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2010.02.14

速報→「青」reset-N

2010.2.13 15:00

reset-Nの新作。「これがreset-N」という主宰の言葉も心強い105分。14日までスズナリ。

サッカーの日本代表の試合の観客の小競り合いから始まった外国人排斥の運動は組織化こそされていないが「青」を名乗り、どんどん暴力的な方向に向かう。最初に張り紙であおり始めた男二人は今や若者たちに神格化されてすら居るが、本人たちは実際の暴力は起こしておらずその進展には戸惑っている。

外国人の排斥、日本人との軋轢は小劇場ではわりと描かれがちな題材。排斥を声高に主張する、というのはネタ以外ではそう簡単にはお目にかかれませんから、現実を描いたり収束の理想を描いたりというある程度のベクトルの感じはどれを観ても似ていて、しかも現実と理想のギャップに愕然とするわけで、キャッチーなわりには取り込むのは難しい題材だという気がします。スタイリッシュに追いこんだreset-Nの描き出したそれは、「理想」に対するある種の青臭さと現実のギャップを、一人の男を物語の要として描くことでバランスのいい、しかし苦さもちゃんと持った物語にしあがっています。

ネタバレ

もとの著者を聞き逃したのだけど、引用として語られる「暴力を克服するのは芸術と科学」という手垢のついた言葉で思考停止に陥らず、克服は観客と作家の共通の土台として「その先の何か」を模索し描き出そうとする心意気。報復を封印し徹底した非暴力という姿には類型があるけれど、「自分の子供が殺された」ときにもそれを貫けるのかと苦悩する男にあっさりと「逃げること」と答え「自分を守り子供を守るために逃げること」は「女なら誰でも知っていることだ」というくだりはアタシの気持ちを貫きます。

劇中の台詞にあるように「イマジン」的な理想を描くある種の青臭さと、何カ所かに現れる現実とのギャップの無力感の同居はまるで暴力とその克服の歴史の箱庭のよう。この短い時間の物語にきちんと描かれるあたりに作家の確かなちからで、この舞台は美しく作り出されるのです。

直接的な行動よりも、チラシという「誰かが何かをやってはくれないか」という衝動の「空気」戦いをたきつけるという視点もちょっと新鮮。暴力じゃないけれど誰に届くともしれないblogやtwitter、mixiに書くことはできるのに、直接誰かに話したりメールしたりというのが実に苦手なアタシの感覚にちょっとはまる感じがあって、印象に残ります。

乾いた感じで描くのが作家のスタイルかと思えば、この苦悩はじっさいのところどこまでもウエットな感じがします。そういう意味では、作家の調子が出てきたけれど、それは昔への回帰ではなくて、新しい次の物語の語り始め。期待してしまうのです。

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コメント

レヴューありがとうございます。

作中で言及した本はコンラート・ローレンツ『攻撃』です。みすず書房から出ています。

次回作は6月、アサヒ・アートスクエアで『視野』というのをやります。
ご期待下さい。

投稿: 夏井 | 2010.02.16 02:55

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