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2009.05.11

速報→「針」メタリック農家

2009.5.10 14:00

メタリック農家の駅前劇場進出作。童話世界のような可愛らしさの中に滲む、でも童話世界になりきれない人間の話、と読みました。100分弱。10日まで。

永い眠りから覚めた王女。その国は荒れていて知恵者の提案で王は三つの法律を決める。それは人を憎まないこと、独占しないこと、実際以上に理想像を抱かないこと。守らなければカエルの声が響き、人はそれをやめる。王女は生誕の祝いのドレスの仕立屋と恋に落ち、貧しい兄妹を知った王は妹を養女に迎え病を治療し、詐欺師の男の扱いに妻は手を焼く。

舞台いっぱいに建て込まれた童話世界を体現した装置。じゃあ物語を童話世界かというと時々現実に引き戻したり。たとえば埋められない溝として扱われている在日という存在には少々配慮が足りない気はします。もしかしたら作家の実体験の何かにつながるという可能性はないとは云えませんが、膨大な背景を持っていて観客それぞれの背景に依存しがちな単語をあえてここに持ち込まなければならないほどでもなくてあまり巧い方法ではない気がします。

三つの法律は愛とか恋とかをしているときに必ず起きる現象を禁じているというのはわりと早々に見えてきてしまう感じはしますがそう大きな問題ではありません。これだけの人数の世界で別々の人間関係から生まれるものとして描こうとしていることは終幕近くに明らかにされるのですが、観ている側からは少々散漫というかどうやって観たらいいのかわからなくて物語の軸を見失うと感じてしまいます。さまざまにちりばめられた物語が収束しない感じにみえてしまうのももったいない。

仕立屋と王女、仕立屋と未亡人のシーン、ベッドではなくて召し換えたり採寸するシーン、の二人の近さの色気。セクシーさ加減がくらくらします。仕立屋の耳に心地よい言葉も実に美しく、ファンタジーとは云いながらこういう女性視点の恋心を描かせると作家は実に巧い。

伊藤ヨタロウを舞台でみたのはずいぶん久しぶりなのだけど、ウクレレのシーンはキヨシローを織り込みつつもその一瞬で持っていってしまうような圧倒的な存在感があります。

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