« 速報→「7歳の孫にジンを2杯飲ませた祖母」うさぎ庵 | トップページ | 速報→「さとがえり」KAKUTA »

2009.04.05

速報「帰れない夜」KAKUTA

2009.4.4 14:00

KAKUTAがサウンドプレイと題して続けるシリーズの新作はホラー・ミステリーテイストの4本にオリジナル1本で構成。125分。12日までザ・スズナリ。

引っ越しをきっかけに知り合い趣味の読書で繋がり古い家に住む男のところに通うようになる女。ここにずっと居たいという気持ちが「帰れない夜」(オリジナル)
別れ話をもちかけた男は、最後に女が差し出した手を取ってしまったがために、女のたくらみにはまりこんで「あなたをはなさない」(井上夢人)
家族を事故で失なって失意の日々を過ごしたが、残されたアパートのおかげで暮らしていけている大家。徐々に減ったが、最後に残った一人入居人は大学生で亡くなった息子の面影を持っていて。ある日その大学生が病気に伏せっていたことを知って、親代わりのように熱心に看病をして「生きがい」(小池真理子)
男と別れて訪れた京都でふと入った神社。一面の絵馬は別れを願うものばかりでその悪意に押されそうになる。帰ろうとしたとき目に留まった一枚の絵馬に、自分の名前があることを知って「縁切り神社」(田口ランディ)
息子と訪れた公園、息子はここにお化けがでるのだと脅す。小さい頃からこの公園で遊んでいた父親は子供の頃の友人との一日の光景を思い出す。いつものように遊んでいたのに、その直後に事故に遭って死んでしまったと聞いてあまりのショックで落ち着かない翌日、ふとその公園を訪れると「昨日公園」(朱川湊人)

もはや朗読ではなく、ふつうの芝居にト書きをつけたような独特のスタイルは、もはや彼らのものだといってもいいのです。 オリジナルの一本が、ほかの四本の間をブリッジする構成になっているのも、もはやスタイルとして確立している感すらあります。

タイトル「帰れない〜」は読書と出会いと別れと、一人で居ることと二人でいることと。細かいパートなのだけどしっかりと繋がるものがたり。

「あなたを〜」は離れたくない女の思いあまっての行動のワンアイディアでぞっとするけれど、その延長線上の終幕の怖さはそれを上回る凄みすらあります。たぶん文字で読むよりも絵として見せられるほうが怖さが伝わる感じ。

「生きがい」はあとから考えれば文字の上のフェイクをどう舞台に乗せるかというのはちょっと綱渡りな感じはあります。なくなった家族を想い残されてしまったひとの想いがある種の倒錯に落ち込んでいくのだけれど、その全貌は終幕近くになって明かされます。

「縁切り〜」は骨組みとしては一番ホラーっぽい仕上がりの小品。絵馬を掛ける腕の演出がちょっと凄い。これは小説では味わえない感覚。

「昨日〜」はどちらかというとミステリー仕立て。なんどもリピートしていく場面の行く末の不安は男に「見殺しにする」という選択を与えるのだけれど、そこでは終わらず、終盤で見えてくる大枠の構造がちょっとすごい効果をもっていて、もって行かれて泣いてしまうのです。圧巻。

いずれも読んだことは無い小説なのだけどきちんと。言葉をしっかり読み、伝えるというのは、声優とも繋がるKAKUTAという劇団の「ものがたりを声で伝える」力を育てているのです。

|

« 速報→「7歳の孫にジンを2杯飲ませた祖母」うさぎ庵 | トップページ | 速報→「さとがえり」KAKUTA »

演劇・芝居」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 速報「帰れない夜」KAKUTA:

« 速報→「7歳の孫にジンを2杯飲ませた祖母」うさぎ庵 | トップページ | 速報→「さとがえり」KAKUTA »