速報→「おまえのなみだはビールでながれてる」chon-muop
2009.11.28 19:30
chon-muop(チョンモップ)、仙川付近の場所から発想する物語。9月公演とblogに連携しつつ90分。29日まで、せんがわ劇場。
三ヶ月の旅行に出かけた主・友子に代わり留守番をすることになった女性、大町ヤスミ。blogを綴りながら、主を待ち、散歩を続けている。
9月公演では町の中野小さなカフェで出会った不思議な人々という風情だった物語は、今作、大町ヤスミが留守番をしている家の中を舞台に物語は進みます。間に挟まるスライド、日記はblogで使われているものそのもの。家に帰ってからblogを覗くとその世界がまたよみがえってきたりするのです。
雇用の不安定な状態の男と三ヶ月の旅行を提案したり、三ヶ月の研修に男を連れて行こうとしたり、あるいは大家の娘が来るまでの三ヶ月をどうするか考えたり。なぜ突然三ヶ月という期間を切って留守番を提案されたのかなんてことを、ぐるぐるぐるぐる。 友子と同居人や大家との物語を幾重にも描き出すけれど、それは記憶ではなくてどちらかというと想像の物語。男が三人入れ替わり立ち替わり、という派手な話かと思えばさにあらず。どこまでが現実でどこからが妄想なのかはどんどん曖昧になっていき、観客の立ち位置の足下は簡単に揺らいでしまうのです。
妄想と足下の揺らぎ、なんて簡単に書いたけれど、見ている最中はそれが明らかになるかんじではなくて、どちらかというと手がかりがすくなくて不親切な物語の運び。終演後に友人たちと酒を呑んで話してあれこれ巡らせる感じで生まれてくる感覚。一人で見たとしても、帰路で反芻しながら変わっていく感覚を楽しむという感じがします。
考えると、blogに書かれた「大町ヤスミ」なんてのはもちろん今回の公演のためのプロジェクトなわけで、実在しないのにそこに何かが作り出されて残っていく、という点で芝居とリンクさせる試みは面白いのです。
なぜこの場所に居たいのか、という台詞があって、最近の自分の状態とリンクして気持ちが震えます。どうしてもここに居なくてはいけない理由があるわけじゃなくて、動かなきゃという状態ではあるのだけど離れ難いこの気持ちは、理屈ではきちんと説明できないし単なる感傷かもしれないけれど、すくなくともアタシには確かに存在する気持ちで、無視できないのです。
9月に引き続きヤスミを演じた中村智弓はぼやっとした不思議な風情が役にリンクする感じで面白い。友子を演じた石井舞は三人の男たちそれぞれとの会話で喜び、はしゃぎ、時に言葉を呑み込み。誰かと同居したことなんてないアタシだけれど、だれかと一緒に住むことの楽しさと寂しさをしっかり。雇用に不安を抱える男を演じた大塚秀記は、アタシと年齢が近くて、しかも昨今の雇用なんてことを考えると、単なるファンタジーじゃない不思議な切迫感をもってアタシに迫ります。
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