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2010.02.06

速報→「ムートンにのって」むっちりみえっぱり

2010.02.06 15:00

むっちりみえっぱりの「別枠」としての企画公演だけれど、おないっぱいにむっちり印の100分。7日までアトリエヘリコプター。

男の部屋に遊びに来た友人の女。互いに踏み込めないけれど悪からず思っているという二人の会話はやがて「はてしない物語」
付録付き雑誌の企画会議。互いに勝手な企画を出していて落ち着く気配はなく、煮詰まった「会議」。
踊りの練習に今日集まったのは男女一名ずつ、男はそれを意識していて「Dear アゴスティーニ」。
別の踊りの練習、お披露目直前で練習にも力が入るが、ちょっとした意図の勘違いがあって「千手観音」。
ジャム漬けになった建築家を巡る愛憎劇、という演劇公演、そのカーテンコールの練習で見えてくる演出家と劇団員たちの関係「劇団シーフード第67回公演「オーマイビルディング!」」。
世間に認められた演出家のインタビュー番組はどうにもかみ合わない「トップランナー」。
一人の男の部屋に集まる友人の男たちは落ちつかない。友達の女性たちがここに遊びに来るのだ「若者たち」

単語や人物がゆるやかに繋がりながら物語の上では繋がらない7本オムニバスは 笑いと絶妙の観察眼が身の上のむっちり節が全開で濃密。あたしの周囲の観劇おやじたちが変わらぬ彼女たちの確かな力に通い続けて10年は経ってる気がします。今作、別枠といいながら、エッセンスの濃さは今まで以上、というかじで気楽に楽しめるのです。

初出後、思い直して以下ネタバレかも、に。

一本めの「はてしない物語」の観察眼に舌を巻きます。あたしはこれが一番好きかもしれない。30過ぎには少しばかり中二っぽい夢見がちな女と、オレが節になりがちな男。話題はほとんどすれ違っているのに、互いの好意は空回りする会話を越えてどんどん高まり補い会う感じで進む甘酸っぱさが気持ちいい。なによりすごいのは、終盤で、自分語りを独りよがりに続ける男の会話をまったく聞いていない女というのがまさに「ムートンにのって」いる様子の描写のすごさ。男女がこういう会話になりがち、ということは頭ではわかっていても、それをこういう形で具現してしまう確かなちからは変わらないのです。こういう不思議ちゃんを演じさせると山本由佳は絶妙。

「会議」は空回りする会議の絶妙。過去の栄光、自分の思いこみ、飛びすぎていて整理できていないアイディア、それを無理矢理広げていく無茶さ加減、はては微妙な個人のあげつらいになっていく濃縮された会議の様子は、青年団の「御前会議」とはちょっと違う、しかしこれも確かに日本人の会議のかたち。

「Dear〜」はタイトルが出落ち風にプロレスラー風なのは物語とは全く関係せず、こちらも恋以前の男女の描写の楽しさ。好意を寄せて内心どきどきしまくりな男と、それを全く意に介さないというかむしろ嫌がっている女という対比がおもしろい。

「千住観音」は社会人サークルっぽい感じで、その練習に対する楽しさの期待感のちぐはぐさが、ありそうな感じで楽しい。踊りのトップを誰がとるか、直接的な喧嘩ではなくて、表面はあくまで穏やかに、しかしその根底でぶつかりあっている会話のすごみも、観察眼の確かさ。

「劇団シーフード〜」は少々素笑いも混じるほどのテンション芝居の前半。黒田大輔のこの手の芝居の力は圧巻。無茶ぶりというよりはこじつけて生き抜いてる演出を演じた前田司郎も楽しそうな感じすら。後半はその演出家の素行があらわになるおもしろさ。おまけでついたような、見に来た観客と看板役者のバイトのシフトと換気扇掃除をめぐる会話も、ありそうな感じで楽しい。

「トップランナー」はかのNHKの番組のフォーマット。普段はこの番組見ないあたしだけれど、たとえば本谷有希子出演の時にアタシ感じたような、司会者と出演者の埋めがたい溝というかズレをきっちり描き出すのは舌を巻きます。ゲストの得意なキャラがずれを生んでいるのは確かなのだけど、司会の力量の低さのようなものがそのズレをずれのまま放置してしまうという感じも、この番組らしくて楽しい。

「若者たち」は登場人物の名前を出すと一発ネタバレの感じだけれど、有名人がもしも誰かの家で合コンしたら、みたいな雰囲気。似ちゃいないし、無茶ぶりもいいところなのだけど、幼い男たちと、少々あけすけに過ぎる女たちのなじまなさ加減が楽しい。女に絶望した男のポーズの瞬間も絶妙。

ふわふわとムートンに乗っていたのは女だけではない、という終幕もちょっとしゃれています。

観察眼を濃く描き、ちゃんと笑いにもつなげる彼女たちの持ち味。無理に一本の物語にしなかったことがうまく働いていて、濃縮感が感じさせる仕上がりなのです。

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