速報→「ショート7(Aプロ)」DULL-COLORED POP
2009.4.29 19:00
ダルカラの作家・谷賢一が他劇団などに出した短編を中心に7本立て「グランバザール」豪華版。Bバージョンと交互上演で、6日までpit北/区域。全体で120分。休憩10分。初日は満員、少々席はきつい感じで。
戦争で制圧された村で息子を待ち続ける「ソヴァージュばあさん」(1, 2) 。 OLの姉のところに転がり込んだ妹には秘密があって「Bloody Sause Sandwich」(1)。 帰宅しての私の時間「15分しかないの」(1)。 一人で風呂に入る時間は私にとっての贅沢な時間「アムカと長い鳥」。
全体的に繊細な仕上げ。細やかな表情に依存する演出という印象に作ります。初日時点ではこの劇場ではちょっと難しいとも感じます。客席がかなり変則なのに役者が手前側で対面する芝居が多いために、全員の表情が拾いきれないためにアタシの気持ちを十分に巻き込めない印象を特に前半の二本に感じます。もちろんもともと強度のある本を書く作家ですから、それは水準としたうえでのさらにその上を求めてしまうのです。
「ソヴァージュ〜」は4x1hでの上演を見ているためにやはり比べてしまうのだけど、わかりやすさに力点を置いた印象。ソヴァージュの解説をより明確に追加し、終幕の女の行動を逐一描くのも追加。アタシの好みは4x1hの方で、今作の演出では逃げてきた最後のシーンが蛇足に感じてしまうのがやっかい。役者も4x1h版がアタシには印象が強すぎるのだけど本作はイケメン指向な感じがします。ソヴァージュのゆがんだ表情はこちら側の独自でその女性に対する印象がまったく変わってしまうという点で独特です。
「Bloody〜」も初演を見ています。姉のところに転がり込んで一週間の妹が秘密にしていたこと。妹に見えているものの姿、なぞめいた白衣。白昼じゃなくて朝方というのが独特な感じも。妹の苦悩をもっとタイトに見たい。眼福ともかく、これも細やかな表情が勝負になっているようで両方の表情を観たい。しかしガザがどうとかという新聞と清水由貴子のワイドショーというのはニュースの時間軸としてあってるんでしたっけ。
「15分〜」は客席の特殊な構造を逆に巧く使って三人がうまくピンポンをしている感じになっています。3対1の電話が2対2になるところも視覚的にそういう形になるのも新鮮で面白い。15minutes made版ではもっと男が笑わせるような感じだった印象があるのだけど、具体的に思い出せないから嘘かも知れません。どの客席でも表情が見える。欲張って最前列に座ってしまったがために堀奈津美がむしろ視線の外に行きがちなのが残念ではあるのです。
「アムカ〜」は一人芝居、アタシは初見。正面を向いた芝居が多くて、劇場の構造は問題にならず、実力を見せつける感じ。風呂場とう設定からの女優の下着姿はもう眼福以外の何者でもないのだけど、その見た目にアタシがぼーっとしているうちに物語はアタシを息苦しいところにきっちり追い込んでいくのです。 結婚して地方に住む主婦の漠然としたしかし確実に迫ってくる不安な気持ちを知ることは多分一生ないのだけど、それを追体験させるような物語と、切迫する心的ストレスを丁寧に描いています。それは誰にでも起こりうる一人の女性のある状態をそこに出現させるという目的はきちんと達成しているし、それは彼女の物語かも知れないし、行く末の絶望感を暗示してるようなところはあるけれど、その先に何があるのかを観たい気はします。 ふつうの会話の間に挟まれる影の部分という落差とリズムを一人の役者がどれだけやりきるかというような勝負のところがあって、それはきっちり。
夜公演に設定されている「キャバクラードポップ」はトークショーを仕立てつつ(初日は中屋敷法仁と演劇が生き残れるかみたいな話)、キャバクラ風衣装(これが眼福なんだまた。スタイルのいい女優揃ってるし)で空気を読まずに突っ込むみたいなノリにしたいのだろうけど、不完全燃焼な感じも。このスタイルなら徹底的にふざけるべきじゃないかと思うのです。
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