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2010.03.28

速報→「はなよめのまち」キコ

2010.3.25 19:00

チェリーブロッサムハイスクールの作を続けていた小栗剛が立ち上げたユニット。青☆組の吉田小夏の久しぶりの出演(5年ぶりらしい)もおやじたちの間では評判の。がっつり120分。29日まで王子小劇場。舞台へ真上からの投影があるので、それを見やすい席をとるか最前列を取るかは悩ましいところ。

山の方にある町。外の世界とは隔絶されているその地域を支えているのは成長した女を「ハナヨメ」として売ることだった。ハナヨメになれなかった女たち、男たち。穢れることへの恐れ、蔑みも同居する町。

舞台はごくシンプルなつくり。内側に向かって両側からの傾斜で白く塗られています。ハナヨメの衣装もごくシンプル。白と赤が基本、ハナヨメになれなければ青、その前なら白、とか。

姓のみの人々は、個人ではなく、組織でもなく、解体され均質化された世界。女性をたった二つの枠組みに規定し、均質な教育を施し。男たちにもそれほどの選択があるわけではなく。その世界にあって、異質なものが同居できる場所としてのコーヒー店というのは物語の前半において要となります。その中でジャズについて語る男たちがカッコつけているのに、まるで五反田団の「新年工場見学会」MCのように微妙な感じにしているのは意図されたものかどうか。

終盤、祭り、儀式を模したパフォーマンス。かなり強烈にリズムを刻むのは相当に役者に負担をかけるだけのことはあって印象に残ります。

コーヒーは大丈夫なのに麦は、という辻褄の問題は大きな問題ではありません。あるいは、この世界は子供たちがどうやってつくられるのだろうというのもいわない約束。ハナヨメという商品の秘密は終盤にSFめいて語られますが、そこまで書かなくてもいいかなという気もします。

数年ぶりという吉田小夏の少々意地悪い感じは楽しい。彼女の演じる看護婦という役は被差別・差別のポジションを内包する役を田中のり子もしっかり。木下祐子・三枝貴志演じる「外部の視点」は物語をきちんと支えます。 堀奈津美は可愛らしさがいっぱい、終盤での手を取られて走るシーンが美しい。それでも手を取られているはずの女性が主導しているように感じてしまうのは、アタシが女優ばかりを見ているからですかそうですか。

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2010.03.24

速報→「南十字星駅で」キャラメルボックス

2010.3.22 15:30

クロノス・ジョウンターのシリーズの新作。4日までサンシャイン劇場。65分。

クロノスの設計者の男、もう老年の領域になり、息子の夫婦、孫もできた。クロノスは熊本の科幻博物館にあったが、久しぶりの連絡は、クロノスの故障を知らせるものだった。最初の時間旅行者の次のトライのために動作できる状態で保存しておかなければならないクロノスを修理するために赴いた熊本の地で新たな理論で過去への飛跳時間をそれまでの限界19年から大きくのばし57年とできるめどが立つ。
設計者の男の57年前といえば、大学卒業のときの親友と恋人の話が思い出される。親友がその直後に命を失ったのは自分のせいだったのだということも。

時間を飛跳し、その揺り戻しの反発力で大きく未来に飛ばされてしまうという制約をもったタイムマシン、クロノス・ジョウンターのシリーズ。最新作は設計者自身が初めて乗り込むという趣向。過去に戻ることを愚行だとおもいながらも、それを許してきた設計者自身が、ずっと心の奥に刺さっていた棘が抜けそうになるというキッカケでエンジニアゆえに突破口が見えたときの行動力の早さとその一途さのような感覚はアタシの肌感覚に良く会います。

愛情を中心に行動を起こすことの多いこのシリーズの中で、友情がもとになる、というのはアタシの気持ちを揺らすかどうかと言う点では少々物足りない感じがするというのは、本当の親友を手に入れているかどうかという点でアタシが心許ないからかしらんと思ったりもして。

西川浩幸の味わいは近年、こういう年齢を重ねた役でより強固なものに。アタシの観た22日昼時点では渡邉安理の喉はかなり厳しい状態。西川浩幸とからむ役は印象深いものも多く、今作では語り部ゆえに残念。坂口理恵演じる喫茶店の店長のコミカルさは、観客をねじ伏せるかのような圧巻の力に唸ります。

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速報→「ミス・ダンデライオン」キャラメルボックス

2010.3.22 14:00

キャラメルのハーフタイムシアター。人気のクロノス・ジョウンターのシリーズの一本の再演(初演)。大阪、名古屋、中野を経て4日までサンシャイン劇場。65分。

子供のころ入院先にいた「お話の上手なお兄さん」。難病で彼を失い、それがきっかけに女医となった女。同じ難病に対する特効薬をふとしたきっかけで手に入れその効果を目の当たりにしたある日。見合い相手の男は、タイムマシーンを密かに開発しているのだという。

