速報→「有限サーフライダー」飛ぶ劇場
2009.1.10 15:00
北九州の劇団、飛ぶ劇場の新作。北九州・大阪を経てこまばアゴラ劇場で12日まで。105分。
季節はずれの寒い時期の海岸。海の家を訪れる一行。小さな下請けゲーム会社の社員5人で普段はやらない体験サーフィンをやろうという社内旅行のようなイベント。 プライベートも仕事もいまいちぱっとしない彼らだが、イベントはイベントとして楽しもうとしていた矢先、津波の警報が出て、様子を見ることになる。海の家を営む家族はやたらにクルマに興味を示したり、娘の作る焼きそばを執拗に勧めたりする。海辺を散歩していた社員たちは打ち上げられた骨を拾ってしまう...
終わりのないゲーム、というキャッチコピーのゲームを作った彼ら。下請けゲーム制作の悲しさで作ったゲームが発売できなかった悔しさ、それに断固戦わなかった人、理由も知らされずに中止だけを告げられた社員たちなどの鬱屈。仕事だけじゃなくて、恋とか結婚とかもままならない感じで、限りなく広がる未来というわけでも、がむしゃらに突っ走るでもなく、積み重ねも、先行きも見えはじめた30代の男たち。そういう現実の物語を縦糸に。
横糸となるのは彼らの職業であるゲームというリアル感の乏しい、何度でもリセットの効く世界を発端に。海岸で出会った、波乗りを模したいかがわしげな神事はやがて、死をリアルに意識し、さらに生きていくことを強く意識するという物語。
いきることだの死ぬことだのを持ち出しているものの、今の私たちが生きていること自体がどこかリアルを感じづらく、モラトリアムという仮想の中にずっといるような、実感の得られないふわふわとした感じがあたしの気持ちにはまります。結婚できないねぇ、とかいいながら、あるいは仕事がうまくいかないねぇ、とかいいながら、じゃあそれこそ死ぬ気で何かをしたのか、なんだかんだいいながらそこに立ち止まったままくるくる回っているような妻子持ちの男の姿は、(妻子はないけど)あたしの、一歩を踏み出せない感覚によくあっています。
もっとも、劇中の彼らの年齢は30代、あたしはすでに40代ですから、おなじように感じてるんじゃ、ほんとはだめなわけですが(泣)。
紅一点の社員は、男たちとは別の役割が与えられている感じ。女性ならそれは20代のおそらく後半に考え始めること、ということなのかもしれません。それでも彼女はまだ若く、未来の選択肢を選びとる感じがあって、それはこのポジションを紅一点としたバランスがうまく機能している感じがします。演じた大畑佳子は確かに普通な(失礼)感じがよくて、可愛らしさ(水着があったりする!)もあって、みんなが好意を寄せているということにリアルを感じさせます。
元ゲーム業界だった、という作演なのですが、劇中でふれられる「カリスマゲームデザイナーも今はたいしたことなくて、九州に引っ込んでしまったからなぁ」というような要旨の台詞はどんな気持ちで書いたのだろう。別にゲーム業界に未練があるわけじゃない、とは思うのですが。
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