速報→「明けない夜」JACROW
20009.7.18 20:00
戦後の誘拐事件二つをモチーフにした90分。26日までサンモールスタジオ。「外伝」と名付けられた本編補完の一人芝居の企画も数回。本編のあとに観た方がいいようです。
社長宅の居間。戻ってこない娘を心配していると、脅迫電話がかかってくる。顔見知りの犯行と踏んだ捜査当局は所轄と本庁のいざこざはありながらも、会社従業員や元従業員の聞き込みを続ける。
扱っているのが現実の事件を痛ましい事件を下敷きにしているというのもありますが、「コメディ要素ゼロの」のうたい文句通り。犯人との行き詰まる死闘というのでもスーパーマンというのでもなく、見えない犯人をこつこつと積み上げ追い込んでいく丁寧なつくり。もっとも、アタシはといえば、わりと早い段階で「犯人こいつだ」と思いこんでしまって(しかもちょっと間違ってる)妙なバイアスをかけながら観てしまったせいで、もうちょっと素直に観ればよかったなとも。
刑事たちの行き詰まる物語、名士だという被害者に対する警察の扱いの問題、痴情のもつれ、一方的な想いを90分に濃縮。実在の事件をもとにする、というと、パラドックス定数が頭に浮かびますが、あきらかな創作であるパラ定に比べると、今作は現実の物語を忠実になぞりながら人物を描き出そうとすることに重きを置いているようです。序盤は、あからさまに「昔の刑事ドラマ」風に物語を運びます。謎解きだけを追いかけようとするとそういうことを舞台でわざわざやる理由が見えづらい感じもしますが、振り返ってみれば、あの時代の人々を丁寧にこつこつと描き出そうとしているということはよくわかります。
昭和30年代風の家具に圧巻。アタシは生まれてない時代ではあるけれど、足のついたステレオセット、テレビ、水平置きでレバーをひねるオープンリールなど、よくぞ探し出したという感じのちゃんと動いている(ように見える)機械に喜んでしまいます。世間全体が上向いていて、今は持ってないけれど少し努力すれば手が届きそうなこういう「もの」たちへの欲求が力を持っていた時代、というのは、物語とは何の関係もないけれど雰囲気を良く描いています。
ネタバレかも
当日パンフによれば、いわゆる戦後の二つの事件がベースになっているのだといいます。 (ネタバレですが- 吉展ちゃん誘拐殺人事件にまつわる刑事たち, 美弥子ちゃん誘拐殺人事件)このベースなのだと知ると、それを作家の創作による物語の嘘よりも、現実の物語の突拍子もなさを逆手にとって物語に取り込んでしまう、というやりかたも確かにアリだよなぁとは思わせるのです。
わがままをいえば、力のある作家なのだから現実をねじ伏せるような物語を創作してくれないかな、とか、現実を描きながらも定点カメラのように描くよりは作家のバイアスがむしろほしいかなというのは、アタシの単なる好みの問題ですね。ならば、もっと自由そうにみえる外伝も、なぁ。
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コメント
ご来場ありがとうございました。
また差し入れもいただき感謝感謝です。
また率直なご意見、なるほどなあと。
まだまだ勉強中です。
今後ともJACROWをよろしくお願いいたします。
投稿: 中村暢明 | 2009.07.21 16:00