速報→「甘い丘」KAKUTA
2009.10.30 19:30
2年前にトラムで上演された人気作を一人を除いて同一キャストでの再演。125分、8日までシアタートラム
山の中のゴムサンダルの工場。事情はさまざまだけれど、ほかに行き場所のない人々が働き、暮らしている。夏の暑い日面接に訪れたのは出所したばかりだという若い女と主婦だという女。結局ふたりともそこで働くことになる。
芝居ってものを意外なほど覚えていないあたしです。劇場で会った友人に聞いておもいだしたのだけれど、初演とは事務所の位置など左右を反転した美術。劇場のタッパをスカスカにしな見事な仕上がりじゃ初演と変わりません。初演のときは、主役となる男女の物語として読み解こうとしたあたしなのだけれど、おまけCDに負けて劇団先行で買ったわりと前の席で観た印象だからか、とことん女たちの物語だよなぁと思うのです。そう思ってみれば、チラシにだって女性ばかり。
そういう目で見ると男は何人かでてきますが、背景を補強したりはするものの、物語を左右する感じではなく、楽しいシーンはたくさんあるけれど、根幹では意識的に男の役自身は無色透明に抑えている感じで、女性の目を通した男として描かれていると今更感じるのです。イタさんと呼ばれる聾唖の男は重要な役なのだけれど、冷静に観てみれば、彼自身が踏み台としての靴のようで、そこを踏み台にして女が飛び立ち。トンビと呼ばれるヒモの男も、その彼女を支えるものであり、所長(工場長)をパトロンにする小説家志望の男は所長とその家族にとって日常の外への扉であり気持ちの支えでもあり、遠くに行ってしまうことを恐れる気持ちを描き出すのです。(そうか、小劇場で知り合いになってた俳優たちがテレビに出たり売れっ子になっていく過程を見るときのアタシの気持ちはこれか)
初演で違和感を感じた「スカートのシーン」、アタシはこれも今更認識した「自由に歩ける靴のシーン」。女性の視座で読み直してみれば、彼女が次の新しいステップに踏み出すちからを背景として描くようなバランスの絶妙さに舌を巻くのです。
初日に関して云えば、テクニカルには少し問題があったとしても大きな問題ではありません。大枝佳織の威勢のいい役は少ないと思うので貴重。そういう意味では三谷智子のはすっぱな感じもけっこう珍しい。
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント