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2010.01.31

速報→「F」二騎の会

2010.1.31 14:00

二騎の会の新作。端田新菜と多田淳之介の濃密な二人芝居100分弱。7日までアゴラ劇場。芝居の後半に舞台前面の芝に座ったり寝たりする芝居あり、可能ならば最前列を。

部屋に戻ってきて人生初の花見ができたことに感激している女。男は冷静。「彼女にとって利益になること」を第一に考え実行する男。男は実はアンドロイド。花見やアンドロイドの所有はこの時代限られた富裕層にしかできないことだが、女は「不正じゃないけど違法」な方法で手に入れていて。

中央に大きな机というかダブルベッドを模したような大きな台。 花見の春、花火と浴衣の夏、ドレッシーな秋、クリスマスツリーの冬と四季を巡りながらがっつり二人の芝居。アンドロイドは「女の利益」を最善に考える。感情を持たないからそれは愛情ではないけれど、繰り返しによる学習を経てあたかもそこには何かの気持ちが存在するかのように「見える」のです。当日パンフで多田淳之介が語るように、平田オリザによるロボットの演劇にも通じる何かのきっかけがそこにはある感じがするのです。

ネタバレかも。

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:速報→「シンクロナイズド・ガロア」ユニークポイント

2010.1.30 19:30

数学者にして革命家・ガロア(wikipedia 1,2)と東大の学生運動(wikipedia)を「シンクロ」した90分。31日まで「劇」小劇場。近年のユニポとしてはびっくりするぐらいにエンタメ寄りで見やすいのです。

医学部の待遇改善に始まった東大の学生運動。それは広がりをみせ、安田講堂を占拠。暴力行為などとは別に演劇で出来ることはないかと一人の男が注目したのは、数学者・ガロアの物語だった。
ガロアは代数での大発見を論文に書くものの、まったく目に留められることがない。学校や権力に戦いを挑もうとする彼は屈服しない。が彼にも悪意は忍び寄る。

当日パンフによれば1970年生まれだという作演と、それよりは遙かに若い役者たち。アタシも含め学生運動を肌で知るわけではありません。ノスタルジックに描くと云うよりは、まるで数学の射影のように、二つの時間軸の物語を対比づけて見せるという処に作家の衝動があるよう。少々無理矢理な感じはあっても、決闘と機動隊突入を軸として時間軸を自在に操ってみせるのは、芝居ならではの感じで楽しいのです。

数学者というよりは革命家としてのガロアと学生紛争の対比ではあっても、数学という部分で物語の構造の繋がりが薄いように感じたのは惜しい感じ。いや、もちろん群だの体だのが物語の構造に組み込まれているのだとすると、それが理解できなかった自分を恥じるしかないわけなのですが。それにしても、占拠したバリケードの内側で、ガロアの論文を片手にチョークを走らせる男二人のシーンは哀しくて泣けてくる感じが好き。

結果として必要になった膨大な説明台詞、洪明花は狂言回しとして、鮮やかに活躍。時にコミカルときにスピード感で物語の背骨を支えます。 ガロアを演じた宮嶋美子は久しぶりの主役級、誠実でまっすぐ、なのに少々跳ねっ返りな感じによくあっていて楽しい。総長と総長代行は学生紛争の物語の中で唯一のヒールとなるのだけれど、一人で支えた宍戸香那恵は小柄な女優だけれど、実直なまでの誠実さをもつ人間と、総長という立場の建前っぽさとが同居する感じが良くあっている感じで、キャスティングの勝利の面も。演劇で、なんていう無茶なやくどころを与えられた村上哲也や泉陽二は、その虚構っぽさを持った人間というのを軽々と見せてしまうところに底力。何よりコミカルでペーソスすらあって楽しい。

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2010.01.30

速報→「お代り」ラックシステム

2010.1.30 15:00

ラックシステムの15周年記念の第三弾。有償のパンフ(これしか配役が書いてないのはマイナス)の挨拶にあるとおり、「お正月」の姉妹編。120分。大阪のあと、東京はシアター1010(せんじゅ)で31日まで。120分。

大阪の木造の一軒家をめぐる120年の物語。
明治に入ったばかり、政府の外遊に厨房係として随行した男は没落した武士の家では輝く存在で。
明治の中盤、海軍の厨房方の参事として地位のある男、職業軍人ばかりではなく徴兵した兵士が慣れない軍艦の揺れの中でできる食事として考えたものは。
大正。洒落ものの作家らしい男の言え。愛人を囲い周囲からは奇異の目で見られている。焼け出された幼い子供の才能を見いだしてつれてきて。
太平洋戦争中。海軍の厨房方の将校の家族。食べ物の無い時代だが、この家にはそれがあって。
戦後占領下。GHQの将校の宿舎になっている。かつてこの家に住んでいた女がメイドとして働いていて、好意を寄せる若い将校は。
昭和、大阪万博の前夜、今晩の食事について議論している家族のところに、近所の夫婦が訪れる。万博に出品される「未来の食事」を手に入れたのだという。
大女優が若い男と手に入れた家、食事に出かけた二人の留守宅に大きな音が響き。
古い家をめぐりかつての日本人の所作を学ぶツアー。

食事を軸に、洋食やカレー、チーズフォンデュ、はては未来の食と、目新しい食べ物をどん欲に取り入れてきた日本人の姿を軸に、その要所を締めるように、災害だったり戦争だったりと焼け出された人々生きるための「食」にまつわって物語をつないでいきます。序盤は笑わせる感じで押し切るけれど、徐々に想いのようなものを重ねたシーンが増えてきて。

いくつか要所がつながっているものの、家族と家の物語という構造をもっていた「お正月」に比べると、個々の小さなシーンを繋いだ構成は芝居としての構造は弱い感じ。もっとも、それは日本人がさまざまな食を無節操とも言えるほどどん欲に取り込んできた姿に重なる感じがして、語りたいことにはあっているということかもしれません。劇中の「日本人はどんな食にも慣れてきたんだ」というのはなるほど。

