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2009.05.24

速報→「愛のルーシー」北京蝶々

2009.5.23 19:30

北京蝶々の新作。見た目ラブコメなのだけど、この国のことを考える姿勢は変わらない95分。26日までOFF OFFシアター

バイオスフィアでの実験に参加している8人。実験開始からしばらくたち、二酸化炭素濃度は上昇し、水は汚染され、魚介はとれず、鶏は卵を生まない。人々はその中でも好意を寄せたりつきあったりしていく。実験施設ゆえにそれを観察している研究員たちも居て。

早稲田劇研の系譜かどうか、電子マネーやパンデミックなどほんの少し先に起きそうなことをきっちり描く作風なのだけど、今作は少々毛色が違う感じ。わりとタイト感よりも見やすさの方が勝っている感じでラブコメ風の笑いが満載。しかも破滅もなければ死者も出ないなど、少なくともここ数作を見慣れた目には北京らしくない、という感じは受けます。

地球環境を大規模施設の中に閉鎖系として再現する実験、バイオスフィア2やそれに派生する日本の実験施設の近未来を舞台に設定。閉鎖系の中での環境の維持の難しさに加えて、閉鎖系での人間関係の方がずっと難しかったり。同じ8人の閉鎖系での人間観察 というあたりに作家の中での何かのリンクが繋がったのでしょう。テレビのバラエティ、「あいのり」に重ねることでラブコメ風味の仕上がりに。そのラブコメ部分だけでもライトな感じで実に楽しい。

あたし自身はこの番組を観ていないのでそのおもしろさの半分もわかっていないのだけど、カタカナの愛称が与えられていたり、植物や生態系に対する愛や知識といったものを持つメンバーがいるなど8人の参加者には明確な役割が与えられているということは、なんとなくそういう感じを受けるのです。名前のアカラサマ加減もちょっとバラエティっぽいのです。だから、表面的には惚れたはれたをしている人間そのものでも、芝居の根っこにあるのはそれを観察している研究者だったりひいてはそれを観ている観客であるあたし自身を含めた系としての問題を突きつけている感じがします。

北京らしくないとはいえ作家の興味が近未来のあれこれで、おそらくは調べたのであろう生態系の話とかの蘊蓄ネタは彼ららしい。閉鎖系実験施設にしちゃやけに狭い感じがするのはまあ劇場の制約だけれども、OFF OFFという劇場を完全に隠蔽してしまうほど作り込んでいるのはちょっとびっくり。

テイヘンと呼ばれあまりにだめ人間扱いされる男を演じた本井博之がなんかよくわからないけれどちょっと凄い。人間くささが醸し出されるってのは技術なのかキャラクタなのか素人のアタシにはわからないのだけど。あまりな呼称といえばフコウと名付けられた都合のいい女キャラクタを演じた岡安慶子も美人だろうに不幸さ全面というのもまた別の意味で凄い。鈴木麻美演じる元ライター役が演じる、「覗いてみたい」とか「事件だいすき」の視点は、芝居や世の中を他人事として眺めている観客であるアタシにちょっと突き刺さる感じ。微妙な意地悪さの表情と少々ずりおちたメガネで見えてくるところがちょっとかわいらしさすら感じてしまうのはまあ、アタシの趣味ですかそうですか。

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