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2009.10.31

速報→「甘い丘」KAKUTA

2009.10.30 19:30

2年前にトラムで上演された人気作を一人を除いて同一キャストでの再演。125分、8日までシアタートラム

山の中のゴムサンダルの工場。事情はさまざまだけれど、ほかに行き場所のない人々が働き、暮らしている。夏の暑い日面接に訪れたのは出所したばかりだという若い女と主婦だという女。結局ふたりともそこで働くことになる。

芝居ってものを意外なほど覚えていないあたしです。劇場で会った友人に聞いておもいだしたのだけれど、初演とは事務所の位置など左右を反転した美術。劇場のタッパをスカスカにしな見事な仕上がりじゃ初演と変わりません。初演のときは、主役となる男女の物語として読み解こうとしたあたしなのだけれど、おまけCDに負けて劇団先行で買ったわりと前の席で観た印象だからか、とことん女たちの物語だよなぁと思うのです。そう思ってみれば、チラシにだって女性ばかり。

そういう目で見ると男は何人かでてきますが、背景を補強したりはするものの、物語を左右する感じではなく、楽しいシーンはたくさんあるけれど、根幹では意識的に男の役自身は無色透明に抑えている感じで、女性の目を通した男として描かれていると今更感じるのです。イタさんと呼ばれる聾唖の男は重要な役なのだけれど、冷静に観てみれば、彼自身が踏み台としての靴のようで、そこを踏み台にして女が飛び立ち。トンビと呼ばれるヒモの男も、その彼女を支えるものであり、所長(工場長)をパトロンにする小説家志望の男は所長とその家族にとって日常の外への扉であり気持ちの支えでもあり、遠くに行ってしまうことを恐れる気持ちを描き出すのです。(そうか、小劇場で知り合いになってた俳優たちがテレビに出たり売れっ子になっていく過程を見るときのアタシの気持ちはこれか)

初演で違和感を感じた「スカートのシーン」、アタシはこれも今更認識した「自由に歩ける靴のシーン」。女性の視座で読み直してみれば、彼女が次の新しいステップに踏み出すちからを背景として描くようなバランスの絶妙さに舌を巻くのです。

初日に関して云えば、テクニカルには少し問題があったとしても大きな問題ではありません。大枝佳織の威勢のいい役は少ないと思うので貴重。そういう意味では三谷智子のはすっぱな感じもけっこう珍しい。

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2009.10.30

ア・ラ・カルトがリニューアル

年末の風物詩、青山円形劇場のア・ラ・カルトが、21年目を迎えてリニューアルを発表しました。来年を本格稼働と位置づけて、今年は軽い感じに仕上げるよう。メンバーは大幅に変わるようですが、やはり年末の楽しみなのです。

で、このDM優先予約、電子チケットぴあで電話予約を試みたのですが、うっかりして9桁の予約番号を聞き損ないおじゃんに。予約番号はたった一回、しかも桁数をあらかじめ云わないから心の準備も整わないし、聞き直す操作も案内されないという仕様でなんだかなー、なのです。 まあ、e+の抽選で当たったからいいようなものですが。

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2009.10.26

速報→「馬鹿やろう、そこは掘るな」ガラパゴスダイナモス

2009.10.25 19:00

アタシは初めて観ます。伏線張りまくりでちゃんと回収の110分。31日まで甘棠館show劇場。

洞窟。お笑いの元コンビ稽古をしていた場所。5年前にコンテストで受賞したトロフィーを(一人が結婚することになって諦めさせようと嫁が穴を掘って埋めようとしている。ウエディングプランナーが計画した人前結婚式をここで開くことにして、同級生たちが集まって祝福する。そこに、初恋の彼女がやってきて。

多くの伏線を張りながら笑わせていくタイプのコメディ仕立て。少々ぎこちなかったり無理矢理なところがないわけではないのだけど、中心となる「パーコ」の物語もったいつけてたくさんの傍証は提示されるのだけれど明確には最後までいっても語られないのはちょっと意外な感じですが、名前や事実の断片がそれぞれの人に伝わっているのに、事実にまでは至らないということの悲しさすら感じさせるのです。 それはネタとしては早々に「わかって」しまうのだけれどがその物語だけに依存せず、さまざまに枝葉をつけて、楽しめる仕上がりになっているのがちょっとすごいのです。

男ふたりの漫才コンビの若い相方が先輩の行動が不審で、どうも自分以外の相手と「浮気」しているんじゃないかと、ノンケなのにあれやこれやを疑う、というのがありがちな恋愛にかぶせてみせるあたり、サイドストーリーではあるけれど、ちょっと巧い。 (この先輩が「ジョニー先輩」だ、というところがツボなのはたぶん観客席であたしだけでしょうが)

正直に言うと、やめると断言していた元漫才師が、初恋の人と出会ってしまうことであっさり気持ちを翻すあたりに少々の違和感。それは大きな問題ではありません。すくなくとも表面的には軽い会話ですすみながらちゃんと組み立てられた物語は強い印象を残します。

結婚する男女の強い想い、男に対する初恋の人の諭し励ます言葉はしっかりとしていて、そのポジションの特別さもあって、その重みは増して効果的なのです。

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速報→「翼をくださいっ!さらばYS-11」ギンギラ太陽's

2009.10.25 14:00

YS-11をめぐる物語。東京を除く日本各地をまわるツアーの最終地、福岡公演。29日まで西鉄ホール。120分。

東京再演で観たときにここまで通うことは想像できなかったのです。しかし、福岡や天神、大刀洗もアタシに気持ちを残す確かな力があります。 やはり劇団のスタンダードとしての物語の強さを持つ一本。「人の想いのイコンとしての」組織だったりも含めての「モノ語り」。雁ノ巣飛行場、大刀洗飛行場、福岡空港をめぐる現実を物語として少しずつ取り込みながら進化していきます。

一方でスカイマーク参入の時期に時間軸を固定した部分があるおかげで、最近状況が大幅に変わっている航空業界のあれこれを取り込む必要をなくしているのは今になって思えばまったくただしくて(なんせJASまででてくる)、日航・全日空は強靱な大手という感じに見えなくてはいけないのだけれど、何度乗ってもたいていスカイマークは(飛行機が小さいというのはあるにせよ)ほぼ満席で、お盆の季節ですらJALはいっぱいには見えなかった、みたいなことを肌で感じていると、この時間軸の固定がないとどうにも座りが悪くなるはずで、ここは先見の明。