関西を舞台にして、これだけの時代を描くとなるとどうしても避けて通れない地震にまつわる描写。さすがにわかぎゑふ、地震があった、というだけで終わらせず、かつての震災経験者の老人の落ち着きを重ねて描き、突然のことにおびえることしかできない少女やうろたえるばかりの若者たちとの対比をきっちり描ききり、アタシにとっての泣きポイントをきっちり。

未来の食事で期待をもたせたら当然カップラーメンかと思いきや、宇宙食。まるでNHKかのような変わり果てた食卓の姿という意味のインパクトは満点で、食が栄養補給ということだけではない、ということをしっかりと描きます。

占領下のメイドという恋心を谷川美佳が好演。軍人の家の母親という静かな役も似合うようになってきた千田訓子がすてき。さまざまな言い訳つけながらもずっと変わらないという洒落っ気の役どころを小椋あずきに安心感。二つの時代の要を押さえる楠見薫の底力を久しぶりに堪能。

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2010.01.29

さよならの始まり。

部署ごとの引っ越しが近づく日々。住んでいる場所を動けない人、東京近郊にこだわる人、新しい挑戦をする人、雇用形態の違いから一緒に行けない人。徐々に人が抜けていく感覚が今日から始まり。あまりに優秀な彼女を繋ぎ止められない自分も会社も不甲斐ない。挨拶を聴いて、目の奧がちょっと熱くなる感じ。

わかってはいるのです。筋肉質なチーム(というわりにはものすごい人数ですが)にするためのこと。 ならば自分に何ができるか考えよう、とあと2ヶ月ぐらいかけて自分を納得させていくのです。 割り切って仕事にどっぷり浸かるか、自分の何かのスキルをつける努力をする、あるいは山でも登るって手もあります。

ちょっと芝居薄めの今週末。このペースになれていこう。

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2010.01.25

速報→「雨を乞わぬ人」黒色綺譚カナリア派

2010.1.24 16:00

カナリア派の新作。24日まで、中野ザ・ポケット。 ポケットではなかなか無い中央通路より後ろまできちんと埋まっている千秋楽。130分強。

山奥の村。治水を拒み続けている。そこには巫女がいる。泣くと大雨が降り山が崩れると信じている人々。首都から恋人を連れて男が戻ってくる。洗練されているはずなのに、この土地に入ると男は姉と土地に取り込まれる。巫女を泣かさないため、外は悲しいことばかりだから建物からは出さず、日々が宴になる。13歳の巫女に次代の巫女を身籠らせるために、男たちが。

若い女性の作家なのに、アングラな作風。それは変わらないけれど、音楽劇という体裁をとることで、びっくりするぐらい見やすいのです。90分までは前段。中里順子、中村真季子、牛水里美が支えるのです。90分に登場する次男と娘。首都にでていったのに、負け戻ってここなら自分は優位だと思う感じ。巫女に対する次女の鬱屈がいいのです。

佐藤みゆきはその後半を圧巻する。ハーモニーとしては成り立ちづらいけれど、次男坊とあわせて、かき回す感じが楽しい。

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2010.01.24

速報→「バベルノトウ」国道五十八号戦線

2010.1.23 19:30

58号の新作。25日までサンモールスタジオ。90分。

体育館の地下で生徒が栽培していた植物「バベルの塔」。習慣性も毒性もないのにトリップできるが、法規制が及んでいない。これを97%の高純度な粉末(普通は10%で神らしい)に精製する天才的な高校生と、それを吸う同級生たち。それをみつけた化学の教師は放課後の理科室に集めるが。
製薬会社の研究施設。おなじ「バベルの塔」の研究。若返りという副作用も注目されて、研究員の中で人体実験を始めていたりする。

学生の時代、白衣を着た会社の研究施設という二つの時間軸を交互に行き来します。まるで理科室のような木の机。普通は学生の時代、ビジネスホンを机に置くと研究所、ということのよう。あまりに理科室然とした机なので少々無茶な見立てではありますが、まあそこを指摘するのは無粋かもしれません。

二つの時間をほぼ同じ役者たちが行き来しながらの序盤。学生時代の方に途中から出てくる「センセイの恋人」が徐々に存在感を増して全体の世界を繋ぎ止める要になります。本筋とは直接関係ないけれど、その二人の会話が秀逸。「遊びだったんですが(上がり調子の疑問)」と女が訊けば、「本気だったんですか(下がり調子の落胆)」と男が答える。ごく短くコミカルでもあって。 イントネーションを大事にするという点ではタイトルの「バベルノトウ」もそう。普通の「バベルの塔」というイントネーションではなくて、「蕗の薹」と同じイントネーションでの発音。芝居の中は云うに及ばず、開演前の制作からの注意事項ですらこのイントネーションがきちんと徹底しているのは、劇場の中で世界を確かに作ろうという気持ちがカンパニー全体に徹底しているわけで、実に気持ちがいいのです。

正直にいえば、いつまで続くか出口が見えづらい繰り返しはあまり得意ではないアタシです。物語の途中でのアタシの不安感といったらないのです。しかし、それに余りある仕上がり。初日時点では不安な感じの評判も多かったけれど、アタシがみた折り返しの回ではその点の不安はありません。

やけにキャラクタにたよる人物の造型はあまり巧く機能していない感じですが、普通だったら友達になり得ないような人々が「バベルノトウ」を求めて一緒に居るというのはよくわかる感じがします。

岡安慶子は圧倒的な存在感。キャラクタに頼らずにきちんと物語を。福原冠はそいういう意味ではキャラクタに依存した感があります。教師を演じた金丸慎太郎は中心に居続けて狂言回しのように働かなければならない役としては少々荷が重い感はありますが、しっかりと。松葉祥子は可愛らしく、印象的。ハマカワフミエは先週までの公演であれだけの出番ですから、今作ではスポット的に要所を押さえる感じ。

