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2008.08.31

速報→「真剣恋愛」競泳水着

2008.8.31 19:00

佐藤佐吉演劇祭のトリを飾り、劇団としても第二期トレンディードラマシリーズ三部作の二本目となる、こってりと濃密で静かで優しく、しかしまっすぐな舞台。3日まで王子小劇場、110分。

まだ売れない役者、ふとした偶然で女子アナとして活躍している元カノに再会するが、その僅かに話した時間を写真週刊誌にスクープされてしまう。
高校の男子生徒からも他でもモテる養護教諭に想いを寄せる男子生徒は、コンビニ店員の相談を後押しに告白してしまうが、幼なじみの女子生徒はそれを知って気持ちが揺れて。

大筋の物語、という感じでは、好きだとか嫌いだとか、言い出せないとか、言い出すとか、想いを伝えるとかなんて具合の恋愛至上主義な「トレンディードラマ」のような、薄っぺらさがあります。 あんまり言葉が良くないのだけど、アタシとしては好意的な言葉で、ほぼ全ての登場人物の行動原理が恋愛になっていて、仕事や勉強やセックスすらも、それのおまけ、としているような書き割りのような、記号のような扱いで、それは逆に、観客のもっている恋愛の過去にいろんな形ではまり込んでいくような面白さがあると思うのです。

会えない二人が電話で話すうち、冗談めかして好きだと言い合っているうちにふと訪れる短い言い淀みとか、保健室でじゃれ合ううちに距離が近づいたり、別の男に会いに行くことが気になってしかたがないとかと恋愛に纏わる想いの、ごく微少な瞬間の気持ちの動きのとらえ方が実に的確。テレビドラマ的、と云われがちだけどこういう細かな作業はやはりこの小さな空間での芝居でこそ、という気もします。

コンビニ店員という役がちょっと面白い。恋愛相談のアニキだったり、恋に悩む乙女の相談相手だったりと物語の後押し役をこの一点に集約しているのはもちろんご都合主義なのだけど、いたずらに人物を増やさないのは巧い感じ。

当日パンフで作家が語るとおり、作家の構想が先だとはいいますが、女子アナの写真週刊誌のスキャンダルのあの実際の事件が思い浮かびます。アタシはかのアナウンサーが好きというよりはその秀一レギュラーでのラジオ番組が好きで、彼女に親しみを持っていただけに、格別の思い入れはあるけれど(陰謀説まで飛び出すし)、そんなこととは関係なく、事件をパクったとはあんまり思わないのだけどどうだろう。

それにしてもこの恋愛至上主義。アタシの頭のなかもそういう話が大好きだとアドレナリンを分泌しますが、それはもう遠い日の花火どころか、そんな花火はあったのかなかったのか(泣)。

大きく二つの物語。舞台を大きく5ないし6のアクティングエリアに分け、保健室、役者の男の部屋、女子アナの自室、コンビニを固定し、残りの場所を街角や事務室、控え室などに使います。複数の場所を並行させたり、カット割りのように複数の場面をスムーズに繋いでいき、隙間なく物語をどんどんと詰め込んでいる感じで、美形揃いの役者とあいまって、飽きることがありません。

細野今日子、大川翔子はこのフォーマットの中での何の不安もない安心感。客演の清水那保は、こういう普通のオンナノコの役というのは珍しい気がして実によくあっています。和知龍範のすこし悪ぶった教師は終幕でその声で説得力。

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速報→「嵐になるまで待って」キャラメルボックス

2008.8.31 14:00

キャラメルのスタンダード4演め。東京公演は終了、そのあと福岡、大阪。120分

声優志望ではじめて合格した女がスタジオで出会った作曲家の男は耳の聞こえない姉をつれて、来日していた。彼につっかかってきた男は、作曲家の強い制止の一言でおとなしくなり、行方がわからなくなってしまう。