アタシが初めてみたのがこれの東京再演だったわけですが、それからわりと欠かさず福岡に通うことになっているわけで、たいした引力。反面、アタシが観始める前にあった流通系だったりお菓子ものだったりは、完成度という点ではもしかしたらこれにはかなわないのかもしれないのだけれど、観せてはくれないかな、そろそろと思ったりもするのは、観られなかった芝居の悔しさのなせるわざ。

当然銀河劇場よりは、ずっと芝居の大きさにあっていて、使いなれた劇場ということもあって、この小屋で観ることの特別な意味を感じつつ、おもわず空いていた翌日は大刀洗に行ったり、福岡空港の展望台に上ったりという充実も含めて楽しいのです。

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2009.10.25

速報→「わらしべ24」わらしべボーイズ

2009.10.24 19:30

瀧川英次、國重直也、野口雄介の三人のトークイベント。蓋をあけてみれば、立ち見もでる超満員。135分。

午後5時にうまい棒から始めて、物々交換を24時間続けるとどうなるのかという実験。

ネタは最後に

休憩20分を含む150分のパッケージ、すこしはみ出す感じ。30過ぎの男たちのバカバカしい試み企画という体裁。まるで「トランクス(自転車キンクリートの男芝居の名作)」のようなおかしさが楽しいし、ちゃんと盛り上げる。今回の企画自体は、実際には知り合いばかりで回している感じがあって、出来レースと感じないことはないけれど、トークはちゃんとおもしろくて、そういう疑いの気持ちこそが野暮。次回は四国八十八カ所巡り(お遍路)でやると宣言してるけれど、これは知り合い技はほぼ封印することになって成功するのかどうなのか。いえ、アタシは観たいのですが、これがうまくいくなら「水曜どうでしょう」の領域ですから怖いものは何もありません。

エロメール添削講座ライブの旅記録の報告会から派生したフォーマット、写真や動画を多用して、一人のテンション芸ではなく三人の会話で楽しませるのです。

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速報→「 カラクリヌード 」東京の人

2009.10.24 14:00

札幌の劇団、SKグループ(1)の、すがの公が立ち上げた、109人の東京の人と「遊ぶ」ための東京フランチャイズ企画。旗揚げを経ての一回目公演。27日までシアターブラッツ。休憩10分を含む120分。

海外の戦争に日本は中古の人型掘削ロボットを軍事力として提供していたが、レアメタルはおろか鉄すらも欠乏している状況だった。ロボットと貧しいものは地下6000メートルでわずかな資源を求めて採掘の生活をする鉄のモグラと呼ばれ、富めるものは地上6000メートルの高層住宅に住みみ天のクジラとよばれていた。 ロボット輸出を決めた政治家は総理にまで上り詰めた。政府が配布している携帯を兼ねたホットバッチというデバイスで相性抜群立ったはずの妻は、あろうことか掘削ロボットに恋をしてしまった。

公演ごとに東京の役者に依頼して集める、というシステム のおかげかどうか、知る人ぞ知る芸達者揃いな様相。ほぼ素舞台、黒い服、小さなLED発光アクセサリぐらいの小道具だけ、というじつにシンプル。

舞台はSF、激しい貧富の差、ボーイミーツガールで、ガールはとらわれの姫、群唱などで進めるものがたりは、最近では珍しいぐらいのベタといえばベタ、着地点もわりと想像通りの感じで驚きの、という感じにはなりません。悪くいえば古い、よく言えば温故知新。そういうラインの上をなぞる感じではあっても、わりと楽しめる感じなのは、アタシの好きな役者が何人も出ている楽しさでアタシの気持ちが乗るのです。

正直にいえば、主軸となるボーイとガール、その敵となる政治家以外の役を物語に織り込むのに苦労している感じがしないでもありません。その分遊びの部分も多くて、まあ役者を見に行っているアタシには楽しかったりするわけですが。

とらわれの姫を演じる秋澤弥里はどこまでも姫な感じで美しい。サイドストーリのもう一つのボーイミーツガールを演じる福田英和はもっと観ていたい、ガールたる井口千穂はキュートに暴れる感じが楽しい。菊池美里はゆっくりであえて違うリズムな感じが印象的。杉木隆幸はどこか諦めた感の中年男が似合う感じでアタシの気持ちに近い。敵役となる政治家を演じた芳賀晶は嫌われ続けをしっかり。

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2009.10.24

速報→「ソビエト -マヤコフスキィ生誕116年-」双数姉妹

2009.10.23 19:30

双数姉妹13年ぶりの再演。125分。25日まで座・高円寺1。

帝政ロシアの時代の劇場。皇帝が二日目に訪れる予定で警官による検閲がされ、直前に脚本の書き直しを余儀なくされる。開演直前になってもほとんどの役者は台詞が入らず、プロンプをするが、あまりの多さに混乱する。かねてから企みのあった役者は別に用意してあった台本をプロンプターに渡し。

あたしが観始めるより前の双数の再演。アタシが観始めた頃も、「コサック」などのソ連風のタイトルとスタイリッシュなかっこよさが身の上だった彼ら、役者も芝居もずいぶんと変わってしまった昨今だけれど、久しぶりにあの頃の感覚で楽しいのです。

当日パンフにあるとおり、「革命をプロンプした男」という基本コンセプト、舞台の表と裏に役者をそれぞれ配し、出捌けで変化させ、さらに「革命」でひっくりかえす、というシンプルだけれどいわゆる演劇的な楽しさ。

劇中劇がじつはわかりにくかったり、革命から少し後、三兄妹の芝居もアタシを混乱させます。男女のデート風をそれぞれが三人で支えるというのは、革命後のプロパガンダとして正しくて楽しい。芝居のあれこれに試し悩み苦悩するってのを楽しむのは、芝居見すぎてる年かさの観客の特権。

やがて浮かんでくるのは、夢を紡ぎ人を扇動したけれどその後の続かない苦悩。ぶちあげればぶちあげるほど、 続けるのが難しいというよくあるはなしなのだけれど、そこにも日常があるという視点は実に気持ちに合うのです。革命は起きても、人は生きていかなければならない、というのをきちんと語る中盤の「延々続く芝居」のくだりが好きです。まんなかのミュージカル風も楽しい。

