速報→「はちみつ」こゆび侍
2009.9.26 19:30
こゆび侍の新作。不幸な恋愛好きなアタシにハマる105分。28日まで王子小劇場。
蜂蜜専門店でバイトしている学生の男。映研で一緒の元カノが今でも女神のようで好きでたまらないが、すでに別の男が居て。店長は隣の花屋の男に不倫で貢いでいたりするが、バイトの男はそれがいやでたまらない。
恋愛に不器用だったり結婚できない人々の話が大好きなアタシなのです。 一瞬「競泳水着」のようなポップな恋愛話かと思わせても、そこから何段も暗くてえぐるような方向に。一身に捧げても実らない人々の話はおかしさよりも、一種の絶望感のようなものが先に立ちますが、物語の「見やすさ」のおかげでずぶずぶと暗部から戻って来れなくなるということはありません。 役者の力と、物語の見やすさがあいまって、劇団としての一つのスタンダードとなれる感じがします。
結婚という枠組みの中で「もうほかの女にいかない」証拠を求める妻と、それをこんな形にしてしまう夫を、あるいは一身の愛情を注いだ映画も何もかも奪う女神をヒドいということは簡単だけれども、そこまで、ダメだとわかっているのに想いを寄せてしまう側、一種のだめんずのように作家は実に丁寧に描きます。結果的にヒールとなる妻や女神の造形は、共感はできないけれど、納得感があります。
今作においては、朔太郎を演じた安藤理樹が圧巻。若くて軽い感じに見せるけれども、一途という難しいバランスを時に笑いをとりながらきっちり。この軸がぶれないおかげで、力のある女優たちのそれぞれの力が隅々まででている感じがします。ハマカワフミエが演じた最近の彼女の中ではあまり見かけない役どころ。女神は最後まで客の反感を一身に背負うヒールをきちんと。確信犯なのか天然なのかということを彼女が気づいているのかどうかということをぼかしたままというのはいいのかわるいのかわからないけれど、「(次の男に貢ぐための電話をしようとして、自分に想いを寄せているとわかっている男に)頑張れって云って」という台詞を云わせてしまうだけのキャラクタのすごさ。 三十女、というばっさりした云われ方をする店長を演じた佐藤みゆきはこの劇団の中の安定感はいつもどおり。台詞はなくても舞台に居続けるというシーンがいくつもあるけれど、その居かたの凄みのようなものも。
ネタバレかも
蜂蜜という甘露、それを集めるハタラキバチの力の絶望的な小ささと、すべてを独り占めする女王バチとの関係を人間関係に幾重にもあてはめてハタラキバチ視点からの終幕はあまりに悲しい。嘘でもいいから好きだ、という言葉をかけあう二人の中の気持ちがどうなっているのかは実はちょっとよくわかりません。 あるいは ボツリヌスを引き合いに出して毒と甘露が併存する魅惑みたいなことを持ち出すのはとってつけた感がなくはないのですが、結果としては効果的。終盤で蜂蜜が反射して店内がきれいに見える、というアンバーの光が美しい。
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コメント
ご観劇ありがとうございました!
おかげさまで終演する事が出来ました!
次回本公演は、劇団員公演!
その前に15ミニッツメイドもあって、わくわくです。
ますます頑張ってまいりたいと思います!
見守って頂けたら幸いです♥
投稿: 佐藤みゆき | 2009.10.04 13:58