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2009.01.24

速報→ 「ソヴァージュばあさん / 月並みなはなし」4x1h Play#2

2009.1.23 20:00

4x1h(1,2,3)の二回目のplay。演出の黒澤世莉の戯曲を組みあわせて(1,2,3) 50分+15分(休憩)+30分。休憩中には飲み物も販売、30日まで、シアター・ミラクルはトイレのドアを開けた瞬間の足下の段差に注意。←ひっかかったらしい。タッパは低い劇場なので、迷わず前を。[CoRich]。

月移民に選ばれなかった残念会。そこになぜか職員が来て、別チームの欠員を埋めるために6人の中から月に行く一人を60分で選び出せと命じて「月並みなはなし」。
戦争で制圧された村、待ち続けるばあさんの家に泊まる事になる敵の兵士、暮らし、手紙「ソバージュばあさん」(モーパッサン/「Miss Harriet」所収)。

「蹂躙します」と宣言された「月並み〜」。最初の10分はセリフも伝わらないし、そもそも登場人物より多い役者の人数。ある種ギミックに走る中屋敷演出らしさに見えます。が、そこを過ぎてから、ルールというか読み方がうっすらわかるところからは面白い。あくまでもドライに喋る、薄っぺらい断片を重ねていけばミルフィーユのように豊かで厚いものが出来る、というのが柿のやりかただと思うのですが、若い役者、この場所にこの人数、というあたりと、アタシが見慣れない役者が多いので、劇団出見られるような高みにはまだちょっと遠い感じがします。それでも、入れ替わったり、二人のやることが揃ったりずれたり、片方だけになったりという変化は実に楽しいのです。

カップルが向かい合って腰を揺らすように会話を始めようとするシーンが好きです。共振しそうで共振しない、というドキドキする感じ。あるいは真ん中に立ち続ける百花亜希が真ん中で悪巧みしそうな感じが楽しくて。ミミ、という役は実は全てをコントロールする黒幕、みたいな見方もこの芝居にはあるのだけど、それを感じさせる演出。というか、彼女の顔を見てるだけで嬉しくなってしまうのはダメ人間のあたし。

「ソバージュ」リーディングの時に作家の方に頂いたコメントによれば、大枠と数カ所の引用で体裁はほぼ書き直しているのだといいます。 それでも芯となる圧倒する物語というかセリフのチカラ。シンプルな舞台、少ない役者がしっかりと作り出す場所。演出もきっちり、あくまでも丁寧に。あたしの好きな「今の人のつくる物語」というわけではありませんが、そんなこととは関係なくたぶん芝居を観たことのない誰にでもみやすいスタンダード。

戦争というものの草の根からの見え方、そこに正義があるとかなんとかということなんか関係なくて、人を殺すこと殺されるということ、それが連鎖していくということの本質が実にシンプルに。

芝居を通して刻むメトロノームは最初こそ耳に障りますが、この静かな場所の空気に自分が取り込まれていくような不思議な効果があります。巧いなぁ。リーディングも見ていて、しかも古典ですから、アタシが泣かされてしまうのは意外な感じすらします。それはセリフだけではなく、菊池美里が体現して見せる「無表情の中に現れる色」の細やかさ、母親というものの強さがアタシを揺さぶっているから。ごくシンプルな造りなのにリーディングとは明らかに違う世界がそこにはあるのです。 それを支える三人の役者も実にいい。

ソバージュって、「野性的な」とかって意味なのね。だから野蛮とか何とかいう台詞があるのかぁ、とググって気づく楽しさも。

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