中村靖はかきまわす為の役にふさわしく楽しく、序盤こそ滑り気味でも舞台をぱっと明るくさせます。仲坪由紀子×辻沢綾香、吉田麻起子×井上貴子の拮抗する感じも楽しい。

学生運動を知らない、という作家、先週の学生運動の芝居は一回り(以上かも)先の世代。今作の作家それでもアタシが初めて拝顔した頃に比べれば、ずいぶんと年齢は進んでいるわけでそれも含めて、楽しいのです。 天井も高く、幅も広いスカスカになりがちなこの劇場(客席通路の階段がなんか危ない)の高さをきちんと埋めています。このあたり、演出のちからを感じるのです。

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2009.10.22

秋になった。

春とか秋とか、面談したり、へこんだり、メガネ買ったり、旅行の予定入れたり。年末に向けて国民の休日が徐々に増えていく感じの年末。

週末。

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速報→「島あつめ」トリのマーク

2009.10.21 20:00

トリのマーク、久しぶりのカフェ「こぐま」での公演。45分。

下町のカフェ。この場所、二階にも上がってまわりをみたいという客。見渡したいのだけれど、ここのまわりに水路が走っていた様子もみたいといい。

トリのマークの二人が経営するカフェも順調になってきている昨今、カフェの休みになっている火曜水曜だけの三ステージ。ボケてツッコむという会話も楽しいく、トリの濃密な三人の会話。東向島あたり風ではあるけれど、今ではない近未来の舞台も絶妙。押上の駅から歩くと建設中のタワーを背にして歩いてたどり着き芝居を見れば、空想の物語としてきちんと取り込まれている楽しさは、この場所に長くとどまり、場所からきちんと発送している彼らの強みなのです。

今では海からはずいぶん遠いのだけれど、向島という場所は昔は海で、堆積し、島になり、徐々に陸地が増えて水路の町となり、それはやがて狭い路地となりという時間の流れを、こんなにゆるやかな会話の中で感じさせるというのも彼らの得意技。

なんていう背景を別にすると、ナンセンス風の意味のない会話もたくさん、どうとらえればいいか判らない会話もたくさん、というのは彼らを観続けているあたしには楽しい。誰が観ても楽しいかどうかはよくわからないのだけど、20人しか入れないところで総数60人の目撃者のひとりになれたのが誇らしいのです。

芝居に限らず近隣のアートの拠点となっている「こぐま」なのだけど、ひいた籤で近隣の飲食店を紹介する「おしょくじ」も芝居の中に取り込みつつ。

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2009.10.20

速報→「深情さびつく回転儀」電動夏子安置システム

2009.10.18 19:00

電夏の新作。125分。25日までサンモールスタジオ。

資産家の父親が娘に残した四棟の家。そこに住むことは無く下の娘二人はすでに売却したようだが、次女は父親の残した唯一のこの家を手放せずにいる。ゆえあってその一つに暮らしていた男女五人は隠された部屋にあるルーレットによって現れる人々と四つの家という場所が選ばれることを知る。

ロジックを全面に押したコミカルな芝居が得意な彼ら。ルーレットの赤と黒、偶数と奇数の組み合わせ4つを家に見立てて四つの物語が平行して同じ場所で動くように構成。目が出きった組み合わせの場はクローズしていく、というルールと、チップに刻まれたオプショナルな働きを組み合わせて物語を運びます。そういう話を作るのに、どちらかというとベタでドタバタ喜劇風の役者が結構居るというのが不思議な感じで、そういう意味ではクロカミショウネン18と似たところも併せ持ちます。

理系のはずのアタシですが、すっかり遠ざかったからかそもそも素養がないからか、ルールに縛られたロジックやルーレットと二枠の物語のリンクがあたしにはぴんとこない感じ。それでも組み合わせの中で空間が閉じていくとか、オプションの部分には物語にリンクするおもしろがあると思うのです。 娘自身が父親の愛情を得られていたのかに、にこだわるというきっかけは好き。四つの家と姉妹が対応しているのか、次女ひとりにこの家四つが与えられたのかは今一つわからず、前者だと思っていたけれどほかの姉妹は現れずなので後者なのかなぁ。愛情が自分に向いていたのかということの背景として必要なのはわかりますが、意味なくいたずらに物語を複雑にしているように感じるのです。

ルーレットの目で変わる6種類のマルチエンディング、というのが売りですが、どこのどれをルーレットで分岐させてるのかもルーレットの目も明らかにしていないので、台本を購入するしか確実に確かめるすべはありません。それでも疑えばきりはなくて、ルーレットの目が示されてないんだから、ほんとに分岐した上演があるのか、とか。もう一つ気になるのは、ルーレットを「回転儀」と呼ぶのだというのだけど、webではみつけられませんでした。ジャイロスコープじゃないのかなぁ..

七味まゆみは客演として中心を張り、しっかり。渡辺美弥子は美人なのにそこまで笑いをとるのかというコミカル、見開いた目の美しさも変わらず圧巻。菊池未来は雰囲気良く、ちょっと謎めいた感じも嬉しい。

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速報→「死すべき母の石」桃唄309

2009.10.18 15:00

中野ポケットを中心に二つの新しい劇場を加えて四劇場になった「ポケットスクエア」の一つ、「テアトルBONBON」のオープニングシリーズ。スタイリッシュに組み上げたミステリー仕立て105分、25日まで。公演中にはドラマリーディングやバックステージツアーなどの企画も山盛り。

フリータ暮らしの男が半年ぶりに実家に帰ると、一人暮らしの母親が殺されていた。すぐに忘れられてしまいそうな小さな事件で警察の捜査は遅々として進まない。

謎解き、というよりはその殺人が起きた背景や、東京という町の風景を丁寧に積み上げていく印象。殺人の起きた小さな部屋の中で出かけるでもなく鬱々としている息子、そこにいたる東京という場所の犯罪の芽がそこかしこにある場所であること、それを面白がる人研究する人もいて。町の持つ「意志」のようなものがそこにある、ということを描き出す視点がおもしろい感じ。

