速報→「メガネに騙された」箱庭円舞曲
2009.2.21 19:30
箱庭円舞曲の新作。3月1日までOFF OFF。120分。
農協が持っている就農支援センター。週末兼業だったりここに移住してきたりする人々の支援を行う。農協職員や農協を通さないで買い付ける企業の営業担当が出入りしていたり、肥沃な土を作っている人がいたりする。何組かの移住者が定着しようかとしているとき..
日経とかガイアの夜明けみたいなドキュメンタリーで農業がキャッチーな昨今。でも彼らはリーマンショック以前にこの題材を決めたのだと云います。農業がしたいという漠然として緩い都会モノの気持ちと、人が来ることは基本的には歓迎しながらも、分け判らない人が流入してくることや、そもそも何の特徴もない一農村が生き残っていけるのか、という割とシビアな問題をぎゅっと濃縮しています。
そういう社会的問題を扱いながらも、マクロな視点のお題目ということにはしないで、あくまでもそこに登場する人々の揺らぎや衝突、というミクロな視座から描く作家の視点は少々の底意地の悪さを持ちながらも、まるで箱庭の中で動く人々を丁寧に描くようで優しさすら感じさせるのです。
就農する人々につけ込むような農機具やら法人やらの売り込みで始まる舞台。物語は当初、「見かけとは違う」という細かなネタを積み重ねて進みます。危ないタバコもどきだったり、夜のことだったり、謎のカップルだったり、どう考えても頭おかしい人の才覚だったりと、物語の主軸はどこにあるのだろうと思いながらも、ひとつひとつはごく丁寧です。
後半、芋煮会でのハプニングを巡ってこの場所、この町に隠された「見かけとは違う」事実が明かされていきます。少々じらすように何が起きて何が問題だったのか、その企ての全容が、登場人物達は知っているのに、場面は明らかになった直後から始まるという少々トリッキーな構成。一歩間違えばひどくわかりにくいだけになりがちだし、結果として上演時間が長くなってる要因だと思うのですが、この場面の描き方も実に丁寧で、セリフにきちんと食らいついていけば、そのじらされることすら快感というゾクゾクとする面白さを感じるのです。
あるいは女三人たちの「見かけとは違う」会話も結構好き。まあ基本的にアタシ好みのフォーマットではあるのだけど、地元の人、少々浮いてる人、真面目一本槍に見えるのに凄いひとというそれぞれの違いが浮き彫りになっていく過程がちょっと凄い。ミミズの都市伝説を巡る思い込みの会話はありがちな話題ではあるけれど「生きるの辛くないですか?」というセリフで締めるセンスはアタシの気持ちにすとんとはまります。
単純な男と手玉に取る女の構図がいくつか作られていくのも実に「箱庭」な感じがして面白い。終幕、女のピンチに出ていく男たち、立ちすくむ男、止められる男という対比が鮮やかな一瞬があって、それまで積み重ねてきたこの物語の関係がこの一瞬に凝縮される感じなのも後から酒を呑みながら思い出すと凄いなぁと思ったりするのです。
ネタバレかも
芝居を見ることの楽しみの一つはワクワクする感じだと思うのです。グダグダな前説(これも狙いかと思いますが)から舞台装置に驚愕。すげえなぁとばかり、この一瞬でもって行かれる感じはあって、一気に物語に入り込みます。
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