シリーズ唯一の女性を主役とした一本。それなのにというか、それだからというか、ほかのシリーズではある、「飛ばされた人間が待つ」ということがごく少ない別の描き方が印象的。想い、それを実現する着実なちからが強く、ハッピーエンドな作りも、よくあっています。 物語の運びはごくコミカルな部分が多く、バランスは微妙なところもありますが、とにかくスピーディな展開持ち味のハーフタイムシアターによくあっています。そのコミカルな中では圧巻のキャラクタ芝居を繰り出す前田綾が久しぶりの感じですらあって楽しい。筒井俊作の汗かきなMRというのは時間軸のなかの二点、でいい感じで印象に残ります。

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云いっぱなしなのかしら。

小劇場界隈では相当に注目されているfringe.jp。孤独になりがちな制作者を助け、なかなか見えないさまざまな視点を丁寧に、時に厳しく批評する視点は、多くのカンパニーの助けになっているし、観客もいろんなことがわかるとても有用なサイトです。

ここのエントリもfringe blogから時折トラックバックを頂くことがあり、新たな視点、もっと深い論点が本当に参考になります。

ところが、その当のfringeのブログ、特に荻野さんのエントリには、アタシは違和感が抜けません。コメントはともかく、トラックバックのエントリがありません。かつてはそうでなかったと記憶しています。迷惑トラックバックは確かに多くて、niftyの間借りをしていてプロバイダに守られている当ブログでも迷惑トラックバックの削除は結構な手間です。ご自分のサーバだろうと想像するfringeでは想像を絶する量の迷惑トラックバックかと思います。

しかし、blogというツールで展開し、論陣を張ろうというのならば、それはちょっと違うのじゃないかなと思うのです。形はblogだけれど、CMSとしての利用ということなのかな、とは思いつつ。かなり強い意見も書いている以上、云いっぱなしにならないためのしくみだと思うのです。批評・批判に晒される覚悟はするべきで、その門戸は開いておくべきじゃないか、と個人的には思うのですがどうだろう。もちろんメール(これもメールフォームだけですが)という最後の手段はあるのですが、それはちょっと違う気がします。リニューアル後久しぶりにサイトを見て歩きましたが、フォーラムもSNSもすべて登録制で、オープンな形でモノを云うことが出来ない、というのには違和感があります。もちろん、アタシなんかとは比べものにならないぐらいのメール、はては言いがかりまで来ることになるのだろうとも思うので、何もかもオープンは難しいと思いつつ。

fringe bloに関して云うと、 blogというツールの側面がわかっているライターも居て、例えば高崎さん、高野さんのエントリではトラックバックが開かれています。あれだけのサイトのオーナーだからこそ、その門戸は開かれていて欲しいな、と思うのです。

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2010.03.23

【落語】「柳家三之助真打披露興行」鈴本演芸場

2010.3.22 17:20

アタシが見続けている唯一の噺家、柳家三之助の真打ち披露興業。初日にはいけなかったけれど、これはみなくちゃなりません。鈴本のあと末廣、浅草、池袋。鈴本の終演は21:10頃。

舞台の上に祝いの品。奧に幕。賑やかな感じが実に楽しい。披露興業らしい賑やかなお祭り感が楽しい。口上も噺家達らしい軽い感じで、祝いの場だという感じに溢れています。

演目は友人のところからコピペ。有り難い。

  • 才紫 「子ほめ」
  • 一琴 「真田小僧」
  • 仙三郎社中 太神楽曲芸
  • 白酒 「ざる屋」
  • 菊之丞 「元犬」
  • 小円歌 三味線漫談/かっぽれ
  • さん喬 「徳ちゃん」
  • 小三治 「二人旅」
  • 金馬 「親子酒」
  • 口上
  • 世津子 奇術
  • 圓歌 「御前落語」 (らしい)
  • 市馬 「芋俵」
  • 正楽 紙きり
  • 三之助 「長屋の花見」

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2010.03.21

速報→「Shi」Toru Sato Solo Performance

2010.3.20 19:30

桃唄309の役者、佐藤達の一人芝居企画。75分。21日までリバティ。紙からの発想で「し」という音にまつわるさまざま

朝起きてテレビをつけたら速報で自分の死亡のニュースが「ある俳優の歴史」
紙芝居の一本目、いちりこ、にりこに喜ぶ。「いちりこ」 妻は出かけている。赤ん坊はそのまま、男が拾ってきたのは「赤い季節」
あの先生は「どうしてるかな」
修学旅行の思い出を語る、オペラで。「『ぼくの修学旅行』より」
コネタ集「んだす!」
気持ちを追いかける気持ち、ゆるむ気持ち「ゴムゴムの」
銀河鉄道こと、走り始める機関車。「ぽぉ!」