DJブースを舞台上につくり、全体としてビートの効いた音楽、真下に置いたライトの点滅の感じ、スーツ姿の役者たちと、全体にスタイリッシュ。クラブの雰囲気や、公民館、ネットワーク上の「会議室」、雑踏。さまざまな面を持つ東京という町の「暮らし方、生き方」を描き出そうと、こまかく区切った場は、切り替えのテンポも楽しい。ただ、刻み続けるリズムというのは両刃で、2時間近い公演となると物語はものすごく濃密なのだけどそれに反してじつはちょっと飽きそうなところもちょっと、というよりはアタシが単に寝不足だったというだけのことかもしれません。

。 街角の雑踏の風景すらもそういうスタイリッシュに、漏れ聞こえてくる声の感じと、丁寧につくった印象。イヤホンつけて歩いていると気づかないけれど、そうだ、こういう風景なのだと気づくのです。息子を演じた佐藤達はこういうフリータ風の気の弱い感じをやらせると抜群に巧いのです。

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2009.10.18

速報→「モロトフカクテル」タカハ劇団

2009.10.17 19:30

二年半前の初演の圧倒的なすごさがきちんと戻って来ています。役者はほぼすべて入れ替わっていますが、ホンの確かな力は健在で、きちんと。18日まで、座・高円寺1。110分。

大学、自治会の部屋を大学が強制収容すると通告してくる。この場所を守り抜きたいと思う二つのサークル。昔この場所を守り抜いた(伝説の)大学生に憧れてる人。学生運動のレプリカのようになっている若者たちはおぼつかない。

68年の、といわれると、生まれてはいるけれど、なにも覚えてないアタシです。学生運動の残★さ★も感じないで大学を過ごしてしまったアタシなのですが、その時代の空気は感じ取れます。

初演は圧倒的な感じでした。タカハの確変とまで云われたすごみのあるホン。早稲田の学生会館で上演されたというのはある意味、借景の場所のちからだったのですが。

ほぼ大学生で演じられたはずの初演に比べてしまうと、アタシの友人が云う大学生の身体が必要という意味はよくわかります。 今作の石川ユリコは初演とはちがうキャラクタで、実直にまっすぐ。個人的には静かに闘争の火を燃やしつつ、業のように男に気持ちを寄せる彼女の印象が圧倒的、なのですが。

それでも、有馬自由がきちんと場所をつくり、内に炎を秘めた初老の男。恋い焦がれて居るということは、やっと今回感じました。手話サークルの二人、虚構の劇団(座・高円寺の公演を観てませんが)の小沢道成のキャラクタが同じ感じで安心。対になっている、こいけけいこは笑い少なくても、まっすぐで気持ちを乗せやすい。畑中智行は悪役一辺倒ならば圧倒的に巧くて、キャラメルよりも合っている空気。恩田隆一は、どこか金八っぽくなるのをよけるべきだと思うのです。アカネを演じた奥田ワレタは中盤の闘いがおもしろい。リーマン、少子高齢、インフルエンザもすべて、という嘘っぽいデマを考えてなくて受け入れる感じで、しかし自分の傷ついたところの落とし前を男に向けるところがかっこいい。初演にも唯一出演している浦井大輔は時代な感じに満点。笑いひとつも無くても。酒巻誉洋、17日夜公演では声が枯れている感の不安も。

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速報→「ヘアカットさん」岡崎藝術座

2009.10.17 14:00

岡崎藝術座の新作。75分。25日までアゴラ劇場。

新宿の代々木に近いほうの紀ノ国屋書店、立ち読みで引っ越し先の部屋の様子を考える女。と、バイク好きの彼と先輩とのカラオケの話。

物語は概要をもう少し書くだけで構造がバレバレなほどのごくごくシンプルなものがり。文章で書けばほんの数行だけの事実をリミックスし、ひきのばし、リフレインした、といった風情。ダンスとも違う、芝居というにはあまりにミニマルにすぎるし、ノイズ主体だったり、本当の気持ちをなかなか悟らせまいとするような感覚もどこかに見え隠れしていて、一筋縄ではいきません。

感覚のどこかささくれたようなひっかかりを幾重にもリフレインする感覚自体は嫌いではありませんが、シンプルな物語ならば、シンプルに見せてほしいいなぁと思ったり思わなかったり。そういえばこの前に観た「三月の5日間」は原作の物語があったのだよなぁと思い出すのです。

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2009.10.15

冬が近づいている。

SHAMPOO HATがインフルエンザを理由として17日までの公演を中止し、18日から再開すると発表しました。今日の開演時間にはついに、劇団blogも劇団webのトップページも間に合いませんでした。たぶん前売りの客への連絡を優先したからだ、と想像してます(ほんとに想像だけです)。夏だから油断していたインフルエンザ、ひたひたと。あちこちでそんな話、聞こえてきます。季節性は毎年のことですが、警戒するに超したことはありません。

もうひとつビックリしたのは、内閣参与に平田オリザ、の報。ええ、これは冬の始まりじゃないよね、次の春だよね。これがいいことか悪いことか判断できないのアタシが今酔っぱらいだから(言い訳)。

週末。来週の一週間を乗り切れば、もう一日有休休暇があるしっ。

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2009.10.14

速報→「わが星」ままごと

2009.10.12 14:00

口コミの威力は絶大、広く作っている囲み客席には立ち見も、いろんな芝居をする側の人々もたくさんの客席。80分。初日からあったのかどうかわからないけれど、口ロロ(くちろろ)の音楽(AM00:00:00)に載せた終演後の役者紹介も楽しい千秋楽。三鷹市芸術文化センター星のホール。toiを観られなかったアタシには強烈な印象を残しました。

どこかの星、両親・祖母・姉妹。誕生日を迎えて喜ぶ妹。その外側から望遠鏡で見ているオトコノコ。星が消えてしまうのが見えたこの瞬間すでに星は無くなっているのだけれど、時間も光速も超えてオトコノコはオンナノコに会いに行く。

太陽系の惑星である地球(ちーちゃん)の誕生から滅亡を団地に暮らす家族の末っ子ちいと家族、隣のオンナノコ(つきちゃん)の人生に重ね、それを外から見ているオトコノコが流星に乗ってボーイミーツガール、と言葉で書いてしまうと身も蓋もない感じなのだけど、時報とラップと音楽で貫かれた気持ちのいい体験の空間。三鷹の劇場をフラットに円形劇場のように仕立てたことも功を奏していて、高い天井がこの物語に対してはむしろ効果的ですらあります。

