2009.12.6 17:00
小説化が決まっているのだという葛木英の短編集と映画の組み合わせ。無償の当日パンフはやるところがやれば1000円は取りそうなフルカラーの立派なもので気合い十分。105分。7日まで駅前劇場。
男が朝起きてごく普通の一日が始まるはずだったが、妻は朝からAVを見ようとしていて「鏡」。
風俗風の女の休憩室。彼女に惚れているホスト風の男が一世一代で告白してみるがあっさりと振られる。彼にはあまり時間がなくて「牛」。
クリスマスを迎える男の部屋。動くことのない彼女のためにプレゼントとケーキを用意し、あれやこれやと話をしながら実に楽しそうだが「型」。
ユニットバスに居る人魚。水から離れられず多少不便だが快適な毎日を過ごしている。部屋の主は昼も夜も働きづめだが、追いつかない。そんなある日秘密を見られてしまい「泡」。
料亭で働く男。ある日水槽の向こうに透け見えた女に恋をする。同じ料亭で働く女のことを、親方は訳ありだからやめておけと諭すが「器」(映像)。
過去に上演されたことのある二本を新キャスト。そこに新作二本と、映像一本を詰め合わせパッケージ。基本的には出落ち風のワンアイディアを引っ張りきったり、あるいはそこから少し切ない感じにまとめたりという感じ。
「鏡」はワンアイディアの勝負。どたばたコミカルがともかく大切で、妙なことをする家族たちを前に、半海一晃があせり、じたばたするところが見せ場で、その力は圧巻で見せつけます。
「牛」は過去WHATCOLORで上演したことのあるもののキャスト一新版。少々舌足らず風にしゃべるところがらしい感じで気楽に楽しめる。切なくなりがちなのに最後までコミカルで通し切ります。
「型」は痛い感じからファンタジーと想わせて強い切なさに流れ込む終盤が圧巻。動く役者はほぼ一人という終盤までの間、時にコミカル時に痛い感じで走りきる板倉チヒロの力は確かです。
「泡」は過去公演(富士ロック)でのキャスト一新再演。正直に言えば、あたしは初演の方がもっときりきりした精度があるかんじで好みでした。特に鍛えられた体でかっちり動き、焦り風に見せるのが巧い初演の板倉チヒロ相手では少々分が悪い。高木珠里は初演とは違う新たな感じになっていて印象的。
映像はワンアイディアの男女の障壁がベースのごくオーソドックスな作りだけど、「器」というものの位置づけが絶妙な感じ。映像としてちゃんとつくられている感じはしますが、悪くいえば自主映画風の手触りでそこにアレルギーがあると厳しいかも。
このパッケージで、前後に葛木英がパソコンをたたくアイキャッチを挟みます。当日パンフといい、じつは小説をプロモーションするための舞台という感じになってるともいえて、少々の違和感。それでも、ここまでつくりこんでがっつりやってしまえばアリだという気もしてきます。
最近のコメント