速報→「八月のバス停の悪魔」ミナモザ
200808241400
瀬戸山美咲のminamozaの新作。100分。24日までサンモールスタジオ。
太平洋戦争の末期、日本のどこかの田舎。物資不足で今は通わなくなったバスのバス停で何かを待ち続ける女。東京の山の手から疎開してきたが、地域に馴染もうとする姉に反して、浮き気味で一人ふらふらとしている。崩落の危険から閉鎖されたトンネルの向う側には不時着した飛行機と混血の米兵を匿っていて。
大戦末期の日本といういわゆるモンペものがあんまり得意でないアタシです。和服と洋装とモンペが混在し、それがどういうバランスがいいのかよくわからない気持ち悪さのようなものがあって、それは彼らのせいではないわけですが。田舎の村でのカエル養殖とか、疎開とか時代らしいことは見せてはいるものの、描いていることの主軸はそこから浮いている一人の女ににあります。全体を見渡してみると、人数の多い前半部分はぬるい感じの大衆演劇っぽい感じになっていて、全体のタイトさにはマイナスに働きます。もっとも、浮いているその時代の「世間」を描こうとする意図は見えていますが。
天皇のラジオ放送、という一大イベントのあたりから、物語は大きくカーブを切って史実を離れて戦争は終わらず、見せる感じになっていきます。何にもなりたくないのではなくて、何にもなれない自分に気がついてしまい、自分の将来に絶望をしてしまう女。世間では悪いものとされている戦争を、「すべてをリセットするもの」として前向きにとらえるたった一人の女の視点が物語の主軸に見えてくる後半は見ごたえがあります。そこに至って、単なるその時代の芝居ではない、今に通じる感覚に繋がる感じがあります。終幕を夢落ち的に捕らえることもできましょうが、逞しい妄想と紙一重なダイナミックな自閉はおっと思わせます。
木村キリコという女優を観るためにここに通っている感のある昨今のアタシなのだけど、そういう意味では印象は変わりません。結構な数の、しかも初見ではない役者も結構出ているけれど、群を抜いている感じがして。
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