本当の時報の録音を除けば、4秒に強い拍子をもってくる、リズムの感覚。普通5秒15秒30秒60秒で語られがちな天文のリズムと微妙に外したこのリズムがあたしの感覚に実に良く合うのです。

少年王者館からの影響を指摘する声もありますが、アタシが強く感じるのはむしろ維新派のジャンジャンオペラ(王者館より維新派の「体験」を楽しく思うアタシだからかもしれません)。一つのリズムで貫いてヒップホップっぽくまとめた仕上がりは、ずっとスタイリッシュで、でも音楽だけでもヒップホップだけでもないテキストはあたしの友人がいうとおり、とてもgirlyでオンナノコ寄りでアタシの気持ちをわしづかみにします。「わが星」を観てしまった今から振り返ってみれば、維新派も王者館も古ぼけて見えてしまう、今を暮らしているアタシたちの感覚にあったリズムと物語、昭和も遠くに見えているアタシの年代だからか、その友達を作る感覚(アポロ、たべる?から始まり、ままごとをするシーンは大好き、終幕近くの、ありがとうを云うあたりはガー泣きです)、家族が忙しく毎日の生活を刻む感覚(終盤で父母が廻りながら、父親は並木道を母親は家の集合住宅の短い廊下を往復する、というのが泣きポイント)、オトコノコがやってきて(ちーちゃんはそこに居続けて)出会う感覚、なにもかもを凝縮して見せるここには確かにコスモス(ダサいね、この言葉)がきちんと存在。

これだけでワークショップ、学校公演でいくらでも稼げそう(このあたりが下世話なアタシ)、やったもの勝ち、たしかにおもしろい。たぶん小学生から高校生、親も巻き込んだワークショップは世界何処でも通用しそう。

笑いも多くて、見やすくて、小劇場の役者にとっては台詞だけではなくて、リズムの芝居を自覚するということを体験できる、という意味でもワークショップっぽい。役者を変えても成立するし、これを体感した役者たちは続けられるし、何年か後に歳を重ねてもすぐに出来るぐらいに刻み込まれている感じの千秋楽なのです。

ままごと、というのはたぶん、なにかのロールプレイなのでしょう、(芝居での)オンナノコ二人(か三人)の会話が大好きなアタシにはその雰囲気が大好き。それをリズムを刻んできちんと。映像りょりもむしろ音だけMP3で貰って帰り道でずっと聞き続けていたいと思うのです。

端田新菜はある種の幼さを持った妹キャラをやらせると抜群に巧い。母親を演じた黒岩三佳も、姉を演じた中島佳子もべつにラップが抜群に巧いわけではないのだけれど、物語に寄り添ってしっかりと支えるのです。

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2009.10.12

速報→「蛮幽鬼(ばんゆうき)」松竹×ヴィレッジ×新感線

2009.10.11 17:30

新感線、いのうえ歌舞伎の新作。上川隆也、堺雅人、早乙女太一、稲森いずみを客演で。27日まで新橋演舞場、そのあと大阪。休憩30分を含んで210分。

留学していた4人。権力者側の3人と平民から実力でのし上がったひとり。5年ぶりの帰国が近づいたある日、一人が殺され、平民だった一人が手をかけたと云われ、監獄島に送られる。裏切りに対する恨みは十年を経ても変わらない。牢の地下からする声に従い掘り始めた先にいたのは。

席は正直良くなくて、花道が見えないってのはそこで重要な芝居がないとしてもストレスにはなりますが、まあ三階席のBですからそこに文句をいってはいけません。 映像の格好良さというのは彼らの特徴ですが、ナイロンのスタイリッシュをみてしまうとセットの転換を見せないために多用するのがあまりにあからさまな感じがします。

まるで巌窟王のような前半は笑いも多く見やすい。そこからのし上がっていく過程は詳しくは語られませんが、そもそも殺し屋の男の後ろ盾で自分の復讐を果たすはずがいつのまにか、という物語。決して明るい話ではなく、全編を通して殺す殺されるのという殺伐とした物語。終盤にむけてどんどん死んでいく、なんてのは今ではテレビはおろか映画でもそうそうない感じがしますが、生の舞台でかっこいい殺陣を織り交ぜながら疾走する感じは新感線らしくて気持ちいい。 そうするざるを得ないところに追い込まれる物語がアタシにとっての、いのうえ歌舞伎なのです。そういう意味では大満足。

殺陣が圧倒的なのは早乙女太一。伝統的ではないけれど、見栄えとスピード感が圧倒的で舞台映えして、おもわず場内に拍手があがるほど。上川隆也はこういう偏屈さの芝居を見せると声の調子が一本になってしまうのは少々惜しいところだけれど、真ん中に一本の心の強さに説得力。稲森いずみという役者の美しさはテレビでは感じるけれど3Fではさすがに。堺雅人がよく言わ続けていた「嘘くさい笑顔」というのを物語に取り込んで冷徹な暗殺者に仕立てたのは巧い。橋本じゅんはコミカルも心意気も併せ持っていて、かっこいい。

久しぶりの演舞場、前はもっとカジュアルもあれもこれも取りそろえたバラエティ感があったきがするのだけれど、改装したのかしら。菓子・弁当・寿司の文字を取ったカベス茶屋一つに集約されたようで、これはこれで寂しい。

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速報→「河童橋の魔女」ジャブジャブサーキット

2009.10.11 14:00

ジャブジャブサーキットの新作。105分。11日までスズナリ。

ホテルのロビー。長逗留の男、会話の成立しない母娘、3年前に泊まりパートナーに裏切られて傷心の旅行に訪れた女、それを追う別の男。山の上にあり、一本の通称・河童橋を通らないと入れないこのホテルには、通常人には見えない、森の住人たちもたくさん住んでいて。ある日、その一本の橋が落ちてしまい、客たちは帰れなくなってしまう。

