速報→「12人のそりゃ恐ろしい日本人」チャリT企画
2009.3.4 19:30
裁判員制度の話から始まるけれどそれにとどまらずに飛び回る90分。8日までOFF OFFシアター。深読みが幾らでも出来る軽薄な厚みがあります。←意味不明
風呂なしボロアパートに暮らす男、居候がいる部屋に浮かない顔で戻ってくる。世間の衆目を集める裁判の裁判員に選ばれていて、その最後の評決を決めて戻ってきたのだった。結果死刑となったのだが、それは自分の意には添わなくて。
裁判員の話に端を発しているのだけど、派遣切りやらカラスやらテロとの戦いやら隣に誰が住んでいるかわからなさだったりと、取り留めないほどに発散しているかのような物語。正直に言えば、さまざま詰め込んで軽い語り口は彼ららしいのだけど、そこから客をどうしたいのか、ということが今一つわからない感じはあって。
軽い語り口を身上としながらも、世の中のおかしさを敏感に感じ取る作家らしく、気になってしまったことをすべて放り込んでパッケージしている感じがあって、それを90分というコンパクトにしているのはたいしたものだけど、その放り込んだものをもう一段上で構造としてまとめられたらなぁと望んでしまうのです。
本当に被告は有罪なのか、それは証拠や証言に基づいて理性的に判断されたものなのか。市民感覚という錦の御旗で「思いこみ」に流されていることを自覚すらできていないのじゃないか、というあたりは明確に語られています。
ちょっとネタバレ
思い込みで罰せられる、というあたりからもうちょっと飛躍する物語。悲惨な事件の犯人は罰せられなければいけないけれど、果たして犯人なのかに端を発して、 作家の発想はそこからさらにさまざまへ。 見た目と中身、のようなゆるやかなつながりは、払ったはずの家賃が化けてしまったり、会社がなくなってしまったり、果ては「証拠が作られたり」。あるいは破綻した経済、終わってしまったことへの無力感、は思考停止、逆ギレする感覚。究極の経済政策への不気味な足音。そしてもう一つの「犯人」は本当に犯人なのか。
株券やら有価証券が紙くずになったり、みんながあると信じているから価値があるという幻想だったっり。金融が破綻するということも一種の「思い込み」の破綻と描いているのはちょっと面白い感じ。
いくつも巧いせりふがあります。「今晩は泊めていただけるんですね」居座られる覚悟を躱される。「マツコデラックス」の引用はそれがあり得ないことだと一瞬で観客に引き寄せる。セリフじゃないけど「死刑の歌」の軽薄な罪深さ。「どんな魔術を使いあそばせて」というのも何気ないけどなんか凄いセリフの気がする。
女子高生のくだり、電話の相手と自分の関係を比べて身を引く(悲しすぎるが)というダイアログは美しいとは思うのだけど、つながりどころがわかりづらい気がして、今ひとつ意図はつかめず。
二日目時点では、主役を演じた宍倉靖二は声に不安。 ピンチヒッターだというザンヨウコは何の問題もなく圧倒して安定。 大家を演じた内山奈々はあまりにステロタイプなおばさんキャラだけど、ぶれずに笑える感じで巧い。
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