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2009.05.12

速報→「無頼茫々」風琴工房

2009.5.10 19:30

大正時代の新聞記者の熱い物語に女性の立場を絡めての120分。10日夜のプレビューは値段の安さもあいまって満席。18日までスズナリ。演出をはじめとしていくつもある公演サイトのblogもお楽しみも込みで読み応え。

大阪では大阪朝日が強い言論を持ち、世間は米騒動で騒がしい時代。「日の出新聞」に入社するために上京してきた男は気骨にあふれ途中で見かけた米騒動に加担して逮捕されたりしてしまう。言論の自由をめぐり新聞と政府がやりあっていた時代だったが、なかなか動かない上層部に業を煮やした若手が動き始め、内務省に目を付けられる。その署名を集めているさなか、大阪では内閣弾劾の急先鋒だった大阪朝日新聞の報道に端を発した白虹事件が起こり。

当日パンフによれば気骨ある明治の新聞人・陸羯南(wikipedia)の物語を時代にずらして語ろうとしたときに新聞のありかたが大きく変わっていることに気づいて本作になったのだといいます。大阪朝日や白虹事件(wikipedia)あるいは貧民街という時代の背景を借りながら、登場人物たちも舞台もおそらくは作家の創作として、時代をぎゅっと凝縮して詰め込んだ印象があります。

作家のパンフでの言葉の通りの中身。時代を背景とした新聞の変わる瞬間に生きている男たち、あるいはその社会にもみくちゃにされたりしながらも生きる女性たち。二つの糸を縦に横に物語を編むのです。二つは確かにその時代にあったことなのだろうけれども、アタシにしてみると物語を観るときの視座をどこにおいていいか迷いながら観てしまった感があります。もちろん新聞や言論というあたりが主軸なのだろうけれども、それに負けず劣らず記者になったり伝統的な女性の姿だったりとか、恋心めいたものとか、洋行だとかといった具合に多彩で魅力的な人物も多くて。しかも女優だからってんで目移りしてしまったというダメ観客なのだということかもしれませんが。アタシの好みでいえば、新聞と女性の話がプレビュー時点ではその混合がまだ少々解け残っているという印象。もちろんどちらも一本の芝居になりうる題材なので違和感なく融合させるのはかなり手強い題材なのに、手を抜くことなく正面突破で進もうとしている訳で、そうとう大変なことに手を出しているわけですが。

とはいえ、この手の芝居、とくにこの作家のように徹底的に調べ、物語を創作するタイプの作家の物語を上演台本とwikipediaを相棒にしながら学び読み解くというのはいくら時間があっても足りないぐらい、アタシにとって楽しい時間なのです。音では勘違いしていたのは序盤にある「政論」。変だなと思いながら「正論」だと思ってました、なんてこともわかっちゃう。

役者が大幅に入れ替わった印象のある風琴工房で客演も多い今作は次のステップに進んでいる感じがあります。作家と語りを演じた渡邉真二のぶれない感じが印象に残ります。ついつい真面目一辺倒になりがちな芝居を軽く揺らす浅倉洋介が頼もしい。多根周作の誠実に見える感じ、根津茂尚の気骨の安定も安心。はざまみゆきが見せるひたむきさ、津田湘子の見せるある種の貫禄、小山待子の溌剌さも印象的。

プレビューとはいえきっちりと作り上げられた舞台。もちろんある種の固さがあるのは否めないのだけれども、この安定は揺らがないまま1週間で熟成されていくのではないかとも感じるのです。

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