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2009.04.20

速報→「みんなの妊娠」La Compagnie An

2009.4.19 14:00

ラ・カンパニー・アンの新作。妊娠や出産にまつわる6つの物語を緩やかにつなぐ100分。19日まで雑遊。

カフェを開いた女のこころざしは、捨てられた子供を引き取り育てること。荒唐無稽と笑われても世界は変わるはずで「hanai-chimonme-cafe」
三年目になろうかというカップル。世間とか経済とかが気になって仕方がない女。ある日、男が妊娠したのだと騒ぎだし「36.7℃」
不妊に悩む女。もっと簡単に手に入ると思っていた幸せが簡単には手に入らない。段階を経て高額になっていく治療費もいまひとつ協力する気の薄い夫も気がかりで。「平らげないでよ」
フランス、両性具有で生まれ一度は女となったが性別適合手術で男となったデュボワの店に、パートナーの望みで子供を作らなきゃと決心した女が訪れる。「デュボワの場合」
江戸時代らしい。一度限りの不貞がもとで身ごもってしまった女。母姉は家のために産めと云うが、その相手は実は狸で化かされたのだという。「悪事千里を走る」
女が気づいた不思議な場所にはもう一人いて、そこはブラックホールなのだという。「ブラックホール」

妊娠とか女性の生き方ということだけにとどまらず、そこにつながるだろうさまざまをがっつり100分に凝縮。赤ちゃんポスト、不妊、アボガド、想像妊娠、少子化対策、熟年離婚、派遣切り(満了での終了を責める先はどこだ。政治か)、従軍慰安婦、両性具有、性的適合手術、大奥、望まれない妊娠、イエの制度、違う人種、子供は今の世に生まれてきて本当に幸せなのか。とか。

もちろんさまざま膨大な問題につながっているのです。それを無理矢理にではなくきっちり隙間なく高密度に詰め込んでいる印象。芝居を観る側にしてみれば、それは得策ばかりではありません。過剰なほどという感じは受けるし、台詞の一つ一つがあまりに重くて情報を持ちすぎているために、背景や社会を描いただけの書き割りのようで、人間の悩みさえも重みがみえづらくなってしまうきらいはあります。告発や報道やアジテーションとしては、この過剰感ゆえにいろんなフックがあったり、今の時代の感じを感じさせる効果は間違いなくあるので、それが狙いならば成功しています。

「36〜」の弱者ゆえに社会が気になる女という立場も男のある種の無邪気さも実は伝統的なジェンダー観からみるとひっくり返って見えるのがちょっとおもしろい感じ。自身に引きつけてみると、派遣社員のことは立場が違うとはいえ他人事ではないのがちょっと気持ちにフックします。

ブラックホールはどこか「遊◎機械」風の仕上がり。あの頃だって十分社会的だったはずだけど、時代が下った今の描き方としてはただしいのだけど、もっと切実で世知辛くてファンタジーにはなりえないのは悲しい。

彼女たちのジェストダンスは一層洗練された印象。転換をうまくつなぐのにも効果。

「悪事〜」で和服の衣装変化が間に合わない風になっていたけど、結局全員が最後はもとの洋服で、今の物語に引きつけていて。あれ、全部演出なのかなぁ。

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