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2010.02.28

速報「富士見町アパートメント(Bプロ)」自転車キンクリートSTORE

2010.2.27 19:00

鈴木裕美の演出で4人の作家の書き下ろし。富士見町アパートメントという一室を舞台に。Bプロは鄭義信とマキノノゾミの作品を15分の休憩を挟んで160分。3月14日まで座・高円寺1。

【リバウンド】(作・鄭義信)
女性三人のコーラスグループ。下積みが長かったが、結成二十周年が間近に迫ってなんとか軌道に乗っていた矢先、メンバーの一人が田舎に戻り、グループを抜けるという。その引っ越しの準備、クリスマスイブの夜。

ダメんず、夫婦の冷え、夢半ば、半分ヤケ。結婚していたりいなかったり不倫していたりというある意味ステロタイプな女性を三人取りそろえて描いたアパートの物語。といえば、じてキン好きとしては例の名作が思い浮かびますが、それよりはもうすこしファンタジーが残る感じなのは、作家の違いか、時代の違いか。 序盤のあきらかに出落ちなシーンを経て二十年が経った女たちのそれぞれの道。変わらないとおもっていた関係がいやおうなく変わるざるをえないというのもまた人生。

老婆がスーパーではなくコンビニで食料を買い込む姿に将来の自分を重ねる細かなせりふがアタシの気持ちを揺らします。ダメんずと続けてしまう女、というのはさすがにアタシの気持ちにははまらないけれどそれもわからなくもない。

有料のパンフ(じてキンでは珍しい。インタビュー中心で読みごたえ)にあるとおり「普通なら座組に一人居ればいい」女優を三人も取りそろえたことは、コーラスグループという説得力だけれど、太っていること自体はこの物語の中では逆に何の差別にもならなくて、普通に年齢を重ねた女性たちのものがたりという感じに。キャストを彼女たちにすることで、深刻になりがちな物語をそこかしこで細かな笑いに結びつけるのは観客をニュートラルと深刻に振る効果がある感じがします。設定ゆえの序盤の歌の賑やかさも楽しい。

どうしてもエキセントリックな役が振られがちな池谷のぶえのニュートラルな芝居の印象深さ。平田敦子はヒール的な役回りですこしばかりエキセントリックだけれどそこをしっかり。星野園美は、食べ物への並々ならぬ執着を軸に細かく取る笑いが(なんせピザのパンフレットみながら、煎餅をかじるのだ)、物語には関係ないけれどもリズムを作っていて楽しい。

【ポン助先生】(作・マキノノゾミ)
若い漫画家の新連載は、編集部期待の星であっというまに大人気となる。が、その原作となるネームを切っていたのは、とうに旬をすぎていて編集部からは変人扱いされている古株の漫画家、通称「ポン助先生」だった。

若い漫画家と年上の女性編集、ポン助先生の三人という濃密な構成。マキノノゾミでこれぐらいの少人数というのはあまりないので、ぎゅっと濃縮されて濃くなっている感じ。とくにポン助先生の造形はちょっと凄い。 作れないクリエーターの話は掃いて捨てるほどあるけれど、溢れる才能のクリエーターの飄々とした感じと作るものに対する全身全霊な感じの絶妙なバランス。クリエーターへの厳しさもきちんと織り込まれていて素敵。

あるいは若い漫画家と年上の女性編集とベテラン漫画家の絶妙さ。若い男を二人の年上が見守り、叱咤激励しというバランスになっていて、まるで家族のようですらある不思議な関係になっていて気持ちよく見られるのです。,/P> ポン助先生を演じた山路和弘はこのざまざまなバリエーションにぴったりとはまり彼以外では想像がつかないぐらいに。編集を演じた西尾まりは成熟した年上の女性といういままでは珍しかった役だけれど、こういう世代の感じがじてキンらしい。若い作家を演じた黄川田将也はその間でバランスしていて、ひよこのような弱々しさと突っ張るところのアンバランス感覚がよくあう感じがします。

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