速報「神様はいない」MU
2009.9.12 14:00
Muの80分二本立てのもう一本。笑いは抑えめで神様ってものにまつわる、しかしどこか日常の話。13日まで交互上演でモリエール。
そば屋の二階では作家の長女。編集者が書かせたい売れる本に対して世間に噛みつくような一本が書きたくて仕方がない。同居している外国人留学生はその文章に感動する。一階のそば屋は客が入らず長男は悩んでいる。商店街の知り合いが宗教の勧誘にくる。最初は拒むが、もっとカジュアルで神様を信じなくてもよく、互助会のようなもので会員は会員の店に行くようになるから商売にプラスなのだと説得されて。
「片思い〜」に比べると表だったコミカルはほとんどないのだけれど、真剣な行動ゆえの悲劇は後から思い起こすとどこかおかしさすら感じるのです。日本人だけが信じる神のようなものを持たないのを普通と考えている、という台詞が本当のことなのかどうか、本当のところを知るすべはアタシにはありません。まあそういうものだと考えて。
日本で起こせるテロはせいぜいが刃物を振り回して無差別に通行人を殺傷するということで、ある種しょぼいそういう現実なんかよりは、小説の中で自分のやりたいことがいくらでも詰め込めて、それこそがテロなのだと云うのです。それは足が悪くてあまり出歩かないという設定にされた作家の十分に屈折した自己実現の姿にアタシには思えます。それに心酔する留学生は結果として作家の信者になり、作家に迫る現実の脅威は、留学生が体を張って阻止するのだという戦争の縮小コピーのように、この小さな店の中で事件は起こるのです。
芝居の作家はここで何かを主張するということはなく、キャラクタ化した人々を描いて、小さな箱庭をここに作りだしています。そこかしこに「ありそうな」日常をぎゅっと濃縮してキャラクタを立たせているのです。
。 久しぶりに観たら髪の毛ばっさりでイメージのずいぶん違う足利彩は紅一点として舞台を支えます。長男を演じた小林至のどこかまじめだけれどうまくいかず、酒が入るとタガがはずれるというありがちといえばありがちなキャラクタを、しかしこういう味を持ってできるこの年代の役者は少なくて印象的。
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