ネタバレかも

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速報→「忘れ人」play unit-fullfull

2010.1.23 15:00

フルフルの新作。90分ほど。24日まで「劇」小劇場。

漫才トリオ「アショケ」の一人が死んで一人は地元で喫茶店、もう一人は構成作家として東京で成功し別々の人生を歩んで20年。トリオは地元の元旦の祭りの演芸として人気があったが、20年目の供養として新しいメンバーを見つけて再結成しようとする。

「劇」小劇場の下手側端にある箱状の部分をツリーハウスの梯子から下る階段と設定することで見事に劇場の幅いっぱいに建て込んだツリーハウス。少々無茶な設定ではあるけれど、フルフルとしては格段に美術を張り込んだ印象で見応え。

若くはない夫婦、独り者たち。それぞれに夫婦の関係があったり、元カレ元カノ的なドロドロも今は昔程度には風化していて、表向きは普通に接する人々。年齢を重ねたなりの彼女たちの等身大がそこにある、ということなのかもしれません。

可愛らしいチラシ、序盤はわりとどたばたが続くのとは裏腹に、ある種のダークサイドの吐露が持ち味の作家の白眉は、行き場のない漠然たる不安な気持ちを抱えた兄妹のシーンなのです。 誰もが抱えるその不安を不安としてそのまま吐露させるというのは、「だから何?」となりがちで、物語の力という点では少々食い足りない感じがしないでもありません。認められない構成作家は受け入れてくれるところを彷徨しつづけ踏ん張れない感じだっり、(美人なのになぜか)独りのままでいる妹の漠然たる不安。物語としての絶対的な強さというよりは、その「気持ち」に共感するアタシで、そこがアタシがここを見続けている理由なのです。そういう意味では観客を選ぶ感じはあって、 こういう物語だからこそ、どたばたはとことん笑いに持っていってほしいところ。

男たちを惑わせ続ける美しい同級生を演じた境宏子は薫る色気に説得力。妹を演じた広瀬喜美子は普通の表情の中に隠れる孤独があたしの気持ちを揺らします。遠藤友美賀はある種の迫力がアタシは少々苦手なのだけど、今作では年齢なりに悩む面が見えてちょっと似合う感じ。

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2010.01.22

いろんな人と、呑む、逢う。

水曜日はアタシの行き先へ出張。街や町は見られなかったけれど、職場の工事中、懐かしい人にお世話になります、と挨拶をする。

木曜日は某劇場の新年会。あこがれている人に会話したり、役者、作家、演出がきちんと表彰される楽しさ。来年度の支援会員どうしようかとか。芝居をここで観ること、ここで呑むことは実に楽しいのだけれど。

金曜日、品川「夢や」で呑む。港南口正面、路地を入った先の古い店。ここで週二回通って呑む練習したのは何年前か。アタシへの壮行会をすると大学の同窓生が名古屋からも来てくれる。嬉しい。

アタシを送りだそうとしてくれる、それはアタシ自身の吹っ切りに繋げられる。

あと、この家に居る間に、何本観られるか。

週末

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2010.01.18

速報「EKKKYO-!」冨士山アネット

2010.1.17 18:00

始めてみるEKKYO-!。120分弱。17日まで東京芸術劇場小ホール1。開演前のロビーでは、EKKYO-!デスロックのロミオとジュリエットリーディング。

「ライン京急」。街の会話を切り取ってみせる感じ。ストリートな会話に乗り切れるかどうかがポイントだけれど、まあ楽しめる感じ。いわゆるチェルフィッチュ口調を全体に使うのだけれど、もはやスタンダードを通り越して懐かしさすら感じるのは、チェルフィッチュをアタシが最近観てないからか。17日夜だけのお楽しみ、松村翔子のはじけっぷりも楽しい。

「ままごと」。三人の女性、ほぼ三人二役で、あゆみちゃんを追いかける友達の女の子の図。追いかけて話している場面を描いた紙をぐるりとループにして繋げたようにして見せる面白さ。手法の面白さはあるけれど、それにおぼれることなく切なさをもつ物語をきっちり描いているところがきちんと演劇で、今回のラインナップの中では圧倒的にアタシの好みです。あゆみ初演を見られなかったアタシにには、これを見た至福。

「カステーヤ」。字幕だけ、語りかけ調で演劇が始まります、といっても誰も出てこない、「We are the world」を延々流し、字幕で遊ぶという趣向。実験が身の上ということはわかっているし、それに踊る阿呆する気持ちがないわけではないけれど、どうしても今作のようなものをわかったふりして絶賛する気にはなれないのです。なんていうんだろう、わかっている風の観客の勘違いに甘えすぎているというか。作家が確かな力を持っているのはわかるだけに、腹立たしい気持ちにすらなります。実験は実験室でやるべきで、劇場とか舞台でやることじゃない、ということか。

「モモンガコンプレックス」。さまざまな拍手から始まり、ダンス。「元気な演劇風」「静かな演劇風」「オペラ風」などさまざまな拍手を見せるコミカルな感じ処は結構好き。ダンスは迫力あるけれど、あたしはコミカルな部分の方をとりたい。

「岡崎藝術座」。地球の滅亡を防ぐために移住する星を探しに旅だった男女の宇宙飛行士3名。ミッションは失敗し地球に帰還する間、男女は退廃的なセックスを繰り返している。地球が近づいてきて着水するが。コンサート風にたてたマイクでリーディング風の仕上がり。クスリと笑う感があることはあるんだけど、物語の力という感じにはなっていなくて惜しい感じ。

