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2008.11.02

速報→「幸せありがとうマジで!」パルコ

2008.11.1

劇団外、本谷有希子と題してのパルコ劇場初見参。きちんと書き込まれた物語を本谷節で120分。 9日まで。そのあと大阪、岡山。

新聞の販売店、夫婦と子供たちと住み込みと。ある日、店長の愛人だと名乗る女が現れる。上がり込もうとする彼女を家族は一眼となって阻止する。が、店の外の彼女を住み込みのバイトが匿い自分の部屋に連れ込む。同じニオイがするからだというが、見た目はあまりに地味なバイトと、派手な自称愛人とを繋ぐのは。

新聞販売店での夕刊の仕分け作業。無言のまま5分以上は続く冒頭は、彼らの日常の作業で派手なことなんか何もない、生活にだって余裕がなく日々をこなすのが精一杯の日常。でもその内側にはため込んだ鬱憤やめちゃくちゃな人間関係が渦巻いていて。そこに突然放り込まれた「愛人」という火種は、あっという間に暴発の連鎖を繰り返して、という感じの前半。いわゆるシットコムが隠された関係やらがどんどん笑いを連鎖させていくのと同じように、醜い隠したい関係を次々暴いていくような感じでスピード感もあって楽しめます。

ネタバレかも

中盤以降は前半に比べると、「頭のおかしい人の論理」の自己主張の激しいいやりとりという感じが濃厚で、確かにそれは見ている方は刺激的。しかし、全員がどっか無茶苦茶で、この家族と愛人の外の視点が芝居の中にないから観客視点はその「おかしい人」しかないので、慣れてしまって飽きが来るというか派手なやりとりのようでスピード感が失われたように感じてしまうのは不思議でもあり勿体ない感じも。

精神を病んでしまうのにトラウマだの悲惨な体験だのという確固とした理由があることを羨んでいる女は自らを「明るい人格障害」で「モンスター」と云いやむにやまれずに行動してしまうけどその理由がないことに深く悩んでいて。見た目の派手で明るい感じとは裏腹に、その悩みの底はどこまでも根深くて。作家自身がどこかのテレビ番組で喋っていた「普通の中流家庭で育って、この発想」のギャップに近い感じを受けます。

「リストカットがある種の流行で、今それをやるとダサい」なんて視点も「らしくて」共感できる感じでセリフの一つ一つを味わい尽くしたい感じはあって、本谷節に浸りきるぜいたくさ。

彼女のことを一瞬でも受け入れるようにみえるのは、たまたま家族にその余裕のある瞬間があったから。だから遅れた夕刊が店に届き、日常に戻ると彼女のことにはお構いなしに冒頭と同じ日常が優先されてしまう。それでも女はめげずに「自分を人格改造」しようと試みるけど、なんて終幕は鮮やか。

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