるほどに少々無茶な設定で詰め込んでいるけれど、そういう物語の嘘に「乗せられて」最後まで一気に見てしまう気持ちよさを感じるのです。

当日パンフによれば、40歳を目前にした作演。バンドの連中や現店長の男、音楽事務所の男など、コンナハズジャナカッタ感が漂う中年男たちと、その一つ上の世代である初代店長の男に対しての造型が実に丁寧。女性を描くのが得意な女性作家は数あれど、バカやってる男たちを包み込む女の視点というのでもなく、作家自身の葛藤のようなものが、この中年男たちに投影されている感じにみえる描き方はちょっと珍しい感じがします。

物語の中心となる「息子」を演じた川本裕之をアタシが舞台でみるのはずいぶん久しぶりの感じがします。父親に対する圧倒的な不信感が少しずつ和らいでいくグラデーションを見事に。宣伝美術のデザイナーとしてもあちこちでチラシに名前を見かける彼らしく、その仕事が垣間見える従妹とのシーンは格好良くて憧れるぐらい。その「親」を演じた辻親八の年輪の深さ。終幕の「振り付け」も決まっていてかっこいい。40前のバンド男を演じた安東桂吾は特に前半での物語を引っ張ります。もうすこし若い役者だと思うのだけど40という年齢のある種のタイムリミットに対する焦りがきちんと透け見えてくるのは実に安心感があって、コミカルさとの合わせ技で印象に残ります。日高啓介や眞賀里知乃も村上寿子も人に対するまっすぐな気持ちがそれぞれの年代と関係に応じてきちんと配置されているポジションをきちんと。

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