ファンタジー色いっぱい。ふつうは見つけられず、死にごく近いところにいる人間しかたどり着けない、境界線のような場所。その線上にずっととどまったり、あるいは死んでしまったり、あるいは森の住人となったりという様々な人々の姿。死に向き合ったり寄り添ったり、自覚鳴く近づいたりしている人々の姿をそれこそグランドホテル形式で描き出します。ここの作家のいつものようなミステリーっぽい感じは少々あるけれども、ゲームのように組み立てられた芝居というよりは、ずっと想いや気持ちに寄り添った優しい印象の芝居なのです。

一度取り込まれてしまうと一度戻ったとしてもまた舞い戻ってくるとか、森の住人たちの遊び心はアタシの感覚としては楽しい。「あむろ」に巡るちょっとしたギャグも客を選びますが、アタシは楽しい。

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2009.10.11

速報→「心が目を覚ます瞬間~4.48サイコシスより~」DULL-COLORED POP

2009.10.10 19:00

ダルカラ休止前のもう一本。12日までサンモールスタジオ。90分。

ベッドに寝ている女、机に向かう男。4:48から72分だけ正気に戻る女、男は彼女と対話したいと切望して。

いまどき生きていれば、気に病むこともおかしくなりそうなこともままあるのだけれど、どうにかバランスをとっていると思っているアタシなのです。まわりにもあまり居ない、患者の現場は、本当のことはよくわかりません。それでも自分の部屋で、電車で、鬱々としたり、躁状態になったりすることはあります。そういう心の振れ幅、正常に戻る瞬間のビビッドな感じがよく見えます。

正直に云えば、物語らしい物語がない本作は、芝居として語りづらいところ。しかし、時代を超えた二人の作家のキャッチボール(本当にそういうシーンがある)は実に美しくて切実なのです。

ネタバレかも。

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速報→「レ・ミゼラブルーシート」観音びらき

2009.10.10 14:00

観音びらきの新作。凝ったチラシも楽しい105分。大阪のあと、東京はタイニイアリスで11日まで。そのあと福岡。

大阪天王寺動物園の近く、ホームレスたちのブルーシートが立ち並ぶあたり。リストラ・妻子とわかれた会社員や、北新地の元ホステス、西成の元日雇いなどそれぞれの背景。数少ない娯楽の動物園の通路に並ぶ青空カラオケの一軒に集う。行政の立ち退き警告が続き、代執行の日が迫る。

ブルーシート、ホームレス、ホームレス支援と云いながら巣くうわずかな利権。青空カラオケを舞台に持ってくることで歌のシーンを無理なく取り込んでいて、いくつかの替え歌ベースの曲の出来もけっこうよかったりします。ややもすると上から目線の笑いをとるだけになりがちなところ、そういう視点が入ってしまうところもありながら、「そこから抜け出せない、抜け出したい」という葛藤を支援雑誌ビッグイシューや生活保護をねらった悪意などを取り混ぜ、家族の物語も取り込みコンパクトに凝縮。

問題提起とかそいういう堅苦しさではなくて、あくまでエンタテインメントの領域。物語全体のバランスがいいかといわれると少々微妙な感も残りますが、気楽に楽しむのが吉。いつアタシたちが彼ら側におちてもおかしくない、という今の時代を生きるアタシたちには無条件で笑いだけを受け止めるほど楽観的でもないアタシですが。

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2009.10.10

速報→「プルーフ/証明」DULL-COLORED POP

2009.10.9 19;00

ダルカラポップ休止前の二本立て、そのうちの一本。ほかでの上演を経て研ぎ澄まされて。休憩10分を挟み135分とのアナウンスだけれど、アタシの見た金曜夜は21:30終演(たぶん開演押しと休憩時間押しかも)。13日まで奇数日上演、サンモールスタジオ。

天才といわれる数学者を父親に持つ娘。姉はニューヨークにでてしまっているが、神経を病んだ父親とシカゴの一軒家で暮らし、晩年の面倒は自分が見ていて。父親が亡くなったあと、書斎の膨大なノートを整理する教え子の今は教員の。葬儀のために久しぶりに訪れた姉。
葬儀の夜、悲しみを和らげようと姉は友人、父親の教え子たちを招いてパーティを開き、気持ちを交わして娘(妹)はある秘密を父の教え子の男に打ち明ける。

映画にもなっていて、芝居としてもわりと上演されているようですが、アタシはコロブチカ版だけを観ています。隙のない美しい物語でもあり、家族の気持ちを丁寧に描く物語という両面を併せ持ち、演出次第でどちらの横顔にもつながる広がりのある戯曲。

アタシが初めて観たコロブチカ版を基準にして比較すると、どこまでも透明でナチュラルでフラットな印象で家族の物語に着地したコロブチカに比べると、美術はシンプルなのに、ロックでもありポップさも持っていて、スピード感とゆるやかさの緩急の差が楽しくてむしろエンタテインメントな色が多いのです。

翻訳物っぽい台詞回しを意識的にしていた節もあるダルカラなのだけど、本作はそれがいい感じで抜けていて、違和感がなく。 一軒家の建物を客席側にあると想定し、それにつながるデッキの部分にある机と椅子というだけのシンプルな美術のアイディアは相当に秀逸で、この戯曲の描くシンプルで美しく力強い数学の世界を体現するよう。結果として家からの出入りを客席通路からという導線になってドアの前で立ち止まる一瞬の表情が見やすくて印象的な場面がてんこ盛りなのです。

天才的な数学者で今は気を病んでいる父親を演じた中田顯史郎の圧倒的な説得力。厳格さと父親の娘に対するある種の甘さがきちんと醸し出されているのは凄い。休憩後のシーンは、軽やかでおかしくて。そのあとの躁状態や、序盤の落ち着いた会話など様々な顔を見せて本当に魅力的。妹を演じた清水那保は可愛らしくて心が強くて魅力的。まるで七変化のような衣装も楽しい。当日パンフで作演が「俺の溺愛する二人の劇団員〜」というのも頷けます。姉を演じた木下祐子はアタシ自身の視点の拠り所になる世間との接点の重要な役をしっかりと。

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2009.10.09

台風過ぎて。

午前中は晴れているのに風強く、川が越えられないので電車が動かない。のんびりいってもガシガシ行ってもあまり変わらない時間。職場であんな苦労、こんな苦労というのを語る人の表情はなぜか明るい。たしかに、アタシも語っちゃうよなぁ、そういうとき。

