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2009.04.26

速報→「リビング」カスガイ

2009.4.25 19:00

「柿喰う客」の玉置玲央のユニット・カスガイの旗揚げ。キリンバズウカの登米裕一脚本を玉置玲央演出で。110分、29日まで王子小劇場。

二人暮らしには少し大きなマンション、姉弟で暮らしているが、姉がレイプされた事件をきっかけに、家から一歩も出なくなり、弟のアルバイトの稼ぎだけでささえられている。姉も弟も他人を連れ込んで奇妙な共同生活が始まってしばらく。そこに「ハクアイノヒ」なる団体から派遣されて臨床心理士がやってくる。同居しながら、社会復帰を支援するのだというが。

当日パンフによれば、玉置玲央が尊敬するある女性を「救いたい」という気持ちがこの芝居の衝動なのだといいます。トークショーでも詳しくは語りませんでしたが作家・登米裕一との会話の中で出てきた「セックス(という行為)でヒトを救えると思っている」という玉置玲央の気持ちは彼ほどピュアには思えなくても、アタシですらちょっとはそんな気持ちが残っていたり。たぶんそれは男の側の一方的なファンタジーでしかない、ということも薄々判ってはいるのだけれど。高いテンションや、ことさらに刺激的な役の多い玉置玲央なのだけど、彼の作り出したこの世界も、トークショーで語る言葉にも嘘偽りはないのです。

ネタバレかも

心に傷を負った女を救う、という物語かと思いきや、まるで失恋して別れて一人になった直後のような終幕。溢れる気持ちが切なくて切り込まれます。その少し前、追いすがる女、断られて最後の「ぎゅっとして」の気持ちも実にはまります。直後の男のようなセリフのオチも距離感があってちょっといい。

チラシにはない日にも終演後のトークショーを設定。アタシの観た土曜夜は作家・演出での対談形式。柿喰う客のフォーマットに近いやりかたなのだけど、芝居に対する想いは伝えてもことさらに自分の力を誇示する方向には行かないためか、あるいは質問というよりはお題を貰って会話するという形式がうまくはまったのか、近年まれに見るぐらいに観客の質問も次々に上がる感じで実にいいトークショーでした。

渡邊安里、キャラメルでは決して見られない影と我が侭さ加減。カラダを張っているのは舞台が近いこともあって、実に等身大で生き生きとしていて若い女性らしさが存分で見応え。深谷由梨香の怪しい崇高さが実にキャラクタにはまります。須貝英のひたむきさゆえの屈折、芝居では特に中盤まで真ん中に居続けることで観客の視座となります。加藤敦の軽くても深い業のようなものを感じさせる奥行きは前半で緩急のリズムを作っていて見やすい。

終演後に近くの観客が云っていた「女優が同じタイプの顔つきにみえる」というのはたしかにその通りで、選んだであろう主宰の好みというよりは、描きたい世界にあるべき造型には多様性よりも統一感を求めたということか。いや、もちろんアタシにとってはそれがやけに好みだったりもするわけで以下略。

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