速報→「スメル」キリンバズウカ
2009.7.5 19:30
キリンバズウカの東京2回目公演。100分。12日まで王子小劇場。
定職につかず納税もしていない地方出身者を出身地に戻すという「東京都永住禁止条例」。東京に残りたい若者がその名目のために清掃ボランティアを行っている、いわゆるゴミ屋敷。一人暮らしの老女だと思われていたが、20年ぶりの帰宅だと娘を名乗る女が現れる。
頼られ続けたいと思う母親という役割。少々突飛とも思える設定だけれども、実に丁寧に描きます。東京に居続けたい若者と独居老人のある種の共生の姿を舞台に、長い間会っていない母と娘の踏み込めない関係を軸に物語は進みます。共生は少々暴走する感もある幕切れですが、物語の主軸というよりは余談ぽい書き込まれ方で、母を描くということに作家の主軸はあるのでしょう。
東京ではないけれど地方出身というのでもないアタシには、チラシにある「上京すること」の想いのようなものは今ひとつ実感をもてませんが、それでも物語の枠組みとなる「永住禁止条例」というのは中国での農民の扱いのようなある種の差別的政策を持ってくるのは、ちょっと面白い感じがします。
娘を演じた黒岩三佳のクールさと、母を演じた稲川美代子の頑固さのようなものの対峙する舞台はスリリングできちんとした緊張感。物語の要請する母娘の関係を雰囲気からも描き出していて印象的です。わがままを許してくれという娘に対する母親のたった一言の返事はものすごく難しい台詞なのだけど、ちょっと凄い。
少し泣いて、日常に戻るという母親の描き方、アタシの母親にも少し思い当たる感じがあって、気持ちを揺らします。平日昼間に設定している作家の母親を呼んでのトークショー、ちょっと見たい気もします。
古い日本家屋風で下手にはゴミ屋敷を象徴するようなオブジェのようなもの。舞台奥には庭に面した格子状の引き戸。引き戸部分を横の格子に、戸袋部分を縦の格子にするというシンプルな作りなのだけど、実に美しくて印象的です。陰になる部分は少ない舞台ですが、役者の表情を漏らさず見ようと想うのならば、中央によった部分をおすすめ。
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