つまり、三連休は晴れるのかしら。

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2009.10.08

速報→「世田谷カフカ」NYLON100℃

2009.10.7 19:00

休憩15分を含む190分。カフカの未完作「審判」「」「失踪者」をベースにしながらコラージュは物語重視とはいいづらいし、誰にでも見やすいとは到底思えないけれど、その体験は新鮮です。12日まで本多劇場。

三人の俳優が語る経験。近所の呑み屋で顔なじみの常連おばさんの介護話、けっこう大きくなってから知った自分の出生の秘密の違和感、学生の頃出演したクイズ番組での答えの理由がまわりにわかってもらえない話。そこを起点にしながらも。
理由がわからないまま裁判を起こされた男の話「審判」。測量のために招かれて来た街なのに何処にも泊まれず治めている城に行けと云われるのにどうしてもたどり着けない「城」。ドイツを追放されアメリカに流れ着いた少年は「失踪者」。

恥ずかしながらカフカを一編たりとも読んだことのないアタシです。コラージュというだけあって、それぞれの物語の断片は感じ取れても、深くはわからないし、全体として俯瞰しても大きな物語の軸があるという感じではありません。でも、この長時間、ほんとうに飽きずにわくわくするのです。

社会生活はそれなりに営んでいて、でもどこか鬱屈したり疎外感があったりと、表面と内面のギャップ感が全体を貫きます。ケラ自身が傾倒しているのは、この気分を共有したいという気持ちが強いのだろうなぁと思うのです。軽かったり感動したりという芝居が得意なこの劇作家なのだけど、こういう世間との違和感の感じ取り方は好き。あたし自身が本当に理解できているかはわかりませんが。

wikipediaってのは便利なもので、それなりのあらすじが読めたりします。これを読むと、そこかしこに断片がちりばめられ、緻密に作られたこの芝居にかける情熱のすごさを感じ取れるのです。序盤は三つの物語が平行し、しかも書き加えられた軽いシーンも多くてあたしの好みはむしろ前半です。

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少し大きな立方体の部屋。これを動かしてあれこれの舞台を作るのも実に印象的です。箱の中で物語が動いているのを、回転させることで箱庭を眺めているような感覚にさせるというのはいままで体感したことのない感覚。芝居っぽくて楽しい。パンフにある距離感のめちゃくちゃさを体現するという意味でも効果的。

彼氏と二人で過ごす時間、みたいなシーンがちょっと好き。後から現れる友人の植木夏十がけっこうフィーチャーされていてアタシは嬉しい。村岡希美は序盤の一人語りに負荷がかかる感はあるのだけれど、きっちり。後半での老婆の声が美しい。

ネタバレかも

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2009.10.05

速報→「て」ハイバイ

2009.10.4 14:30

2008年作の再演。すれ違う家族の物語がストレートに響く110分。12日まで東京芸術劇場小ホール1。そのあとの北九州公演は作家自らの母親役が抜群なのはわかっているので、そのころ九州居るはずなのに見られないのが悔しい。

離れに住む祖母。母親と長男が長い間面倒を見てきた。かつての父親の暴力が許せない家族は、全員で集まるということを長いことしていなかったが、長女の提案で祖母を囲んで一度集まろうということにする。が、表面的におだやかに見える宴会も、やはり気持ちはすれ違っていて。

祖母の葬儀の場を起点にし、祖母の部屋、という舞台での出来事だけれども、そこから見える父親、母親、四人の兄弟たちが主軸の物語。ぎこちない宴会の前後の時間軸を 視点を変えて二度なぞることで、理不尽に見える家族の言い分がそれぞれに理由も想い入れもあるのだということがわかる、という物語は初演と同じ。のわりにすっかり忘れていたアタシですが。

対面座席なのも初演と同じ。死角は減っている気がしますが、可能ならば中央寄りの方がよさそう。天井が絶望的に高くてスカスカになりがちなこの劇場なのだけど、装置はほとんどないそぎ落とした空間なのに、これだけ濃密な物語をしっかりと描き出す確かな力。ここでできるなら、平場にできる劇場ならほぼどこでも通用しそうな、公共ホールならば何処にでも持って行けそうな強い力を感じます。

物語の上では過去の出来事ゆえにヒールの父親。そこに悪意などひとつもないのに、「そうなってしまう」悲劇。嫌みのすぎる長男、執拗にカラオケを勧める長女、友人を連れてきて賑やかにしたいという次男、ちゃんとこういう場所にはくる次女。この家に居続けた長男の想い、ここから家族をリスタートしたい長女。その想いのすれ違いは善意のゆえに、絶望的ですらあります。その全体を母親が見つめる印象的なシーンでアタシの気持ちを揺さぶります。

それぞれの思いが空回りしたとしても前に進んでいかなければならない「生きている人々」。終盤の火葬場のシーンはどこか滑稽に見えるアタシたちはまるで仏の視点のような感じすらするけれど、その中で踊り続けていかなければならないのは、実はほかならないアタシたち自身なのだ、ということに気づいて呆然とすらするのです。

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2009.10.04

速報→「INU-KERA vol.9」

2009.10.3 19:30

犬山イヌコとケラリーノ・サンドロヴィッチのトークショー。ゲストは堤幸彦(下北サンデーズとか)22時過ぎ終了。

コミュニケーションシート、古いおじさん、サイン入りの本を105円。イケメン蕎麦屋探偵、年末の芝居、カウントダウン、人のブログで飯のこといわれても。ヤザワ。下北サンデーズ、フロントホック、おにゃんこ、AD時代、銀座NOW。落雷、竜巻。

前半はコミュニケーションシートを読むDJ風の作り。はじめて早く入ったので正面側の席を確保できたので、表情も見えて楽しい。さまざまな裏話を聞いたりする、こっそり感が楽しい。それについては書かないのが生の放談を見る人のたしなみ。なのだけど、映画の悪口とか、グミチョコとか。堤幸彦という人を見たのは初めてなのだけど、「下北サンデーズ」はもちろんのこと、アタシが自分の意志で初めて見たフロントホック公演「地球を七回半廻れ」も、とはをを。うれしい。

