速報→「赤い薬」MONO
2010.3.7 14:00
10年ぶりぐらいの改訂再演だそうです。95分。大阪・名古屋のあとRED/THEATERで16日まで。そのあと福岡、米子、札幌。
薬の治験をおこなうための専門施設。破格の報酬で半年という長期の治験を行っている男4人。医師や看護師をふくめて、ここを逃すと後がない人ばかり。ある日処方の始まった「赤い薬」は強烈な副作用があって。
治験というどこか危ない感じの行為を背景に置き、 格差、孤独な将来に対する不安など、10年前とは思えないぐらいに今の時代に寄り添う感じ。格差はともかく、このまま独り身ならばどこか忍び寄ってきそうで身につまされます。
一癖もふた癖もある人物描写。考え始めると一つのことしか考えられなかったり、ひがみっぽかったり、病的に負けず嫌いだったり、ひたすら趣味の方向に話を持っていこうとしたりと、強烈なデフォルメではあるものの、どこにでも見かけそうな人を描くという作家の少々意地悪な目線と、それをしっかりと演じる役者の強み。
女一人をめぐっての男二人の攻防がおもしろい。明らかに恋敵なのに、どちらも女に対して好きだと伝えたり拗ねたり強気にいうだけで、男同士は決して対決しない。 孤独ゆえにここをでたら四人で毎日あおう、なんていう訳の分からない連帯感にもつながる、ある種のぬるい仲の良さが、気持ち悪く、しかし腑に落ちる感じ。
あるいは、好きだけれども決められない男とずるずると続けている女が、玩具のような婚姻届けに嬉しいと思う感覚もなんか腑に落ちてしまううえに身につまされるあたしなのです。
おそらく初演時は劇団所属の女優が二人居たはずで、そういう意味では女性を一人に絞ったあたりは大幅に書きかわっているのだと思うものの、ダメ男の中でしっかりと立っている女という構図の置き方は今も昔も変わらず作家らしい感じで安心感すらあります。
なんせこれだけ「やばい」薬、ほかにも格差や孤独など よく考えるとかなり深刻な話題を扱っているのだけれど、それを深刻に見せずに笑いにまじえてひたひたと心の中に染み渡らせる感じ、さすがにこの作家。圧倒的に信頼してしまうのです。
関西の劇団で有償パンフがある場合、中劇場以上の規模ではキャスト表すら折り込まないところが多いのですが、今作はきちんと紙が一枚。スタッフもクレジットされています。白黒のコピー用紙のような体裁のこの一枚だけでも観客の印象は格段に違う、ということはもっと知られていいことだと思うのです。
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