「死」「紙」「四」などにゆるやかにまつわる感じでさまざま詰め合わせ。野田地図の「」はほぼ「死」にまつわるものだけで構成されていたけど、こちらはどちらかというともっとバラエティ。さすがに「死」はほんわかした彼の持ち味とはちょっと違う印象で、少々のブラックユーモア風味に仕上がり。

このゆるふわ感に対して、間の映像のクオリティがやたらに高い。少々アンバランスだとは思いますが、こういうことが続けていけるのは確かなネットワークで、それを使いこなせるのは素敵だと思うのです。

佐藤達自身の体験としての可愛らしい線で描かれた紙芝居(いちりこ、どうしてるかな)を軸にしたパフォーマンス。いい人な風体と語り口が心地よい。どうしても自身の体験、特にこのフォーマットにあっているのは実家にまつわるさまざまなのだけど、ある種の自分の切り売り語り口のパフォーマンス。芸人がやるそれとは違う、ある種のあたたかな感じでゆるゆると続けてほしいなぁと思うのです。

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速報→「卒業?」111

2010.3.20 16:00

大塚秀記、オオナカエイジ、関根正幸によるユニット、111の公演。卒業をテーマにした一日限りの二公演。35分。日暮里駅からほどちかい路地の中、住宅に囲まれた空き地。原っぱというにはちょっと狭い。

式次第、卒業生の入場、卒業証書授与、来賓挨拶、送辞、答辞。ダンス風のパフォーマンスだったり、詩の朗読などをとりまぜて。

歌謡曲だったり名作だったりの朗読を軸にしたパフォーマンス。卒業生を演じたパフォーマーオオナカエイジ、校長を演じた大塚秀記。それっぽい感じに抜き書きしパフォーマンスに。

風は強いものの、天気はよかった土曜日。桜が咲いていれば大混雑になりそうなところギリギリな感じ。家一軒分の小さな土地、「貸しはらっぱ」として貸し出している場所。ブルーシートを敷いて風呂椅子で見る趣向。カフェ営業も。それでも土日は町歩きの人々も多く、通りに面したこの広場、物見遊山な感じのギャラリーもたくさん。無料だからこそ成り立つ感じではありますが、賑わいという意味ではちょっと楽しい。

歌謡曲の一節を抜き出して祝電の読み上げ風にしたり、校長が読み上げるのが有名な一節だったり。あるいはダンス風に体が動いたり、在校生に黒ガムテープを巻いて詰め襟にするなどの、卒業式のフォーマットを借りてさまざまなパフォーマンスをコンパクトに詰め合わせ。

風の強い日だったので、読み上げた卒業証書を丸めて投げるところで始めて、丸めずに沢山の紙を空中に放り出すのは美しく印象に残ります。

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速報→「ULTRA PURE!」東京グローブ座

2010.3.20 13:00

福島三郎の作演で、アラサーチェリーボーイの想いを描くラブコメディ風の仕立て。120分。22日まで東京グローブ座。そのあと大阪。

雪山の別荘。乗馬サークルの仲間たち、男女がスキーにやってくる。別荘のオーナーの女性、その息子が暮らすが、息子は40近くになっても出会いがなくて、何とかしようと都会で遊び暮らしている弟分が、女性たちをつれて毎年ここを訪れるが、うまくいかないのが毎年のことになっている。そこに混じる30目前の男は、美形でもてるが、「馬オタク」でほかのことはあまりに不器用で、今でも童貞のまま。30を目前にこの旅行でなんとかしたいと考えてやってくるが。

美形でモテそうなのに30目前童貞男を三宅健に、不器用な40前男を西ノ園達大、遊んでいる軽い男を瀧川英次に。 ある種のラブコメディなのだけど、男たちはどこまでも不器用でどちらかというと女たちのほうがずっとしたたかなのは、昨今の感じがよくでていて楽しい。福島節らしく、笑わせ泣かせるのだけれど、ピュアな想いに気づいてなハッピーエンドはステロタイプなほどに、きっちりとラブストーリー。

終幕近く、手をつなぎ二階に消えていく二人の後ろ姿はきれいに作られているけれど、こんなにもエロティックな感じは、ちょっと「メインテーマ」(薬師丸ひろ子)を思い出す。違うのは、翌朝のあまりにあっけらかんとした二人と周囲。こういう感じなのかなぁ、イマドキって。これはちょっとびっくりする感じなのです。

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速報→「ブロークン・コンソート」パラドックス定数

2010.3.19 19:30

パラドックス定数の新作。悪人たちの物語。115分。開演に遅れるとまったく入れない構造で場所を使っているので早めに。上手側の方がシャッターの外側が見えて楽しい。22日まで、SPACE EDGE

ガレージ風の場所、出所してきたヤクザが訪れる。ここは工場で、兄弟でこの工場で拳銃を作っている。兄はいわゆる知的障害。弟は工場を回している。刑務所にいる間、ここを支えてきたのは弟分のヤクザで。

