速報→「流れる」野の道
2008.8.8 19:30
津島めぐみの演劇企画、野の道のほぼ二年に一回公演の三回目。今までとはがらりと雰囲気の異なるオムニバス三本構成。100分。10日まで下北沢・楽園。L字型の劇場で客席が2ブロックになっていますが、アタシがみた入って右側が見やすい感じがします。
引っ越してきたらしい夫婦の家にやってきた水道工事の男、洋服などの子供用品を見つけて世間話をしようとした男だが、妻の云うことと夫の云うことは微妙に違っていて「空室」。
周囲に交際を反対されて駆け落ち同然で荷物をまとめて出ていこうとする女と手伝う幼なじみの男。行き先で落ち合う筈だった相手の男が部屋を訪ねてきて「ムグンファ」。
金と引き替えに男を連れ込んでいる女の部屋。昔その部屋に居たという女が押しかけてきて、その部屋に通ってきた唯一の男が居たといい「流れる」
役者の台詞も舞台もすべて大阪の話。作家が生まれた土地なのだといいます。いままでの公演では劇場(アレイホール)の特性もあって、広くて綺麗なリビングを舞台にした家族の話だったのだけれど、一転、あまり幸福でない風の狭い一室で待っている風の女の話三本。作家に何があったんだ、と勝手に勘ぐってしまうほどの変化。いえ、もちろん何も知りませんが。
大阪に住んだことのないアタシには言葉の自然さや、それぞれの芝居が題材にしているある種のマイノリティがどれだけリアルを描写しているか、ということは正直わかりません。なのでネイティブにはまた違う感想、という気はしますが、関東の役者ばかりということを考えれば、ことさらに誇張するでもなく自然な会話だと感じられます。京都でも神戸でもなく大阪だということは掴めてもその街の中のどんな場所かがわかる観客にはもっとリアルに見えてくるのかもしれません。中心部ではなく周縁部、という雰囲気だとは思うのだけど。
「空室」は不条理すら感じさせるつかみどころの難しさ。妙なことを口走ったり行動したりする妻がヘンなのかと思うと工事夫も怖かったり、救いになるかとおもう夫も決して普通ではなくて。アタシの視座を何処におけばいいのか、どこに手足をかけて取っ組み合えばいいのかということを迷ったまま流れてしまう感じ。
「ムグンファ」はそういう意味では背景も物語も実にわかりやすくて、シンプルな話。見送る側の男の想いを、あからさまな台詞にはしないでどれだけ想いとして伝えられるかが、このシンプルな話に奥行きを持たせるポイント。
この三本の中では最も見応えがあった感じがする「流れる」は、時代背景の違う女二人の不思議な空間に頭をかき回される感じ。ひどい恋愛の話だと思っていると終盤で鮮やかにひっくり返すあたりは、背景にシチュエーションを借りたチカラワザではあるのだけど、そのテンポがよくて、あれよあれよという間に「背負い投げ」を決められた気分なアタシなのです(ほら、オリンピックだし)。
下西啓正のいでたちが他では見られない風で、ちょっとレアで楽しい、というのはまあ、この役者の様々な舞台を知ってるからですが。高野ユウジの真っ直ぐさは雰囲気によくあっています。雨森スウとの二人の身長差、叩くじゃれ合いも気持ちを温かくします。狭い舞台ゆえに大きな舞台も経験のある兵藤久美は突出していて、動きも台詞も美しい。いえ、もちろん三本目冒頭でドキドキもしてしまうのだけど。(←オヤジ)
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