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2008.08.04

速報→「僕らの声の届かない場所」空想組曲

2008.8.3 19:00

空想組曲の新作は額縁をモチーフにした舞台美術が印象的な120分。4日まで王子小劇場。

若い画家の卵が集うアトリエ、どこかゆるい雰囲気の中、一人他人と交わることを嫌う男。抽象の手法で沢山の「物語」をキャンバスに焼き付けようとしながらも、一枚も「完成した」と思えるものが出来ないし、それを他人が理解出来ないのがもどかしい。ある日、アトリエにある日現れた少女は彼の絵を見て絵が未完であることを感じ取り、感性の暁にはすぐに見せて欲しいと懇願する。彼女は時間が無いのだといいアトリエに通うようになる。

若い画家、ある種の足の引っ張り合いもあったり、才能がどうにも無いのが混じってたり、という背景と云えば「コンフィダント・絆」(1, wikipedia)が思い浮かんだりしますが、友情を軸に描いたあれとは違い、理解されない溢れる才能と、それを理解できるベターハーフとの出会いを描くいう点で別物だという気がします。

たとえば美術館で絵を見ることがあまり得意ではないアタシです。たった一枚の絵に込められた「ものがたり」という時間軸の深みを読み取る技量はなかなか難しい。今作は画家がスケッチブックやキャンバスを抱えて描いている最中、そこに画家が思い描いた物語を見せる、という手法で「画家の頭の中」を可視化することに成功しています。このやりかたはアタシにはとても有効なのです。画家達の描く絵そのものはほとんど観客が目にすることはありませんが実にスマートなやりかたで見せていると思うのです。

前回の王子に続きいわゆる八百屋舞台の急傾斜(前回よりは浅いようです)。キャンバスを舞台にその額縁は更に傾いています。客席はL字状。出捌けの基本となる下手側奥は現実の世界の出入り、上手側奥はキャンバスを剥がすようにして、画家の描く世界の物語の人物たちが黒一色の衣装で出入り。人が混じっても二つの物語世界をしっかりと分離してみせることができていて、実に親切なつくりで観やすいのです。役者には負担がかかりそうな感じもしますが無事に楽日まで走れますように。

ネタバレかも

ピュアな純愛物語だと思っていると、唐突に現れる宇宙人なる人物。見かけのコミカルさとは裏腹に、我々より一つ上の普遍な視座を持つことで他の解釈のぶれを許さない感じ。中田顕士郎という役者は少々癖があるのだけど、そこを宇宙人と言いきってしまうのは結果的には成功。このシーンに限らず、物語とはまったく別に唐突にコミカルなシーンがあって、好みが別れるところかも。「きゅん」とするシーンに、アタシは「きゅん」となっちゃったりもするのですが。

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