正直に言うと、初日時点では外の電車に声が負ける場面が多いのです。たとえば、取り調べは1時間で済んだのに、3日も帰ってこなかった理由が聞き取れないのです。

ヤクザと職人、兄と弟、金は必要だし、旋盤を使うことも楽しい。渋谷署、青山学院などこの場所の感じを積み重ねます。乗り越えたい気持ち、のし上がる気持ち。乗り越えられる側の気持ち。遊び感覚の大学生がそうなって焦ること、刑事とヤクザの持ちつ持たれつ。

終盤での乱痴気な騒ぎ、人の生き死にすら遊びになってしまいそう。それをしばらく見ているうち、子供たちがはしゃいでいる感じにすら見えてきます。

没頭できることのある職人の気持ちというのは、多分今のアタシには本当にはわからないことなのだろうと思います。あたしの感覚でいうと、Excelにひたすらに作業的に数字を入れてたりという感覚か。あるいはランナーズハイもちょっと近いのです。

まだアタシにとってのパラ定は、史実ではない物語を作ろうとすると、ちょっと苦労する感じを受けます。あるいは、この世界のことを描く以上は仕方ない感じもしますが、死ぬ人間が多いという落とし前の付け方ではないところに作家の力を見たい。 男たちの想いが溢れている感じはよくわかっていて。ここは正念場だと勝手に思うのです。

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2010.03.18

速報→「スイングバイ」ままごと

2010.3.15 19:30

岸田國士受賞後の初めての90分。会社と時間と家族を巡る物語。28日までアゴラ劇場。CoRichチケットとしてはほぼ全日程が完売に。

地下300万階、地上2000階を超える大きなビル。毎朝「社員」が通ってくる。会社の社内広報部門。新入社員がやってきて、会社を去る人もいて。

タイムカードを模したチケット。持ってはいるわくわくな感じ。エレベータに乗るのも楽しい。サッカーコートのようなフィールド。「わが星」につづいてかどうか「わが社」の物語。会社に入ってくる新人、先輩たち、年上の彼女、退職者、その妻・娘。会社で目立たないけれど長くつとめているおばさん、窓際の人。ビルのフロアの上方向を未来に、下方向を過去と設定。地球全体の時間を枠組みにしながらも、最終的には会社人生を物語の主軸に据えています。

毎日の変わらない日常の繰り返しというサラリーマンの毎日を、植木等風ではなくてポジティブにポップにとらえるのはイマドキの生活感覚からすると新鮮ですらあります。そのポップさをベースに当日パンフにある父親の定年退職のこと、社内結婚であるその妻、その娘の関係というウエットなものをトッピング。こういう「ふわっと」するような気持ちになる描き方は鋭く、持ち味なのです。夫婦の退職間近な会話なんてのは、泣いてしまう。

あるいは目立たなくても大切な仕事をしている「掃除のおばさん」、新人のわりになんかちょっと甘酸っぱい香りの話をとりまぜて、あるいは重なって。

反面、一フロア一年といってみたり、一フロアが一日になったり、回想っぽかったり、実際に時間を行き来してたり、あるいは「会社を辞めること」が意味するモノがいまひとつ見えきれなかったりと、荒っぽさはすくなくとも初日時点ではそこかしこに残ってしまうのも事実。長い公演期間を生かして、どんどん成長していく予感がします。

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2010.03.15

速報→「Bench Time」年年有魚

2010.3.13 14:00

年年有魚の新作。お茶を飲みながらの川柳教室という体裁の穏やかでゆるい空気の中に潜んだ空気を楽しむ75分。24日まで新宿眼科画廊。これからごらんになるなら三辺囲みの客席のうち、プロジェクタがしっかりと見える正面の一辺をおすすめ。

お茶とお菓子で、川柳の講師を招いての教室。まだ生徒は揃っていないので、ひらがなを書いたカードを引いて五・七・五を作るような遊びをしている。スタッフの知り合いが多いらしい。

ワンドリンクとお菓子つき。観客の応答は期待していないよう(プロジェクタで観客への指示がでる)だけれど、いわばワークショップに参加しているような体裁で舞台は始まります。参加者をスタッフの知り合いから広げる会の常で、微妙な内輪感があったり、隠れた好意やその裏返しといして苦々しく思う気持ちなどをきちんと詰め込んで。

劇団名もチラシも、舞台の設定もじつに穏やかで優しげにみえるのだけれど、作家の視点はそのベースを少々底意地悪くしっかりと見据えています。恋人を取られるんじゃないかという嫉妬の気持ちから人目で裏表になる感じや、そこはかとない好意が見え隠れしたりします。

