速報→「ベイビーフェイス」鈴舟
2009.11.29 14:00
散歩道楽の太田善也の描く家族ものの圧倒的な強さの100分。次回予告編5分強付き。29日までシアターサンモール。
浜辺の見える酒屋を営む家。息子や娘たちはみな結婚している。ある日その主が全員を呼び寄せる。同居している長男夫婦はその意図を知っているが、口を閉ざしている。長男夫婦の娘ももう成人していて家をでていて、久しぶりに集まる。偶然、みな女たちは妊娠していて。
妊婦の不安不満、できちゃった婚、離婚の危機、仕事がみつからない、などさまざまな要素をもった妊婦と夫たち。そのどたばたっぷりの気楽に楽しめる序盤は次々ときちんと笑いをとります。プロレスで正義の味方を意味するベイビーフェイスを根幹に。子供のことを全力で守った過去のおもいでは、70歳になった現在でも歴然とやはり正義の味方なのだけど、やはり年齢は重ねていくわけで、その残酷な時間の流れはあまりに切ないのです。
もうひとつ、結婚を申し込みにきた男が偶然知った事実から、必至で家族をつなぎ止めようとする終盤のあたり。この波動的な泣かせ方は、太田節が全面にでていて、あたしの好きな物語になっているのです。こちらもドンキホーテ的ではあっても「正義の味方」なわけで、ベイビーフェイスに繋がります。小難しかったり、いたずらに悪趣味だったりというのもキライじゃないのだけれど、気楽に見られて誰でも楽しめて、できすぎなぐらいにきちんと作られた物語は、実は昨今貴重なんじゃないかと思ったりもします。
苦労の末の妊娠、という夫婦を演じた二人。桑原裕子のキレっぷり、テンションが楽しい。振り回される感のある田中完もじつにいいコンビになっていて。実業家だけれどしあわせかどうかよく見えない夫婦を演じた二人。大谷典之は好きな俳優の一人、吉田久代も魅力的。女の間でもまれて居場所がない感じに佇む瓜生和成の絶妙。内海賢二の圧倒的な存在感。声だけの出演の筈の麻生美代子も予告編でちょっとだけ登場も嬉しい。
| 固定リンク
「演劇・芝居」カテゴリの記事
- 【芝居】「地獄八景(じごくばっけい)」おのまさしあたあ(2024.11.24)
- 【芝居】「ビッグ虚無」コンプソンズ(2024.11.24)
- 【芝居】「おまえの血は汚れているか」鵺的(2024.11.23)
- 【芝居】「精霊の贈りもの」羽布企画(2024.11.16)
- 【芝居】「PARTY TIME『骨はダラスに埋めてくれ』」かんたくん(2024.11.16)
コメント