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2010.01.24

速報→「バベルノトウ」国道五十八号戦線

2010.1.23 19:30

58号の新作。25日までサンモールスタジオ。90分。

体育館の地下で生徒が栽培していた植物「バベルの塔」。習慣性も毒性もないのにトリップできるが、法規制が及んでいない。これを97%の高純度な粉末(普通は10%で神らしい)に精製する天才的な高校生と、それを吸う同級生たち。それをみつけた化学の教師は放課後の理科室に集めるが。
製薬会社の研究施設。おなじ「バベルの塔」の研究。若返りという副作用も注目されて、研究員の中で人体実験を始めていたりする。

学生の時代、白衣を着た会社の研究施設という二つの時間軸を交互に行き来します。まるで理科室のような木の机。普通は学生の時代、ビジネスホンを机に置くと研究所、ということのよう。あまりに理科室然とした机なので少々無茶な見立てではありますが、まあそこを指摘するのは無粋かもしれません。

二つの時間をほぼ同じ役者たちが行き来しながらの序盤。学生時代の方に途中から出てくる「センセイの恋人」が徐々に存在感を増して全体の世界を繋ぎ止める要になります。本筋とは直接関係ないけれど、その二人の会話が秀逸。「遊びだったんですが(上がり調子の疑問)」と女が訊けば、「本気だったんですか(下がり調子の落胆)」と男が答える。ごく短くコミカルでもあって。 イントネーションを大事にするという点ではタイトルの「バベルノトウ」もそう。普通の「バベルの塔」というイントネーションではなくて、「蕗の薹」と同じイントネーションでの発音。芝居の中は云うに及ばず、開演前の制作からの注意事項ですらこのイントネーションがきちんと徹底しているのは、劇場の中で世界を確かに作ろうという気持ちがカンパニー全体に徹底しているわけで、実に気持ちがいいのです。

正直にいえば、いつまで続くか出口が見えづらい繰り返しはあまり得意ではないアタシです。物語の途中でのアタシの不安感といったらないのです。しかし、それに余りある仕上がり。初日時点では不安な感じの評判も多かったけれど、アタシがみた折り返しの回ではその点の不安はありません。

やけにキャラクタにたよる人物の造型はあまり巧く機能していない感じですが、普通だったら友達になり得ないような人々が「バベルノトウ」を求めて一緒に居るというのはよくわかる感じがします。

岡安慶子は圧倒的な存在感。キャラクタに頼らずにきちんと物語を。福原冠はそいういう意味ではキャラクタに依存した感があります。教師を演じた金丸慎太郎は中心に居続けて狂言回しのように働かなければならない役としては少々荷が重い感はありますが、しっかりと。松葉祥子は可愛らしく、印象的。ハマカワフミエは先週までの公演であれだけの出番ですから、今作ではスポット的に要所を押さえる感じ。

ネタバレかも

確かに製薬会社営業にとってのシキミと、同級生たちにとってのシキミが同じであるわけはないのに同じ人物だというのには違和感。観ている夢が同じでないように、シキミというのは仮想的に「自分に都合のいいことをしてくれる人物」というわけだ、と理解すべきなのでしょう。ここが少々混乱する感じはあって整理が必要な感じがしますが、 アタシにとっては大きな問題ではありません。

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