速報「鳥の飛ぶ高さ」青年団
2009.6.28 14:00
青年団の日仏交流企画のプロジェクト。7時間だという初演の超短縮版をさらに日本の企業に置き換えた翻案版2時間20分。京都のあと、28日までシアタートラム。
日本の中堅便器製造会社。社運をかけた新製品の売り上げもふるわず、外資メーカーの攻勢が厳しく、買収の危機にさらされている。たたき上げの二代目社長が倒れ、次男がその路線を継承しようとしたが、銀行はフランス帰りの長男を社長とすることを融資の条件とした。フランス人コンサルタントが乗り込んできて...
売り上げ低迷とか外資とか、イマドキのサラリーマンならばまるで客観できないようなネタのオンパレード。翻案されているとはいえ、1970年にかかれたのだという元の戯曲が少なくとも現在のアタシの気持ちには身につまされる感。日本の神話やルアンダの虐殺、果ては社内抗争をめぐる色恋沙汰に至るまでさまざまな対立・融合というか包含のプロセスを少々コミカルに、しかし戯画的ではありながらも今の日本に居るアタシに実感を感じさせるのです。もちろん人によってとらえ方は違うでしょう。
外国人が演じ、外国企業の話とすること、ぎゅっと圧縮していることで、作演の意図は今一つとらえづらいところもあります。愚直に見れば、取り込まれるプロセスの泣き笑いを俯瞰して描き出しているともいえるのだけど、フランス人コンサルタントやブレストのある種の万能感を成功のプロセスとして描いているようにも見えるし、逆に少々胡散臭く描いているようにも見えます。アタシはむしろ劇中追われる側の次男に近く、この種の手法に真っ先にいかがわしさを感じてしまうバイアスをかけて見てしまいがちなのですっきりしない感じは残ります。もちろん経営者たるもの、外部の視点はほしくなるものだし、そうあるべきだとは思うのだけど。
反面、人間はまるで書き割りのような「役割」に徹して描かれているような感じがあって、個人として生きて立ち上がってきている感じではありません。葛藤があっても「そういう属性」として描かれている感じがします。それがフランス風なのか、経済戯曲なるものの語り口なのは、はたまた作演の個性なのかはいまひとつわかりません。
でも、チラシにあるとおり、「経済戯曲」という側面は確かにあって、 違和感を感じたとしても、おそらくはそこら中で起きていることをリアリティを持ってしかしデフォルメして、そのまま見せているというところはあって、それをいいとか悪いとか作家の見方がどうとかいうこと自体が無意味だという気がしないでもないのですが。
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