速報→「花とアスファルト」青☆組
2009.8.9 15:00
川上弘美の「神様」(とその続編と)( 1, 2, 3, 4, 5, 6, )にインスパイアされたという、吉田小夏の新作。9日まで春風舎。100分。
入居者の減少が続く古い市営団地。入居者の拡大施策に伴って、「クマ」が引っ越してきた。
突飛な設定で一気にファンタジーに持っていく川上節を骨格に持ちながら、外側に社会を肉付けしていった印象。団地という選択は絶妙で、現代からみると少々近すぎる感じのコミュニティのありかたが、クマという異物に対してどう対処するかの面白さ。
「神様」はクマと女のほぼ二人だけの恋心あるファンタジーだったのだけど、その骨格の二人はもう少し枯れた感じに。外側の人々は、クマを恐れたり、夫婦じゃないのにほぼ一緒に暮らしていたり、離婚した妻のことだったり、こどもと二人で暮らす夏休みのことだったり、家に居る男と働く女の物語など、どちらかというと世知辛く、泥臭いあれこれを。シンプルなファンタジーという意味では純度が下がった感はありますが、それでもアタシはこの物語をいとおしく感じてなません。
木肌を生かした感じの舞台に、ほぼベージュの衣装という低いコントラストは、現実っぽい物語を舞台に乗せても、そのエグミを押さえ込んだ印象で、綺麗な感じにすら見せるのです。
外側につくられたいくつかのシーンは物語そのものはあまり運ばないけれど、他の人々の厚みを描いて配置していく感じ。スズカンと妻の会話の女のイラツキ感(生理前、に持っていかなくても、思うが)だったり、母と娘の会話、夏休みをどうするかの会話の静かで愛情があるのだけど、母親の疲れが滲む感じだったり。子供を演じた長野海が実にいい。 骨格の物語は、元の物語を読んだ印象よりはむしろもっと年代の高い感じなのだけど、それが女の部分よりも、少女に近い感じになっていくのには少しびっくりします。演じた羽場睦子の力、という気がします。
若い作家なのに、枯れた、という印象はあまり変わらない感じなのだけど、徐々に女や母というポジションが控えめに出てきて、作家の視線が年齢なりにあがってきている感じなのが、観続けているあたしには楽しい。
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