「冨士山アネット」。喪服の家族たちの物語。鏡の前で取り合う兄弟とか面白い感じではあります。

全体としてみると、お芸術な感じが強くて、物語を求めたいアタシには少々物足りない、芝居からは遠い物がおおい印象なのでアタシにはちょっと厳しい感じです。

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速報→「足りてる男」ピンズ・ログ

2010.1.17 14:00

ピンズ・ログの新作はドラマで名をあげた俳優の事務所を舞台にした物語。がっちり組み上げられ110分にこれでもかと詰め込まれた物語が気持ちいいのです。17日までザ・ポケット。

テレビドラマで人気者となったテレビスターの俳優の芸能事務所。弟が事務所の社長、有能なマネージャーは連れ添って10年になるが、所属女優への不倫がもとで離婚することになっている。他にも俳優やお笑い、構成作家なども所属しており、テレビ局も厳しい時代だが、そこそこには仕事が入ってきているが、お笑いの方向性の違いや、恋愛もそこかしこにあって。

テレビスターといえばそれで事務所は安泰という時代は間違いなくあったと思うのです。「それで一生安泰だと誰もが思っていた」なんていう古き良き昭和は遠くになり、自分のリアルな今を重ね合わせて気持ちが震えます。

「足りている男」はイマドキからすれば少々古くさいけれども、世知辛い背景の上に、人としての想いも職人やプロとしての厳しさもきちんと描き出せる「昭和のゆとり」が豊かな物語を描き出し、世知辛さを背景にしながら、その嘘っぽくなく隅々まで行き届いた描かれ方は実に丁寧なのです。ラジオとお笑い、構成作家、はがき職人という世界への目配りも、物語の世界を豊かにしています。

ちょっと業界っぽい偽装恋愛とか、隠し子とか、離婚とか財産分与なんていうさまざまをエンタメっぽく詰め込みながら、その題材や笑いだけににおぼれることなく作家は人々を丁寧に丁寧に組み上げていて、印象に残ります。

構成作家を演じた迫田圭司の軽くてしっかりした視点は物語に安心感。事務所スタッフを演じた皆戸麻衣は事情を知らない人という重要なポジション、笑いの間がかっちりしていて巧いのはナイロン100℃ゆえか。スターでありながら尊大でもなく貫禄という点で青山伊津美は中心をしっかりと。雰囲気を全く読めないマネージャーを演じた石塚義高もその軽さ故のおもしろさが随所に効いていて物語に緩急を与えます。

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速報→「僕らの声の届かない場所」ろばの葉文庫

2010.1.16 19:00

空想組曲の2008年初演を大幅改訂、演出を詩森ろばとしての90分。17日までArtGarally Complex。

若い画家が集まるアトリエ。圧倒的な力がありながら自分の中の闇を表現できないまま、完成できない男。やってきた女はその絵が完成していないことを見抜き、その絵の完成を楽しみに通ってくる。画家も、完成させようという気になっていて。

絵画のフレームを模した八百屋舞台だったり、宇宙人がでてきたりともっとコミカルだった印象だった初演。再演にあたって、ギャラリービルの一室、最小限の照明や音響、イスとイーゼル、枯れ葉ぐらいの全体に落ち着いた仕上がり。 物語自体も作家自身が演出と戦いながらリライトしたといいます。大枠では変わっていないものの、 静かな会話でわかりやすい妬みのようなものの描かれ方が減っている反面、画家たちの互いのプライドやライバル意識は純粋に芸術に向かっていて蒸留したかのように研ぎすまされていると感じます。

ハマカワフミエが可愛らしいヒロインというのは意外にも珍しい感じだけれど、純粋を感じさせる見た目にもよくあっています。挑発的な批評家を演じた佐々木なふみは若い芸術家たちとのある種のプレイめきながらも対峙するシーンがかっこいい。みどりを演じた清水穂奈美はこの演出においては、(観客を)ゆるませてくれる数少ないポジションで、それに応えるように明るい。初演では男性の役だったオーナーを女性という位置づけに変えているけれど、演じた関根信一の安定感は初演と変わらないものの、初演とはまったく別の魅力を持った役で印象に残ります。

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2010.01.17

速報→「ガールフレンド」国分寺大人倶楽部

2010.1.16 14:30

国分寺大人クラブの新作。当日パンフで云われているとおり、むしろ優しさすら感じさせるテイスト。80分。18日まで王子小劇場。

バイトで知り合い狭いアパートに三人で暮らしている男たち。こたつのまわりに万年床、アニメ好き、ちょっと怖そう、女好きでキャラクタは全く違うがクリスマスの夜に照れながらケーキを食べるぐらいには仲がいい。ある日、アニメ好きの男に彼女が出来た。汚いこの部屋につれてはきたものの、他の二人には、その彼女が見えない。

クリスマスのプレゼントか、という雰囲気すら感じさせる。男の妄想ファンタジー。その一本で貫き通すには少々弱いワンアイディアではあるし、今までのように強い刺激のあるようなシーンがあるわけでもありません。同居する三人はベタベタというほどに仲がよくて、全体に実にやさしいテイストにあふれています。どこかSFで見た感じがしないでもないけれど、中盤のオチだったり、一人をかばうシーンだったりと要所要所は押さえた感じで見やすいのです。

かわいらしい女優をそろえたのに物語の必然から印象を薄く見せるように演出されているのは、もちろん正しい選択なのだけど、女優好きとしてはちょっと寂しい。前へ進む男たちを感じさせる終幕前の転換はちょっと印象的だけど、物語の上ではオチのための準備という感じになるのももったいない感じがします。

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2010.01.16

速報→「美しいヒポリタ」世田谷シルク

2010.1.15 19:30

「夏の夜の夢」に物語を求め、若い作家の見る今の私たちの姿を被せて仕上げる105分。17日まで劇場「楽園」。

ネットショップや携帯コンテンツを作る小さな会社。開発中の携帯アプリ「お喋りアプリ」に社員はみなテストを兼ねてユーザ登録をしている。あからさまに恋人だったり、片思いだったり、浮気を疑っていたりする。社員の一人が出入りの業者と結婚することがわかり、パーティーを開こうという、少々浮ついた一日。