ネタバレかも。

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2010.03.14

速報→「風の杜」菅間馬鈴薯堂

2010.3.13 19:30

菅間馬鈴薯(ポテト)堂、劇団卍時代のほぼ25年前の作品だといいます。劇作の改訂稿から決定稿までもネットに全文掲載という心意気はもっと知られていいと思います。15日まで王子小劇場。125分。

銭湯に行ったあと行方不明になった老婆、四ツ木橋で発見された。彼女の証言は、広場で狐を見たのだという。が、彼女はその後死んでしまっていて。

ドサまわりを題材にした熱情と人情が持ち味だとおもう最近の芝居になれていると、ある種「ど・アングラ」仕立てにはびっくりします。彼ら自身が「楽しくて、とても暗い迷作」というとおり、実は物語がよくわからなかったり、レビューっぽかったりするのだけれど、その世界に60分浸ったあたりから、なんか楽しくなってくる不思議な感覚。

舞台には柱が三本、電柱を模したのか、白熱灯がついていたり。客席には下手手前から上手奧向かって斜めに突っ切る花道。おかげで土曜夜の客席は芸術的とも思えるほどの超満員。あとは見た目にはほぼ素舞台。そこに幕が仕切られたり、とさまざまな世界が描き出されます。

男たちが語るのは物語の背景らしきもの。行方不明になった老婆が久しぶりに発見され、その理由として口にしたことが語られ、死んでいることも。それに続いて和服に身を包んでの宴。詩だったり歌だったりとさまざまに。後半で一人の死に至るけれど、なぜ死んだかの事件めいたことを描き出したりの終盤。物語を追っかけようとするとかなり無理があって、これをアタシが面白いと思っているかというと本当のところ自信はありません。

でも、日本のある時代の芝居の作り方の文法にそったこういう芝居を、今でも現役で役者たちと作り上げるという心意気の凄みは確かにあります。 物語に入り込むまでに時間がかかるとか、いろんな意味で古くは感じるのだけれど。それは悪いことばかりではなくて、伝えたい何かをきっちりと濃く描き出すパワーのようなものは明らかにあって、それは強くアタシの気持ちに印象を残すのです。

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速報→「月並みなはなし」時間堂

2010.3.13 13:00

時間堂・黒澤世莉の代表作、時間堂名義での三演め( 1, 2)。 気がつけば他劇団へのものも二つみていました( 1, 2) 。105分。14日まで座・高円寺2。気合いの入ったフルカラーのパンフレットはこの三演すべてのキャストが写真入りで並べらられていて、すべて観ているアタシには宝物のように嬉しい。

月移住の選考に漏れた人々の「残念会」に集まる人々。突然現れた役人は欠員を埋めるため、この中から代表者一名を選べという。制限時間は60分。

なんだかんだいって三回とも観ているあたし。ステップアップしたというか、役者も舞台もより洗練され、良くも悪くも「まるでパルコ劇場」という印象を持ちます。役者の荒っぽさからくるある種の味は陰をひそめ、役者と演出のちからでしっかりと作り上げたもの、という印象の仕上がりに。

観客と同じ視点での「聞き手」となるセガワミミを演じた大川翔子は妹っぽさの初演、謎めいた再演のいずれとも違う新たな造形が印象的。熱いエレガ、オノデラキリンを演じた高島玲は、いままでのこいけけいこ以外ではどうにもしっくりこなかったこのキャラクタを「熱さ」を中心に作り上げていて新たな魅力へ。反面でどうにもいままでの役者たちの印象も強く、アタシにとってはそれが見え隠れてしまうのは痛し痒し。

一人を選ぶために話し合う課程で浮かび上がるそれぞれの事情。昨今の自分の事情もからみあって、いままでとは全く違う風に見えるアタシなのです。月に送るなんて大げさなことじゃなくても、転勤に伴って単身赴任するか帯同の異動となるか、ここに居続けるかどうするかなどという、ここしばらくアタシの周りのみんなが悩み抜いたことが箱庭のようにコンパクトにパッケージ。

初めての劇場。椅子も快適で、芝居見せる空間としては広すぎずむしろ1Fの座・高円寺1よりも見やすい印象。

ネタバレかも。

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2010.03.09

速報→「ミツバチか、ワニ」あひるなんちゃら

2010.3.7 19:00

あひるなんちゃらの新作。80分。8日まで駅前劇場。

占いの館で運勢を見てもらった男、聞きたかったのはいい感じになってきているオンナノコとの今後だったのだけれど、占い師は前世が「ミツバチかワニ」だということしか 占ってくれない。

駅前劇場を広く使い、占い師の店と男の自宅の二カ所に設定。変な占い師やら、勝手に入ってくるひとやら、勝手に居着く人やらをざまざまアソート。芝居のお約束を軽々と笑いにしたり、なんでそういう発想が出てくるかという妙な人々。でも物語も破綻せず、駄弁といいながらきっちり書き込まれた台詞の面白さ。

