速報→「お代り」ラックシステム
2010.1.30 15:00
ラックシステムの15周年記念の第三弾。有償のパンフ(これしか配役が書いてないのはマイナス)の挨拶にあるとおり、「お正月」の姉妹編。120分。大阪のあと、東京はシアター1010(せんじゅ)で31日まで。120分。
大阪の木造の一軒家をめぐる120年の物語。
明治に入ったばかり、政府の外遊に厨房係として随行した男は没落した武士の家では輝く存在で。
明治の中盤、海軍の厨房方の参事として地位のある男、職業軍人ばかりではなく徴兵した兵士が慣れない軍艦の揺れの中でできる食事として考えたものは。
大正。洒落ものの作家らしい男の言え。愛人を囲い周囲からは奇異の目で見られている。焼け出された幼い子供の才能を見いだしてつれてきて。
太平洋戦争中。海軍の厨房方の将校の家族。食べ物の無い時代だが、この家にはそれがあって。
戦後占領下。GHQの将校の宿舎になっている。かつてこの家に住んでいた女がメイドとして働いていて、好意を寄せる若い将校は。
昭和、大阪万博の前夜、今晩の食事について議論している家族のところに、近所の夫婦が訪れる。万博に出品される「未来の食事」を手に入れたのだという。
大女優が若い男と手に入れた家、食事に出かけた二人の留守宅に大きな音が響き。
古い家をめぐりかつての日本人の所作を学ぶツアー。
食事を軸に、洋食やカレー、チーズフォンデュ、はては未来の食と、目新しい食べ物をどん欲に取り入れてきた日本人の姿を軸に、その要所を締めるように、災害だったり戦争だったりと焼け出された人々生きるための「食」にまつわって物語をつないでいきます。序盤は笑わせる感じで押し切るけれど、徐々に想いのようなものを重ねたシーンが増えてきて。
いくつか要所がつながっているものの、家族と家の物語という構造をもっていた「お正月」に比べると、個々の小さなシーンを繋いだ構成は芝居としての構造は弱い感じ。もっとも、それは日本人がさまざまな食を無節操とも言えるほどどん欲に取り込んできた姿に重なる感じがして、語りたいことにはあっているということかもしれません。劇中の「日本人はどんな食にも慣れてきたんだ」というのはなるほど。
関西を舞台にして、これだけの時代を描くとなるとどうしても避けて通れない地震にまつわる描写。さすがにわかぎゑふ、地震があった、というだけで終わらせず、かつての震災経験者の老人の落ち着きを重ねて描き、突然のことにおびえることしかできない少女やうろたえるばかりの若者たちとの対比をきっちり描ききり、アタシにとっての泣きポイントをきっちり。
未来の食事で期待をもたせたら当然カップラーメンかと思いきや、宇宙食。まるでNHKかのような変わり果てた食卓の姿という意味のインパクトは満点で、食が栄養補給ということだけではない、ということをしっかりと描きます。
占領下のメイドという恋心を谷川美佳が好演。軍人の家の母親という静かな役も似合うようになってきた千田訓子がすてき。さまざまな言い訳つけながらもずっと変わらないという洒落っ気の役どころを小椋あずきに安心感。二つの時代の要を押さえる楠見薫の底力を久しぶりに堪能。
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