「夏夢」の王と王女、男女四人の若者の主軸のものがたりを拾い上げ、携帯コンテンツベンチャー社員たちのささやかだけれど本人たちに取っては重大な物語を重ねて描きます。 残りの半分は、オフィスの会話の片鱗からリンクして想起されるままに、「夏夢」そのものずばりをコラージュしながら。終幕などの小さな追加はあるものの、物語は「夏夢」そのもの。こうコラージュするのか、というのは原作を知っているゆえに楽しいのは、アタシにとって前回とは違う印象。ならば今作も知らないで見ているひとにはどう見えるかしらん。

日常の何かの会話をぼんやり聞いていて、芝居やドラマ、小説のシーンがフラッシュバックする感覚。そんな経験があるならば、これを楽しいと思う感覚をわかってもらえる感じがします。しかしアタシが好みなのはむしろ、現代の風景を切り取る作家の眼光なのです。

キャラクタづけをマンガだったりRPGのように明確にしているのは、携帯コンテンツという背景を巧く引き込んでいるし、ステロタイプではあるけれど、芝居を見やすくしていてアタシはうれしい。作家の強さは、そこにとどまりません。 何気ないことばや関係はそんなのものすごいものではないけれど、そのけだるさを含みつつ日常にありそうと思わせる何気ない言葉の選びとり方が、アタシにはいとおしい。

いくつか長めのダンス。あるいはリズムに溢れる感じ。「わが星」の後では少々分が悪いのは痛し痒し。

深い森、闇の中に迷い気迷う夏夢の世界。現代パートではそれを携帯の圏外(という見えないとき)に置き換えます。なるほど、普通に会話しているあたりでは、みんなが携帯の画面を見ている感じ。視覚を携帯に依存する気持ちに投影するというのは新しい解釈で面白い。

前園あかりのヘレナが抜群に面白い。堀越涼のパックは迫力もあってビシッと決まる。石井舞は実に可愛らしい。岩田裕耳の声を生かした感じもいい。堀川炎はコミカルでも可愛らしい感じでも決まる。

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2010.01.15

いろいろはじまる。

春からは引っ越すことになるわけですが、職場ごと、ということになれば大量の人が動くことになるのでさまざま動き始めて。グダグダくだを巻いていても、まあ行くことには決めているわけで、じゃあそっちの生活はどうかな、ということをそろそろ考えて楽しみにするというのも前向きでいいことで。

王子小劇場の支援会員の募集も始まり、アゴラももうすぐ支援会員募集でしょう。さてと、アタシはどうすべ。

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2010.01.11

速報→「この部屋で私はアレをして(ガールズパジャマパーティ編)」ガレキの太鼓

2010.1.10 22:00

アタシは初見の劇団です。マンションの一室でテーブルまわりの三人の女の会話を壁に沿って座って見て聞く60分。13日まで「新婚夫婦編」と2バージョン。月島駅待ち合わせ、近くのマンションにて。深夜版と名付けられた22時開演。通常版との違いはわかりませんが。

居酒屋バイトで知り合っってずいぶん経つ女三人。二十代前半の一人のマンションにまもなく三十路の二人が遊びに来た夜中。テーブルの上にはアルコール、お菓子、カレー皿。テレビを見てぐだぐだして。二十代はまもなく海外へ行く予定。一人は縁遠く、一人は不倫中の筈だったが。

女三人(ぐらいの)ぐだぐだしてまとまらない話、という体裁の芝居が大好きなアタシです。ほんとのマンションの一室で木戸銭とって見せるというのは、それでも初めての体験。物語らしい物語はほとんどなくて、それぞれの恋愛だったり、カラダのことだったり、人のうわさ話だったり。

特に前半、殊更に下ネタまわりの話に物語を振るのは少々の違和感。もちろん女性たちだけでしている話をアタシが聞くことは決してないわけで、リアルなのかどうかはよくわからないけれど、見せ物としての前提で作っている感じ(いや、もちろんそうなのだけど)が見え隠れ。かといってリアルな男がそこにいる時の女性の会話とも違う。(読んだことないけど)an-anかあるいは女性セブンかという感じがします。(何のたとえか既にわかりませんが)

それでも、等身大の女性たちの一面をコラージュしてみせているという雰囲気の中にいると、のぞき見でにやけてしまう、というよりはどこか安心する感覚があるのも事実なのです。つくづくアタシは女性たちが会話している横にいるのが好きなんだなぁと思うのです。もし本当に自分がこのシチュエーションだったらやけにはしゃいだり緊張して呑みすぎるのは目に見えているわけですが、観客として見ていられる感じなのは適度な緊張感と弛緩した感じが混ざり合い気持ちいいのです。(なんだこの告白)

携帯にかかってくる電話の向こう側の声も時折聞こえてきたりするのも楽しい。上階の新婚家庭のノイズ、というのはアタシには聞こえないけど、あれは音あったのかなぁ。

おそらくはウィークリーマンションの一室を借りての。15人を駅で時間差持って3ブロックに分けて集め、少人数ずつ案内するというのはこの手の公演のやりかたとしては巧い。もうひとつ、アンケートをを書くような場所も時間も取れないことを見越して、終演後30分ほどでメールにてアンケートフォームを送ってくると云うのは新鮮で面白い。携帯のアドレスに送られれば、帰宅の途中で書いて貰える可能性もあるし、集計も確実にしやすいはず。帰宅途中にアンケートが送られてきたというのは初めての経験で、これはいろんなところで使えそうな手だと思います。

終幕直前にワインをほんの少しお裾分けしてもらえるのは嬉しい。でも昨今面倒くさくて厳しいからなぁ、バイクとかで来てる人がいないのを願うばかり)