勝手にやってくる女二人、あれだけ喧嘩してるのに離れずに居続けるというのは、女性の友人たちの関係を見ていて時々不思議に思う感覚に近く腑に落ちる感じ。占い師三人はかなりめちゃくちゃで楽しくて。何せ寿司職人風になっちゃう、とかとても楽しい。ペットショップの店員と家に居着く女二人の関係が一瞬にして人間とペットのようになってしまうのも魔法のよう。

ちょっと奇妙な出来事に遭遇したときに、心の中で突っ込んでしまう感覚。タイミングも思い浮かぶことも見事に自分の心の中にシンクロする感じ。観客の感覚と物語の世界のギャップが全編を通じてありつづけることが、強度と笑いのある物語を作り出しているのだろうなぁと思うのです。

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2010.03.08

速報→「赤い薬」MONO

2010.3.7 14:00

10年ぶりぐらいの改訂再演だそうです。95分。大阪・名古屋のあとRED/THEATERで16日まで。そのあと福岡、米子、札幌。

薬の治験をおこなうための専門施設。破格の報酬で半年という長期の治験を行っている男4人。医師や看護師をふくめて、ここを逃すと後がない人ばかり。ある日処方の始まった「赤い薬」は強烈な副作用があって。

治験というどこか危ない感じの行為を背景に置き、 格差、孤独な将来に対する不安など、10年前とは思えないぐらいに今の時代に寄り添う感じ。格差はともかく、このまま独り身ならばどこか忍び寄ってきそうで身につまされます。

一癖もふた癖もある人物描写。考え始めると一つのことしか考えられなかったり、ひがみっぽかったり、病的に負けず嫌いだったり、ひたすら趣味の方向に話を持っていこうとしたりと、強烈なデフォルメではあるものの、どこにでも見かけそうな人を描くという作家の少々意地悪な目線と、それをしっかりと演じる役者の強み。

女一人をめぐっての男二人の攻防がおもしろい。明らかに恋敵なのに、どちらも女に対して好きだと伝えたり拗ねたり強気にいうだけで、男同士は決して対決しない。 孤独ゆえにここをでたら四人で毎日あおう、なんていう訳の分からない連帯感にもつながる、ある種のぬるい仲の良さが、気持ち悪く、しかし腑に落ちる感じ。

あるいは、好きだけれども決められない男とずるずると続けている女が、玩具のような婚姻届けに嬉しいと思う感覚もなんか腑に落ちてしまううえに身につまされるあたしなのです。

おそらく初演時は劇団所属の女優が二人居たはずで、そういう意味では女性を一人に絞ったあたりは大幅に書きかわっているのだと思うものの、ダメ男の中でしっかりと立っている女という構図の置き方は今も昔も変わらず作家らしい感じで安心感すらあります。

なんせこれだけ「やばい」薬、ほかにも格差や孤独など よく考えるとかなり深刻な話題を扱っているのだけれど、それを深刻に見せずに笑いにまじえてひたひたと心の中に染み渡らせる感じ、さすがにこの作家。圧倒的に信頼してしまうのです。

関西の劇団で有償パンフがある場合、中劇場以上の規模ではキャスト表すら折り込まないところが多いのですが、今作はきちんと紙が一枚。スタッフもクレジットされています。白黒のコピー用紙のような体裁のこの一枚だけでも観客の印象は格段に違う、ということはもっと知られていいことだと思うのです。

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2010.03.07

速報→「喫茶久瀬」文月堂

2010.3.6 19:30

文月堂の新作。ベタな物語がむしろ気持ちいい120分強。7日までサンモールスタジオ。CoRichまつりの一次通過作。

商店街の古い喫茶店。客はいつもの通りの人々。借金を抱えながらも忙しく働いていた母親が亡くなり息子はこの店をたたむしかないと考えている矢先、この店の初代店長こと父親が20年ぶりに姿を見せる。

悪く云えばベタな、作り込まれた人情喜劇という仕立ての一本。「フーテンの父」と息子の葛藤を物語の主軸としながらも、40歳を目前にした売れないバンド男や、仕事に燃える出戻り女の恋心、アルバイトそれぞれの事情、どう考えても騙し・騙されの関係の不釣り合いな男女、友人たちが次々結婚していく焦り、どこか抜けた詐欺師風情など、さまざまな人生の局面の人々をぎゅっと圧縮してパッケージ。120分という時間に対しては過剰ともいえるほどに少々無茶な設定で詰め込んでいるけれど、そういう物語の嘘に「乗せられて」最後まで一気に見てしまう気持ちよさを感じるのです。

当日パンフによれば、40歳を目前にした作演。バンドの連中や現店長の男、音楽事務所の男など、コンナハズジャナカッタ感が漂う中年男たちと、その一つ上の世代である初代店長の男に対しての造型が実に丁寧。女性を描くのが得意な女性作家は数あれど、バカやってる男たちを包み込む女の視点というのでもなく、作家自身の葛藤のようなものが、この中年男たちに投影されている感じにみえる描き方はちょっと珍しい感じがします。

