【芝居】「動員挿話・顔」横濱リーディングコレクション#3 Aプロ
2007.8.11 14:00
横浜でのリーディングシリーズ、岸田國士を題材に得て。二本を一組にして。「動員挿話」と「顔」の二本。12日まで相鉄本多劇場。二本の間に10分の休憩を挟み、120分。
主人に仕える馬丁。主人が出征にあたり、連れて行きたいという。国を挙げて戦争に突き進むなか、その妻は頑固に「軍人でなく選べるなら行かないで欲しい」と主張する。結婚前に激情した過去もあり周りも少し気を使う女だが、男にも世間体があり「動員挿話」。 海の見えるホテル、夕刻。「太陽室」と呼ばれる見晴らしの場所。夫婦らしい男女や婦人、若い男が行き来する。ディナーの時間少し前、職員の老婆がレコードの番のために現れ、蓄音機の横に座る。婦人が話しかけると、老婆はかつて船に乗っていたころの昔話を始める。
リーディングとはいいながら、わりと演出をつけていて時には装置もあるような形態での公演シリーズ。チャリTの方は、「劇団がやるリーディング公演」という薄い皮をかぶせ、前幕・後幕の間とはじめにトークを挟む形にはしつつ、基本的には「読む」事に主眼。国のあり方とかを揶揄する彼ららしい題材なのだけど、テキスト自体が、おかしいな、と想う時代批判を持っていることの力。確かに演出していることの意味は薄まってるのかもしれないけれど、イデオロギー的に好きだという事もあって、あたしはこのテキストに出会えたことの幸福を感じます。
「国の利益」に向き合うのは「別れたくないという気持ち」。だからオンナの理屈はわからない、と云われがちな「大切だと思う軸の、埋めがたい違い」が主軸。物語の中で後者は決して勝つわけではないのだけど、時間を経た今、アタシはそちらを大切にしたいと思ってしまうのは、そうか、これがイデオロギーか。
一方のShelf組。こちらも女視点の物語。あからさまには何一つみせないのだけれど、男性の演出がこの二本を選んだというのはすこし面白いのです。ただ、こちらは演出が強すぎる印象。テキストと演出の間に乖離を感じがちなあたしです。激しく入れ替わる役や、テキストとは別に動きだけで役者がやっている何かの別の物語など、演出をしているということははっきりわかりますし、もちろんかっちり作り込まれていると思いますが、わざわざテキストから乖離させている動きに、アタシは有機的な相乗効果を感じ取ることができなかったのが残念な感じもします。
善し悪しではなくて、アタシにどちらがあっていたかという点ではチャリTに軍配を上げるあたしですが、こればかりは見比べるたのしさ。是非とも4本を。
横濱リーディングコレクション#4「岸田國士を読む」
2007.8.9 - 8.12 相鉄本多劇場
作 岸田國士
◆「動員挿話」
演出 楢原拓
出演 松本大卒 ザンヨウコ(危婦人) 内山奈々 楢原拓 竹内洋介 小杉美香 長岡初奈
◆「顔」
演出 矢野靖人
出演 川渕優子(shelf 甲斐博和(徒花*) 高田愛子(ユニークポイント) 円谷久美子 西山竜一(無機王) 百花亜希
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