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速報→「キミ☆コレ~ワン・サイド・ラバーズ・トリビュート~ 」シベリア少女鉄道

2010.1.10 19:00

劇団としても久しぶりだけど、あたしもずいぶん久しぶりに見ます。土屋テイスト満載でまさに「スピリッツ」。60分。17日までタイニイアリス。席はかなり厳しいですが当日券も結構でているようです。

アイディアが全くでない漫画家とそのアイディア待ちのスタッフたち。切ない気持ちを抱えた女に見えている風景は毎日変わらないけれど、気持ちが変わると。

だまし絵のようなパズルゲームを信条とするシベ少らしさ満載。序盤の、まさに「なにも起こらない」し「やけにテンポの遅い」序盤に我慢を強いるのも彼ららしい。そこでおもしろい芝居一本にするのではなくて、全体を短くして全体の観客の負荷を下げている感じでもあるけれど。

これもいつものことだけれど、その元ネタに対して観客がどれだけ親和してるかということにずいぶん依存します。年代的にはがっつりぴったりきますが、複数のネタを組み合わせるだけに、そんなに詳しくないものも混じってて、でも、どれかはミートするというのは実は巧い作り方なのかもしれません。

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速報→「カガクするココロ」青年団

2010.1.10 15:00

現代風にこまかく台詞を変えていますが、変わらぬ青年団のスタンダード。90分。26日までアゴラ劇場。「北限〜」よりは後の前の時間軸になるけれど、どちらか一本ならアタシはこちらを選びます。

大学の研究室。遺伝子操作で野菜を大きくしたり、あるいは生物を作ったり。教授は類人猿の脳を肥大化するというアプローチを思いつき、研究者たちにあたらしいプロジェクトの指示を出し始めている。

「北限の〜」よりは数年前の設定なのだけれど、パソコンや携帯電話、はてはマイケルジャクソンの死など今の時間軸で描かれます。それなのに物語というか描かれている骨格はある種の古さがあって、 「北限〜」の猿とは微妙に時間軸が入れ子になって不思議な感じになっています。

こちらも望まぬ妊娠、生物というようなことが取り上げられているものの、全体としての雰囲気は科学に対して無邪気ともいえるほど、「前提として前向き」に感じさせるようになっていて、そういう意味では古い感じの枠組みではあります。いまどきの平田オリザならば決してこういう姿勢では書かないだろうなという感じ。でも、あたしはその無邪気さ、むしろ今だからこそ、そのノスタルジーに泣きたくなるほど気持ちが震わせられるのです。

アタシの前に座っていた学生風の5人組、おそらく初見のようで、この芝居について語りたいという風に興奮して連れ立って歩く姿。世の中にもっとエッジの効いた最先端は外にはあるかもしれないけれど、こういう体験を生み出す確かなスタンダードなのは間違いがなくて、その力を持っているのです。

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2010.01.10

速報→「黒いインクの輝き」ブルドッキングヘッドロック

2010.1.9 19:00

アタシは初見ですが10周年。漫画家のスタジオという女の園のさまざま。130分。18日まで、サンモールスタジオ。

真冬、山の中のスタジオ。アシスタント5人を抱える女性漫画家が姿を消して時間が経った夜。人気連載「アートフルライフ!!」を持ってはいるが、センセイはすでに書けなくなっている。それでも優秀なアシスタントが物語、作画などを分担していてすでに回っている。センセイは帰ってこない。

女性がたくさんの現場の面倒くささ。漫画家を筆頭に、優秀だったり酒癖だったり自意識過剰だったり慣れない感じだったり、いじられすぎだったり。お互いの苦手意識、媚びてる女、はいったばっかりでまったく勝手が分からない、親がきてしまうぐらいに家族に恵まれる、さまざまな女たち。作演をはじめ三人の男もでてきますが、意識的に添え物な印象。

正直に言えば、人数が多すぎる感じはします。賑やかしでもなく、生きていない役がある感じ。物語がこの人数を要請しているわけでもないと思うのです。もう一つは微妙にナイロンぽい感じ。母と家政婦の「出来る・出来ない」のあたりのひっくり返しの感じにもっともそれを感じます。

職場の規律の面倒くささも女性の職場っぽい感じ。昼に観た「北限の猿」とは違う切り口だけれど、人間の関係の面倒くささという点で近い感じがします。

漫画家、妹、元夫、現妻のさまざま。仲の悪い姉妹、過去にはペンネームに使うぐらい仲よかったのにというあたりを主軸。居なくなった人のことを心配するのはもちろん正しいのだけれど、ビジネスの方はその漫画家が居なくても描けるのに、何を逡巡しているのだろうという感じはあります。第一アシスタントのこだわりなのかどうなのか。他の女性たちもずいぶん面倒臭い感じがぷんぷん。

アタシは男ですが、どうしても女性たち自身の言葉や物語という感じがしません。男が見ている女性たちをサンプリングした感じが違和感を持たせます。もちろんそれは大きな問題ではなくて、きちんと見せ場も楽しめるところも沢山あって、「ありそうな感じ」を沢山見られる楽しさ。

辻沢綾香の微妙にコンプレックスな感じ、津留崎夏子の「媚びる」感じ、梅舟惟永の斜に構えてるように見えてまっすぐな感じがそれぞれに魅力的。

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速報→「北限の猿」青年団

2010.1.9 15:00

青年団のスタンダード。懐かしい感じすらするけれど、オリザ作品の中でも若い役者たちの座組でだからこそ生きる一本。80分。26日までアゴラ劇場。

(類人)猿を教育などによって進化させ人間に近づけようという「ネアンデルタール作戦」の研究室。生物、農業、心理などさまざまな研究者、院生、学生が集まっている。

2005年の若手公演から計画されたであろう若い役者たちの座組の新バージョン。全国を経ての東京公演。若手とはいっても、最近の主力になっている役者も多く、不安はなにもない感じ。

