速報→「STAR MAN」KAKUTA
2008.9.27 14:00
若い若いと思っていた作家、大人の寂しさに焦点が当たってきた最近、その流れと感じるKAKUTAの新作はアタシの気持ちに沁みいります。10月5日まで青山円形劇場。約120分(アナウンスは1時間52分。5分押しで始まり15:57分終演。をを。)
会社をサボってキャンプ場にやってきた男。一人の一見客を断ろうとする管理人の夫婦だが、毎年来るという女の一人客の機転で泊まれることになる。一人客を断るには理由があるのだという彼女の話によれば。
数年前やはり一人の生気を無くした男が訪れ自殺を企てようとした彼に、当時雇われていた近所の中年の女が声をかけ、それがきっかけで男はキャンプ場で働くことになる。が、その淡い恋心はうまくいかず。
かつては断っていなかった一人客を断るという一途な想いの暴走をかなり早い段階で予感させながら進む枠組み。どこか浮いていてどこか気持ち悪いという男が、冴えない未亡人に魅せられ彼女は自覚してなくて。 4年ほどの時間の流れを重ねていきながら、想いが堆積していく様子をしっかりと。同時に、戯画的に毎年やってくる4人組の若者の恋のさやあて友情物語を挟みながら、笑わせて登場人物にも観客にも落差を実感させていkます。
印象が薄くて引っ込み思案で、という冴えない男を演じた横山真二が好演。ある種の気持ち悪さをきっちりと。「南国プール」(1,2)で彼が演じた印象の薄い男に通じるところもちょっとあって。 彼にあこがれる未亡人を演じた原扶貴子、語り部視点としての女を演じた高山奈央子、観客の視点に居続ける若狭勝也など、KAKUTAの役者ばかりという座組は勿論しっかりとした安定。
自分が一人だな、浮いているなという感覚は年齢を重ねるほどに強く感じるようになるのはアタシだけでしょうか。会社をサボることも、何もかもから逃げ出して来てる男も一歩間違えばストーカーなのだけど、想い続けているだけで一歩を踏み出せない人、に対して作家の視線はとても優しく、絶妙のバランスを見せてアタシの気持ちにしみこみます。
ネタバレかも
陰惨だけで終わる物語を作家は選びませんでした。もうひと手間加えたことで、彼ららしい、優しい視線の物語になる瞬間は鮮やか。男視線で観れば彼が幸せになるようには見えないけれども、その殻の中に居る限りは彼は幸せなのです。と思えば、ここまで来てもハッピーエンドではない感じもします。
意識してみれば前半でその構造も見えるような気もするけれど、あたしは気づかず終幕近くの展開にびっくりな感じ。見た目のスマートさで違う結果になってるだけじゃ、という気がしないでもないのだけど、物語はきちんとその裏打ちもやっていて、役者もその設定にきちんと応えているのです。
円形劇場を1:2ぐらいな比率で区切ります。広い側(Hブロックまわり)の方が正面でしょう。 中央に小さな広場。一方に管理棟、一方にバンガローの一つを置き、ほぼ死角のない配慮はされています。管理棟を正面から見る側(=広い側)が正面なのでしょうが、大部分は問題なく見られる感じです。あたしの坐ったFブロックでは終幕近くの「馬」が見えないのはちょっと残念な感じもします。
不器用な人々に対する作家の優しい目線は、彼らほどの年齢じゃない、アタシのようなオヤジでも引っかかるアンカーがどこかにある、という意味で希有なのです。
| 固定リンク
「演劇・芝居」カテゴリの記事
- R/【ホギウタ】ブリキの自発団P(1999.10.15)
- R/【寿歌】プロジェクト・ナビ(1996.09.21)
- 【芝居】「ヨコハマ・マイス YOKOHAMA MICE」神奈川県演劇連盟(2025.04.15)
- 【芝居】「フルナルの森の船大工」タテヨコ企画(2025.04.08)
- 【芝居】「ここは住むとこではありません」TEAM FLY FLAT(2025.04.07)
コメント