速報「五人の執事」パラドックス定数
2009.8.2 15:00
パラドックス定数の新作。115分。9日まで三鷹市芸術劇場星のホール。
大きな屋敷、働く五人の執事たち。ふせっていた主人が亡くなる。給仕を担当する執事がほかの一人を主人と勘違いするなど、五人の執事たちの行動は少しずつずれていく。ところが、あったはずの主人の死体突然消えてしまい..
この劇場は天井がやけに高くて、たいていの劇団はこの空間を埋めることがうまくいきません。空間をうまく埋め尽くすことができることもありますが、彼らがとった方法はちょっとすごい。 舞台奥に二階につながる階段。客席の2/3ほどに舞台を張り出すようにして、広大な空間を作ります。三部屋とその間の通路を壁なしで配置。一見だだっぴろい空間なのだけど、序盤で、部屋を移動する人物を観るうちに、それぞれの部屋に壁も天井もあるように思えてくる不思議。そこに空間があるのにそう感じさせない、観客の想像力で空間を区切っている「思わせる」のです。水を注ぐ音、鍵の鳴る音、小さな音のひとつひとつも丁寧に聞かせて、空間をきちんと制圧していくのです。
たった5人の出演者、この広い空間ですから実際にはスカスカで、広い屋敷のなかでごく少ない人しかいないという感じがよくでています。それも空間をうまくつかえているたまもの。
現実の事件を引用することの多い作家なのだけど、しばしば「妄想」という言葉で自作を語ります。おそらく完全な創作となる本作は、作家の頭の中で起きていることを丁寧に積み重ねて、妄想を紡ぎます。
何を語ってもネタバレになりそう、ですが。
主人に対する使用人の仕える気持ちの深さという背景と、 執事という独特の言葉遣いが全員同じというフラットな関係という構造がこの物語を支えます。この混乱する物語に2時間たっぷり浸り込むのも悪くないなと思うのです。
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