速報→「ネズミ狩り」チャリT企画
2008.9.15 14:00
逃げ場のないシリアス感なのに引き込まれ見ごたえ十分な110分。16日まで王子小劇場。
個人経営の蕎麦屋。事件があってから1年、従業員も育ってきてひと安心しようとしていたが、記者と名乗る男がやってきて嗅ぎまわる。店主が殺された事件の身内だけではなく、従業員たちにもその手は及んで。
「うわさ」という正体があるんだかないのだかわからない不気味さを、天井裏のネズミの足音になぞりそれを不気味に思う人々。凶悪事件の犯人たちが町の中、わたしたちのとなりで生活しているかもしれないという不気味さに重ねながら話を進めていきます。
凶悪事件や少年法、死刑反対論者や心の傷、更生やそれを社会が受け入れられるかという事件にまつわるさまざまな立場を丁寧に物語散りばめるのは一歩間違えば散漫になりますが、きちんとその場に説得力を見せてまとめていきます。
ネタバレかも
弁護側の論拠があるのかどうかわからないけれど、殺された少年もまた殺す側でもあるということや、あるいはその半年後の様子などのさまざまは、実は特定の「正義らしいひとつ」の視座から物語を見つめることを拒否してるようなところがあって、どの視点で見ていてもヒトゴトな安全地帯にはなりえないのです。刃をつきつけられているような感覚を観客に与えています。
噂話は当事者じゃない周縁の安全地帯だからこそ言えるのだと世の中の「ネズミ狩り」を切り取りながら、「だれでも加害者でも被害者にでもなりうる」のではないかと冷静に見つめ直して、国だのなんだのという権力よりもたちの悪い、世間とかマスコミといった類の噂話に向いている作家の目。表づらだけで見ていればハッピーな風景に見える終幕ですらも、観客をすっきりさせない仕上がりになっています。パート主婦の息子が学校で友人をけがさせた、なんていう身近な例を示すなど、あたしたちの気持ちにダイレクトに訴えかけるようなスパイスが随所に効いているのも見事。
法律という視点でみるならツッコミ不足なところもあるのかもしれませんが、起きていることに対する気持ちを揺り動かすのです。
それほど多くの笑いはないのに引き込まれるようにぐいぐいとみせつけながら走りきるしっかりとした物語は、わりと社会派に近い視点を持ちながらも、茶化すことなくまっすぐにとらえているという意味でチャリTが一歩進んだ感じがするのです。
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