物語の中心となる「息子」を演じた川本裕之をアタシが舞台でみるのはずいぶん久しぶりの感じがします。父親に対する圧倒的な不信感が少しずつ和らいでいくグラデーションを見事に。宣伝美術のデザイナーとしてもあちこちでチラシに名前を見かける彼らしく、その仕事が垣間見える従妹とのシーンは格好良くて憧れるぐらい。その「親」を演じた辻親八の年輪の深さ。終幕の「振り付け」も決まっていてかっこいい。40前のバンド男を演じた安東桂吾は特に前半での物語を引っ張ります。もうすこし若い役者だと思うのだけど40という年齢のある種のタイムリミットに対する焦りがきちんと透け見えてくるのは実に安心感があって、コミカルさとの合わせ技で印象に残ります。日高啓介や眞賀里知乃も村上寿子も人に対するまっすぐな気持ちがそれぞれの年代と関係に応じてきちんと配置されているポジションをきちんと。

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速報→「昆虫大戦争」こゆび侍

2010.3.6 17:00

こゆび侍、小さな空間、劇団員の公演。「フンコロガシ」をめぐるダーク・ファンタジーっぽい仕上がりの70分。7日までRAFT。

フンコロガシの生活。人間に標本にされることにおびえ、フン溜まりから転がしてきたフンをひたすら食べる日々。人間の標本の魔の手は止む気配がない。

"F"という昆虫学者を芝居に引っ張りだしたというのは猫ニャー以来かしらん。あくまでナンセンス、コメディーが持ち味だった猫ニャーとはもちろんまったく違う持ち味。フンコロガシたちの避難生活をベースにして、脅威としての昆虫学者という構図。あくまでもフンを転がし、それを食べるという繰り返しだけが全てという昆虫、それを変えたいと願う気持ち、それを甘受する対立軸も置きつつ。

イヤだと想っていても抜けられない、という人間の暗喩を含んでいるのかどうか、じつのところはよくわかりません。ほとんどの絶望の先にある一縷の望み、というシーンは美しい。

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2010.03.06

速報→「Y時のはなし」快快

2010.3.5 20:00

faifaiの2007年作品( 0, 1, 2)の改訂再演。もともとは他の作品と組み合わせていたものを一本立ちさせての90分。6日まで原宿・Vacant。

小学校に併設された学童保育でアルバイトしている男。小学校に勤める年上の女性教諭にあこがれを持っている。夏休みにも学童に居る3人のこどもたち。夏の終わりにはカレーパーティーがある。

北川陽子の作、篠田千明の演出という最強のコンビ。都市圏の一人でいることの寂しさ、騒いでいる子供にもそういう気持ちがあったり、あるいは子供が三人と二人と一人でそれぞれの関係が変わっていくことの面白さ。ほんとうに学童保育で働いているということの観察の強み。

もともとの短編をほぼ倍尺に改訂。物語の骨子はびっくりするほど変わりませんが、三人芝居だったものに、「その他もろもろ」という役を設定したり、見た目に面白い蛇口やカメハメ波、乗れる雲、紙飛行機などさまざまな小道具をさらに増やして見た目の驚きもてんこもりで実に楽しいのです。正直にいえば、ものがたりがほぼそのままにしているために、物語の運びは少々遅く感じないことはありませんが、その楽しさはやはり彼らを見続けていたいという気持ちになるのです。

カレーパーティーでぐつぐつと煮える鍋や「いただきます」は初演そのまま。山崎皓司の魅力がたくさん。中林舞演じる女性教諭の側の冷たさのような側面は新たな発見。初めて二人で会話した終わりに慌てて帰ろうとする理由はネタだけど面白い(なんせ頭に計量カップ乗せて、だ。)。その他もろもろ担当の天野史朗はなんかものすごいことに。同級生たち、という役はアイディアは思いついてもカラダが使えることの強さを感じさせるのです。

外国人の観客が居ることに対してのホスピタリティの強さ。そこに意気込みのようなものを乗せずに、ごくあたりまえに軽々とやってしまうことの彼らの底力を再発見するのです。

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2010.03.03

速報→「The Heavy User/ヘビー・ユーザー」柿喰う客

2010.3.1 19:30

柿喰う客の新作、フランス渡航前の公演はグリーン横の本物のお寺の中で。55分。2日まで。

自殺した娘の母親に電話がかかってくる。同僚を名乗る女性は本当は自殺ではないという。コールセンターに勤めていた彼女が聴いたノイズは。

以前から役者の発する音(声)には敏感な演出家前回の王子小劇場からリズムに乗る芝居を始めています。

ミステリータッチで繋がるものがたり。音を重ね、リズムを作り、緩急をつけて聴かせることの面白さ。音響も照明もほぼ使わない、クチ三味線で音響効果をしたりと音を存分に使う実験。トークショーによれば、フランス上演でも字幕もしないし、日本語のまま上演するのだと云います。なるほど、音に注目すれば「ことば」が無くても物語が成立するという実験する、ということなのかなぁ。

