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2009.11.01

速報→「あの日僕だけが見られなかった夜光虫について」studio salt

2009.9.31 18:30

王子を経て横浜へ。海辺を舞台にしながら明暗取り混ぜて強度のある物語を95分にぎゅっと、愛おしい。3日まで相鉄本多。

海辺、砂浜に面したデッキのあるペンション。オーナーの男は中学時代の同級生を招待して一晩のパーティを企画する。あのときの同級生が結婚して娘は二十歳になろうかという時間が流れていて、あのときの出来事は忘れていたり、絶対に忘れられなかったり、覚えていたりと記憶はそれぞれに曖昧で。

当日パンフによれば、作家は前回公演の打ち上げで夜光虫をみられなかった、なんて話から書き始めていますが、そこからこういう物語を広げるのか、というびっくり。芝居観ている最中は思い出せなかったけれど、「SOME DAY」another sideという趣の仕上がり。そういう意味では「ピクニック」の女性パートを蒸留したようでもあって、アタシの気持ちを揺らします。

ネタバレかも。

中学生のあのころ、楽しいこともあったけれど、しょっぱくて辛くて二度と経験したくないという感覚に共感。一方で今ならその頃の彼らに再会するのだって大丈夫に思えるだけの時間が過ぎて、時間の砂の中に埋もれ自分でも忘れてしまっていた「いいもの」が、きらりと光り思い出す。物語のこの構造と砂の中の夜光虫というシンボリックなものが結実する終幕のシーンは実に美しく。

そういう男の物語を中心に据えながら、作家の視線はそこにいる女たちのそれぞれにもきちんと注がれている感じがしてなりません。そういう意味では昨日観たKAKUTAにも近いのです。既婚、離婚、未婚の同い年をそろえた三人の女性のシーンが好きです。このタイプのシーンが大好きなアタシということなのかもしれませんが。不器用な弱者三人のシーンも好きだけれど、中心の男を一方的な被害者として描かず、ある種のうざったさをきちんと描き出している作家の目も確か。

正直に言えば、オープニング、エンディングは最前列以外ではみづらいシーン。物語に大きな問題ではなくて、中盤のデッキのシーンはむしろ後列の方が見やすいし終幕は後列ならパノラミックな美しさもあるのだけれど、見えないというだけで観客はストレスになっちゃうわけでそこは少々もったいない。どう考えても同い年に見えない役者、と思っても30分で慣れちゃう不思議。 女性たち三人、弱者三人などといろんな組み合わせの人々だけを舞台上に残すシーンが必要で、そのために少々無理矢理にでも出捌けの理由を90分の枠の中でつくらなくてはいけないのは痛し痒しだけど、アタシにはこの90分ぐらいの尺が気持ちいいのです。

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