後ろを向いて小声でぼそぼそ喋り、同時多発、まさに「静かな演劇」のその形。今になってみれば、そういうフォーマットとか様式のような感じすらあって、スタンダードになったのだなぁと十分に感じさせるのです。一方で、そのフォーマットや様式に縛られているという感じがするのは若い役者の座組だからという感じも少ししつつ。

ネタバレかも

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2010.01.08

あけまして

職場も日常の感じになりつつ、どう変化するか見えてきつつ。うじうじ考えてしまうけれど、悩んでいても始まらないし、稼がねばなりません。

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2010.01.04

速報→「新年工場見学会2010」五反田団

2010.1.3 19:00

毎年正月恒例のイベント。4日までアトリエヘリコプター。休憩20分弱をはさんで200分ほど。休憩中のホットワインは無料、1Fロビーはカフェ営業で豚汁・焼売やアルコールの販売も。終演後も営業しているのはコクーンも見習うべきだと思ったり思わなかったり。

1. 黒田・赤堀は友人と連れだって男三人でテーマパークへ。海賊の人形の間を舟で通り抜けるアトラクションに入った三人はやがて海賊に捕らえられ、海賊王と対決する羽目になる。得意分野でいいと云われ演劇で対決することになって「俳優のニセモノ〜黒田の一生」(五反田団)
2. 村人と仲良くなりたい赤獅子が人々の前に姿を現して「泣き赤獅子」(紅虎会)
3. 金子は中学高校と女性とつきあうこともなく、桐朋に入学して演劇の道に進み「演技道のニセモノ〜金子たけのりの半生」(ハイバイ)
(休憩)
4. ザ・ノーバディーズの演奏(耳鼻科、平成二十二年、図書館員、正月)
5. 人間とこけし、何気ない正月の風景のような「こけしのおしゃべりと詩の朗読」(グミの実・南天・山椒の木)
6. ラジオ番組・(東京ウエッサイ「街角相談室」)、の様子「万有引力」(ザ・プーチンズ)

いつもの通りにゆるゆると。何の対抗心かコクーンに今かかっている芝居とほぼ同じ時間はさすがに長い。三が日だからこそもちょっと早く始まってくれるとうれしいなと思ったりもします。

「黒田の〜」は壮大な小劇場業界楽屋落ちオンパレード。小劇場の客やスタッフ以外を相手にする気がハナからない物語なのは新年会の余興的で、小劇場に慣れない観客にはあまりお勧めできない感じ。結構長かったり、やけに役者が多すぎて使い切れていなくて息切れした印象もあります。いわゆる現代口語演劇はスタンダードではあるけれど、それを今更新しいものとして取り上げるような語り口は確信犯だと信じたい(でないとすると、あまり趣味は良くない)。もちろんそのゆるゆる、やる気があるんだかないんだかわからない感じで笑えるのは抜けきらない正月気分とアルコールのせいばかりではなくて、楽しいのですが。

「泣いた〜」は獅子舞の演目っぽいけれど、たぶん「泣いた赤鬼」をこのフォーマットに当てはめた感じ。段ボール製の獅子舞とわりときっちり舞う兵藤公美の落差も賞がつっぽさも楽しい。

「演技道の〜」は作こそ岩井秀人だけれど演出は永井若葉という新鮮な組み合わせ。「道程」ではなく「童貞」を語るというツカミから、岩井秀人の語り口(実際には複数の役者が分担する)で役者の半生を描くという枠組み。中二的な感じから恋愛への流れ。恋人になったのに手を握ったきり先に進めないじれったすぎる大学生の男女のシーンが、今更あたしの気持ちに沁みてきたりします。菅原永二、2日のみて書いてあるけど出てたよなぁ。巧い。

「ノーバディーズ」は脱力系の京都からのバンドでこのイベント恒例に。前田司郎が好きで仲がいいんだろうな、というぬるさ加減を楽しむのが吉。

「こけしの〜」は、こけしと(絵を飾るような)額を使って人形劇っぽく使う感じ。人間とのかけあいや、大きさがバラバラの小道具を使ったりと、ハッチポッチステーションぽい感じなのだけど、こけしを動かしている俳優が丸見えなのがおもしろい。物語の語りたいことはさっぱりわからないけれど、面白がれるところがあちこちにちりばめられていて、ぶっとんだ実験感覚が楽しい。

プーチンズ」は黒子二人(一人は白いけれど)。ギターとテルミンの演奏とラジオ番組を模した語りを楽しむのです。絶妙な間合い感も楽しい。テルミン単独ではどうしても平板になりがちなのだけど、ギターとの相性は抜群な上に久しぶりに聴く佐藤沙恵のテルミンが抜群にうまくなったと感じます。やってみようかな、楽しそうだなと思わせるのには十分な破壊力もあります。いまはストリーミングだけのようですが、Podcastの配信が始まったらちょっと登録してみたい。

昔に比べれば食べ物も暖かさも格段。初期に使われていた場所が六尺堂アトリエとして使われていてそこを公開しているのもお得感がありますが、劇場で会った友人と呑みに行くのに気を取られていき損なったりするのもアタシ的には正月っぽい。

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速報→「不躾なQ友」クロムモリブデン

2010.1.3 15:00

クロムムリブデンの新作。年末年始に休演日なく公演というのもちょっとうれしい、といいながらアタシがみたのは千秋楽。95分ほど。3日までRED/THEATER。

男は職務質問に合い、鞄の中のカッターナイフをとがめられたところに刑事になったらしき同級生が通りかかり助けてくれる。同級生は男が妻に不満を持っていることを知っており、殺して初恋の女と一緒にすると提案し、さらに自分を殺してほしいと頼む。
男は自首するが、実際にはそんな事件は起きておらず、同じように自首してくる男がほかにも居る。自首した人々に共通するのは、声をかけてきた男女が居たということだった。