で、ついつい次回分も買ってしまうのです。

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速報→「呪われたバブルの塔 -ビフォーサイド-」北京蝶々

2009.10.3 14:30

北京蝶々の2バージョン公演の、「ビフォア側」。どちらか一方ならば、ウエルメイド風の側面も持つこちらがあたし好みの70分。12日までOFF OFFシアター。もう一方と同様、もし選べるなら窓とテレビの両方が見える中央よりを。

70年代に建てられた小さな雑居ビル。親からオーナーを受けついだ男は、経営を妻に任せきりで自分は2Fのスナックに入り浸る。経済環境も行き詰まり、老朽化の目立つこのビルはテナントの確保に苦労している。1Fのそば屋は異臭を訴える。ある日、オーナーの夫は亡くなったはずの父親の姿を見かけ。

ビフォア、とはいいながら観客の現在よりは先の未来の話。アフターと4年の隔たり。老朽化した雑居ビルのテナント探しの難しさから始まった物語は、やがて夫を中心とした妻や自殺した父親への想いの物語に移っていきます。あれれとウエルメイドになっていくのもちょっとびっくりなのだけど、笑いと想いのバランスがよくて、ふつうに面白い物語に仕上がっています。やはり見る順序はこちらが先のほうがすんなりくる感じがします。

もう一方ではほんの少ししかでてこなかった(が、今までにないメイクにちょっとぐらっとキタ)鈴木麻美が実にいいのです。美しいのに少々の疲れ気味とか幸せ薄そうな感じの役をやらせるとありきたりなキャラクタではなく巧いのはアタシの中の定評ですが、細やかで印象的。終盤でほんの少しの化粧をするのだけど、それにもハマルおやじのあたし。父親を演じた鈴木歩己も妙にリアルな疲れたおやじの見た目のインパクトはともかく、いいかけて止めるあたりの呼吸が抜群。オーナーを演じた岩淵敏司も硬軟とりまぜ印象に残ります。帯金ゆかりも実はこちら側のほうが抑え気味でナチュラル。

アフターサイドの方がぶっとんだ世界なのにくらべると、リアルさをもったこっちの方が、コミカルさを含めた巧者がこちら側にそろったという印象があって、それは物語の見やすさにつながっている感じがするのです。

あたしの見た3日昼の回は終幕近くの停電(だよな、いわゆるパイロットランプも含め全部消えたのはちょっと異常な感じ)が、物語の雰囲気にあってて、ちょっと薄ら寒い感じもしましたが、それも含めて楽しめるのです。

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速報→「夢のマニマニ」横浜未来演劇人シアター

2009.10.4 18:00

Y150博も終わり、期間限定で続いてきた 横浜未来演劇人シアターも終わりに近づく中での企画公演。日替わり2daysの二日目。120分ほど?。芝居・ダンスとバンドを交互に、久住昌住の街角ネタ写真「スライドQ」も挟みながら。

夢の中から逃げた羊を追って、その中で歌われていた歌の歌詞を取り戻してほしいという依頼を持ち込んだ老婆。探偵と特殊能力を持つ少年は早速調査を開始する。

久住昌住の作品、さまざまな人に聞いた夢の話を描いた漫画作品から着想。さまざまな夢の話からの不思議な体験。バンドのイベント的要素も大きく、気楽に楽しめるイベントなのです。

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2009.10.03

速報→「呪われたバブルの塔 -アフターサイド-」北京蝶々

2009.10.2 20:00

北京蝶々の新作。二週末のロングランは、2バージョンを交互上演。12日までOFF OFFシアター。70分。あたしは、アフターを最初に。席を選ぶなら対面のどちら側での客席でも窓とテレビの画面が見える中央を(たいした問題ではありませんが)

雑居ビルの一部屋、オーナーであり住み続けている男はディーラー風情に見せているが、その筋。一体の再開発を狙って買ったけれども、バブルは弾けて、売るに売れない。不動産業者を通じて、海外の不動産ファンドがこの建物を売って欲しいと云ってくるが。

ビフォアを見てないアタシには、序盤のこの場所を出たかったりする理由はわからないけれど、それは早々に片付きます。バブル、とは云っているけれど四十男のアタシがうっすら知っているあれを20代の作家が書くはずもなく、このまえまで不動産で起きていたあれをモチーフのよう。(のわりに、VHSとか、留守電とかやけに昔風。でも、液晶テレビならばあの頃じゃないよなぁ、なるほど)。

不動産が膨張していったあと、次の膨張を狙うハゲタカたち。その筋でも上海資本のファンドでも、食うか食われるかだという描き方はこの数年のジェットコースターのような世間を見て切り取った作家のちから。空っぽの場所を埋めなければ次の成長はない、という台詞に対峙して空っぽの場所を作り続けてきたのは誰だ、のような鋭い台詞が気持ちいい。半面、初日ゆえの堅さも見え隠れ。

全体としては笑いは少なめ、鬱屈と抗争の場所。そのなかで一手に笑いを引き受ける小林タクシーは圧倒的に強い。エロにみえてもスケベではない、怪しさ全開だけれども信用に重きを重んじる風水師は実によくあっています。全体にまじめに作り込む作演ですから、こういう緩められる役者は重要です。細野今日子のキャリアで強気に出る女の役は珍しいけれどぴったり。窓の外が見えない席に座ってしまったあたしですが、窓の外を見る彼女の表情の豊かさはそのハンデに余りある至福。帯金ゆかりのやさぐれたホステスはこの若さでは演じきれないけれど、序盤、一杯めを飲み干す直前の表情にちょっと惚れつつ。岡安慶子演じるホームレスはその建物の資産価値を下げる具体策を体現させる重要な役。汚く見えないのはアタシが女優すきだからですが。

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2009.10.02

ブラタモリ。

今晩からの新番組(NHK、木曜22:00-22:45)。

タモリ倶楽部で続けてきた町歩き、地図を見ながら想いをはせる楽しさ。アタシにとってのこういう番組のルーツは、BS FUJIの「東京の散歩道」(ナレーター・大高洋夫)なのです。街をみて、建物をみて、地図を見て。FUJIの方はビールや酒の話題も多くて楽しい。NHKのほうはそこまではまだまだ。

週末。なぜかコマ潰しが多い週末。全部に付き合う気はさらさらありませんが。

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