直前まで別の芝居をしていた七味まゆ味はほぼ全体英語の台詞のがんばり、前回は行けなかった渡仏を応援したい。普通の女性の役が増えてきた感のあるコロの女性らしさにやられる。川田希の和服も楽しい。右手愛美の可愛らしさはさすがだがミニスカートの喪服はなかろう、いや、嬉しいけど。

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2010.03.02

速報→「富士見町アパートメント(Aプロ)」自転車キンクリートSTORE

2010.2.28 19:00

どちらかというと不条理な感じが強い二本のAプロ。蓬莱竜太と赤堀雅秋の二本を15分の休憩を挟んで155分。あたしの好みでいえば断然Bプロなんですが、エッジな感じはこちらの方が強い。

【魔女の夜】(作・蓬莱竜太)
深夜、女が居る部屋に手首から血を流した女がやってくる。やってきたのは女優で部屋に居たのはそのマネージャ。近くで車を大破させ、車の中には別の男の芸能人が乗っていたのだという。

タレントがいることがマネージャの全てなのかどうなのか、ということを軸にした心理的なチェスの様相。二人の芝居、少々怒鳴ることはあっても、全体にはフラットでいきつもどりつ、攻め守りということがめまぐるしくいれかわる感じ。正直にいえば、互いのこだわりどころがあたしには今一つ腑に落ちない感じはあって、視座をどこにおこうか迷うのは、体力を使います。 そのぶつかり合いのようなものはすごくて、手のつけられない奇行女優を山口紗弥加が好演。明星真由美は年齢を重ねて自分の行き先を迷うマネージャ役は自身の姿に重なって面白い。

終盤にいくつか、決定的などんでん返しが気持ちいい。それで互いの優位さとか関係がくるりと変わるのは芝居ならでは楽しい。

【海へ】(作・赤堀雅秋)
自殺した男の部屋に集まる喪服姿の男たち。片づけに訪れた双子の弟、彼に10万貸したという同級生の男と友人。回収にやってくるが、無駄な遊びばかりでいっこうに進まない。

独身男のゴミ屋敷、程度の差はあれど身につまされる感じ。有料のパンフによれば、説明的な部分を一切そぎ落としてしまっているのだそう。なるほど物語をここから 物語はというと、根っこにある想いのワンアイディアはごく純粋なものだけれど、部屋に溢れるゴミと同様に、近所の老人や呼ばれる女、あるいは男三人の遊びのようなものなど、沢山のノイズが乗っていて、物語の筋を追って楽しもうとすると少々戸惑います。中盤からのほとんど中学生男子のような無駄な遊びのあれこれやら、部屋に呼んだオンナノコとの会話のあれこれやら流れに身を任せて吉、という感じ。

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速報→「三日月に揺られて笑う」タニマチ金魚

2010.2.28 14:00

牧野エミ、楠見薫、中道裕子のユニット。土田英夫の作演出によるホラーテイストの仕上がり。大阪のあと、28日までスズナリ。105分。

小さな観光地の湖のほとりにたつ遊覧船乗り場。仲のいい三姉妹が売りで、彼女たち自身が経営もしている。若い男の従業員は三女に惚れているが、三女の反応は芳しくない。オーナーの男は若くして頼りがいがあり、家族も居るが、高校時代の同級生だった次女、憧れだった長女、家庭教師をしていた三女ともずるずると関係を続けている。三人は互いにそのことを知っているにもかかわらず、互いに知らない振りを続けている。 ある日、男は意を決して関係を解消しようと三人に告げる。

いい歳をしているけれど可愛らしさをそこかしこに漂わせる三人。水平服をアレンジした観光船の制服はちょっとした何かのプレイのようだけれど、徐々にそれがアリになってしまう土田マジック。

同じ男を取り合っている三姉妹、骨肉の争いではなくて、見えているのに見えないふりを続ける三人。終幕近くで明かされるとおり争いの元を湖に沈ませるという怖さもあるのだけど、その「見えないふり」で長く続く時間を思い返すとむしろそこのほうが何倍も怖いのです。

子供の頃から欲しいものが取り合いになる三姉妹で、収拾がつかなくなったときの解決策も子供の頃から変わらない。そのころの生活を今からも、これからも続けていく感じにホラーとしての仕上がりに。 そういう意味では人間のおかしみとかそういうテイストというよりは、もっと作りもの感満載で、それがむしろ味になっている、という感じすらします。

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