夢なのか現実なのかはっきりしない世界の中で カッターナイフで切りつけるとか銃で撃ち殺すなどかなり物騒な中身。無差別射殺を肯定的に、と書くと語弊があるけれど、「悪いこと」で思考停止せず、かといってそれを社会的な位置づけから裁くなんてことでもなく、「彼なりの」理由を細かく描き込んでいって、さらに緻密なダンスがエンタメとしてもきちんと成立させている凄さ。

トリップ感を映像でやるところも、それを執拗な繰り返しで表現するという手垢のついた方法で表現するところも他劇団で数あれど、彼らはひと味違います。今作は毎度毎度、おかしくなった頭の中身を(たぶん)普通の観客に追体験させるクロモリの真骨頂が高い次元で成立していると思うのです。いままでになく見やすい、という評判が立つのも頷けるのです。

職務質問を受けてカッターナイフ持ってるだけで犯罪者扱い、というあたりから銃の乱射に吹っ飛んでしまう作家の頭の中は、表現者でなければ明らかにヤバい感じなのだけど、そういう表現こそ「表現」ってものだよなぁと思うのです。一歩間違えば袋叩きにあうこういう題材をこういう描き方で扱うところはすくなくて、そういういみでも、確かな厚みを感じるのです。 森下亮は前向きすぎて滑り気味テンションの漫才師がおかしく、終盤で効いてきます。「夢」側の渡邉とかげと久保貫太郎のテンションも楽しい。中川智明の怪しい催眠術師は、いつものこの役者とは違う造型に感じるし、幸田幸子との組み合わせも魅力的。

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2010.01.01

2009年私的ベストテン

2009年の記録を整理しました。ライブものは、273本、うちいわゆる芝居は丁度256本でした。今年はこの本数にならないことは確実なのは少し残念だけれども。まあぼちぼち観ていくことにします。

去年に引き続き、福岡と青森への観劇旅行がそれなりにありました。その街に通い、その街の人々と同じ客席で楽しむ関東以外での芝居ということの意味は、こうなると長野・松本あたりでもやっていきたいなぁと思うのです。

オンライン、オフライン、芝居、仕事、プライベート、余らせたチケットを無理矢理押しつけたり、無理して確保いただいたりとさまざまにありがとうございました。今年はそれでも前向きに頑張っていきたいですはい。

例年通り、プリントアウトからえいやっと選んだ10余本。2008年と同様に新規開拓が少なかったのは反省点です。

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速報→「東京月光魔曲」Bunkamura

2009.12.31 20:00

ケラリーノサンドロヴィッチの新作。休憩15分を挟み、210分。31日はカウントダウンイベントを約130分。

震災後の昭和初期・東京。日露戦争で父親が味方に殺された姉弟、田舎から上京してきた兄弟、カフェの女給たち、震災で成り上がった人々。あるとき、妻が浮気した夫を猟奇的に殺すという事件が続き、探偵と助手が乗り出す。

中心に回転する装置。劇場、裏通り、カフェ、動物園などさまざまな場面を回転させながらスピーディーに転換。物語の方は丁寧というよりは、ストーリーに直接関係するとは限らない枝葉まで山盛り。カウントダウンイベント中に設定されたトークショーによれば、貸し小屋に比べれば時間を削るという圧力は働きにくい(で、劇場プロデューサが削るだけの時間的余裕がない、と突っ込む)のだといいますが、たしかに荒削りな感じは否めません。それでもこれだけの長丁場、しかも大晦日でアルコールの入ったアタシですら飽きずに観られる楽しさで、確かに印象的な舞台なのです。

物語というよりは、復興と未来と繁栄が共存しながらも路地裏や、金持ちの家の内情には闇のあるような時代を描きたいのだと思います。昭和初期という設定だけれど、戦後すぐの混乱期を描きたいのだといわれてもアタシは信じてしまいそう。なるほど、そういう目で見れば東京ラブソディ(なぜかアタシが大好きな唄だ)で全体を貫く感覚も、物販で大人の科学・スパイカメラが売られているのも納得する感覚。

物語の方はというと、なぜ殺すに至ったのか、騙し合いの感覚の終盤アタリはすきな感じだけど、長丁場にアタシの感覚が麻痺しててそこに集中しきれなかったのが惜しい(いや、アタシが呑んでるからだ、ということだけかもしれない)。

瑛太は予想以上に(失礼)雰囲気をきっちり。松雪泰子はだれか別の女優の発声に近づこうとしている感じがするのだけどそれは成功していない感じ。大鷹明良や林和義の年齢の厚み、伊藤蘭の色気、山崎一の二役豹変、ユースケ・サンタマリアもしっかり。小劇場の、とひとくくりにされるチームは出番決して多くはないけれど、赤堀雅秋と岩井秀人のチンピラが楽しい。吉本菜穂子をたったこれだけ、という贅沢、植木夏十の家政婦の慌てぶりも楽しい。

大晦日はカウントダウンから。時間を繋ぐためのトークショーは理由はわかるものの、せっかくのヒートアップを冷ましてしまうようでもったいないけれど、(執筆中に時間を省くために参考文献を脇で読み聞かせるのだという流れからの)緒川たまきの朗読(あの本、何て云う全集なんだろう。知りたい..)はラッキーな感じ。バンドを二つ用意して、出演者がさまざまに。隠し芸的なものや、本格的なジャズなどもりだくさん。(むしろ有頂天の)ケラの歌、ユースケ・サンタマリアの盛り上げる確かな力、犬山イヌコの力の抜けた唄のたのしさ(CD持ってるから知ってるけれど)、瑛太も歌巧いなぁとか、伊藤蘭は言うに及ばずそこに組で出た松雪泰子も負けず劣らず凄いなと思ったり。もりだくさん。

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