速報→「どんとゆけ」渡辺源四郎商店
2008.10.18 19:30
ナベゲンの新作。陪審員制度の先をいく死刑執行員制度の近未来、重い話ですが、笑いも多い90分。青森公演のあとの東京は19日までアゴラ劇場。
畳の部屋、チャイムが鳴る、出て行くエプロンの女。ひもでつながれた男二人。しばらくして男女。死刑判決を受けた男の執行をこの家で、被害者家族の手で行うという時代。
現実の裁判員制度というのが法的にどういう意味を持っているかはよく知りません。が、裁くということを一人で背負わず、多くの人の合議で薄めるという効果なのだと思っています。さらに進んだ本作の時代は死刑執行を関係ない他人にはできなくなった時代、ならば仇討ちの時代に戻るのだけれど法律も整備されていて。
被害者家族はまっすぐそこにヒールとして立ち続けなければいけないのだけれども一枚岩ではない、獄中結婚した女にも理由はあってと、ここにいるさまざまな人にちゃんと理由があるのは確かなホンのチカラ。
真ん中に居続ける保安課長は笑わせるパートも多く大黒柱。津軽ローカルらしいトランプ(コントラクトブリッジ的なゲーム)のシーンの父親の実況は巧くて当日パンフの解説を読み損なってもルールがわかる感じで楽しい。
近未来の今とは違うキマリの中で畑澤聖悟脚本はさすがに巧い。召命や「俺屍」といったその世界独自のルールというのを徹底している感じは、確かに見続けさせます。
獄中結婚をした女を演じた工藤由佳子の包み込む怖さ。何かのプレイかと思う出オチ的メイド服も楽しい。被害者の妻を演じた工藤静香はヒールとして重要だけどただ一人で立ち向かい続ける役の位置はちょっとたいへんな感じ。保安課長を演じたささきまことは困った顔が絶品。被害者の父親を演じた牧野慶一の存在感。
ネタバレかも
この家で執行をする、獄中結婚をする妻の居る理由はだいぶ後半になって明かされます。スリラー的な味わいもあるけれど、そこで終わらないのはさすがだと思うのです。人が生きて死んでいくことをまっすぐ描いている感じ。
壁に塗られた絵は、実は後半の種明かしのヒントらしいのですが、明かりに注意しつつ見るべし。
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コメント
2回目です。
前回は「眠れない夜なんてない」の時に伺ったかと。
近未来のある種ベタっぽい設定を、人物の存在のリアルさで説得力のある世界にしていたなという印象があります。
現代演劇のスタンダートと評される畑澤の巧みさが遺憾なく発揮されていましたよね。
照明がかなり親切なのと、加害者の妻のネタバラシの辺りがサービスし過ぎかなぁと言う気もしましたが、90分見終えて「見事」と思える出来だったなという感想です。
投稿: 誠 | 2008.10.19 17:21
kawahira様、先日の「どんとゆけ」終演後乾杯ではお世話になりました!なべげんの親切な照明担当です!
来年のGWにもお会いできそうな予感がしております!その時も宜しくお願いします!
誠様、照明のやりすぎ感をお感じになった様で・・・私の仕業です(>_<)申し訳ございません!
今後自分の色を出しつつ絶妙の加減を模索しながら、なべげんに相応しい照明を目指そうと精進したい所存にございます。
お二人とも、今後ともごひいきの程宜しくお願い申し上げます!
投稿: 明り屋ま~ちゃん | 2008.10.20 11:29