速報→「東京月光魔曲」Bunkamura
2009.12.31 20:00
ケラリーノサンドロヴィッチの新作。休憩15分を挟み、210分。31日はカウントダウンイベントを約130分。
震災後の昭和初期・東京。日露戦争で父親が味方に殺された姉弟、田舎から上京してきた兄弟、カフェの女給たち、震災で成り上がった人々。あるとき、妻が浮気した夫を猟奇的に殺すという事件が続き、探偵と助手が乗り出す。
中心に回転する装置。劇場、裏通り、カフェ、動物園などさまざまな場面を回転させながらスピーディーに転換。物語の方は丁寧というよりは、ストーリーに直接関係するとは限らない枝葉まで山盛り。カウントダウンイベント中に設定されたトークショーによれば、貸し小屋に比べれば時間を削るという圧力は働きにくい(で、劇場プロデューサが削るだけの時間的余裕がない、と突っ込む)のだといいますが、たしかに荒削りな感じは否めません。それでもこれだけの長丁場、しかも大晦日でアルコールの入ったアタシですら飽きずに観られる楽しさで、確かに印象的な舞台なのです。
物語というよりは、復興と未来と繁栄が共存しながらも路地裏や、金持ちの家の内情には闇のあるような時代を描きたいのだと思います。昭和初期という設定だけれど、戦後すぐの混乱期を描きたいのだといわれてもアタシは信じてしまいそう。なるほど、そういう目で見れば東京ラブソディ(なぜかアタシが大好きな唄だ)で全体を貫く感覚も、物販で大人の科学・スパイカメラが売られているのも納得する感覚。
物語の方はというと、なぜ殺すに至ったのか、騙し合いの感覚の終盤アタリはすきな感じだけど、長丁場にアタシの感覚が麻痺しててそこに集中しきれなかったのが惜しい(いや、アタシが呑んでるからだ、ということだけかもしれない)。
瑛太は予想以上に(失礼)雰囲気をきっちり。松雪泰子はだれか別の女優の発声に近づこうとしている感じがするのだけどそれは成功していない感じ。大鷹明良や林和義の年齢の厚み、伊藤蘭の色気、山崎一の二役豹変、ユースケ・サンタマリアもしっかり。小劇場の、とひとくくりにされるチームは出番決して多くはないけれど、赤堀雅秋と岩井秀人のチンピラが楽しい。吉本菜穂子をたったこれだけ、という贅沢、植木夏十の家政婦の慌てぶりも楽しい。
大晦日はカウントダウンから。時間を繋ぐためのトークショーは理由はわかるものの、せっかくのヒートアップを冷ましてしまうようでもったいないけれど、(執筆中に時間を省くために参考文献を脇で読み聞かせるのだという流れからの)緒川たまきの朗読(あの本、何て云う全集なんだろう。知りたい..)はラッキーな感じ。バンドを二つ用意して、出演者がさまざまに。隠し芸的なものや、本格的なジャズなどもりだくさん。(むしろ有頂天の)ケラの歌、ユースケ・サンタマリアの盛り上げる確かな力、犬山イヌコの力の抜けた唄のたのしさ(CD持ってるから知ってるけれど)、瑛太も歌巧いなぁとか、伊藤蘭は言うに及ばずそこに組で出た松雪泰子も負けず劣らず凄いなと思ったり。もりだくさん。
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