再演がそれなりに多いキャラメルでも四回も、というのはそれなりにスタンダード。ほぼ一新されたキャスト、客演を含め、少なくとも東京楽日時点では何の不安もない安定感。突出した何かもないし、楽日固有の遊びもそんなにないかわりに、タイトに過不足なく仕上げた感じがします。

客演の二人、久松信美や土屋裕一のような脇である種の余裕を見せるキャラクタが現在のキャラメルでは不足しがちで、ここを客演にしたのは、引き締まる感じ。

渡邊安理という役者は若手のなかでは好きな女優のひとりですが、ほぼ初主演を無事に。芝居とは別の泣きそうな表情をそれでも抑え込んだ、なんてあたりにこちらがうるっときてしまうのは、あたしがオヤジだからか、あるいは宝塚での役者の成長を見る観客の心境か。

西川浩幸は中心にどっしり、とはいいながらも軽やかに笑いを取りながら。温井摩耶は声が無いなりの迫力ってのがあって、伝わる感じ。

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速報→「要するにムラサキ」天然スパイラル

2008.8.30 19:00

ミュージカルが出自のグループ、過去2作品(未見)を無関係な二幕に構成。演出も今回は外部から。9月1日まで草月ホール。120分。

両親の死後暮らしてきた四人姉妹。広島に嫁いでしまうという長女、興信所で浮気調査ばかりしている次女、不倫している三女。中学生の末っ子は長女が広島に引っ越してしまうのだということを知って「赤と青のはざま」。
中目黒歌劇団のレビュー、あのアニメとかこのアニメとかの「ミディアムレビュー・中目黒歌劇団」

当日パンフによれば普段の作演は療養のための休業とかで、過去作品をリニューアル。本人たちが云ってるとおり、もともとはそれぞれに公演していたものを短縮してしまったかどうか、食い足り無さの残る感触。

「赤と青〜」は家族を中心に据えた話。四人姉妹といえばどこかの漫画の感じがしないでもありません。わりと普通の芝居なのは実は彼女たちには珍しいかもしれません。女性キャストだったらしい初演に男性キャストを加えています。

どこかおとなしめの仕上がりの一幕目に比べると、ミュージカルレビューの「中目黒歌劇団」は馬鹿馬鹿しい話を突っ走る感じが賑やかで楽しい。歌劇団とその裏側を描く感じなのだけど45分ほどの密度は高い。なんせもとは3時間あったらしい、のですが。日曜夜のあのアニメとか、この夏の席巻アニメとか、なんとかランドのプリンスなアニメのネタに宝塚パロディと盛りだくさん。無駄に豪華な感じで楽しいものの、この二本立てを選んだ理由も今ひとつわからなかったり。

それでも、普段とは違う体制でもちゃんと作ってしまうというチームのチカラ。草月ホールという規模の劇場の舞台セットは遠目にはナイロン100℃ほどの規模で、その空間を埋められるのはたいしたもの。しかし、正直に言えば舞台はちょうどよくても、やはりキャパは大きすぎる気がしたりもします。

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2008.08.30

速報→「バクダンジュース」シンクロ少女

2008.8.30 14:30

作家・名嘉友美の作演のユニット。本編70分、終演後に楓ありす(引退したらしい)のストリップショーを20分弱。31日までルデコ4。

男四人、食べ物と緑色の液体のボトルを囲んで、好きかという確認を繰り返す。同じ場所に居る女。急速に拡大する感染症の影響で末期に来た男たちだったが、女はまだ元気で。女も男たちが好きで、シたいとは思っても男たちは応じない。そんな時女も突然倒れて。

もうほんとにざっくり云ってしまうと、近作の東京デスロックの、大音響の中、踊り狂いばたばたと倒れる人々の繰り返し、というフォーマットが大部分を占めています。彼女たちがそれを知ってやってるかどうかは知りませんが。

デスロックに比べると、人物の置かれた状況はかなりはっきりと語られていて、何かの末期でそこには未来がないことが明確に語られます。その枠組ゆえに女を気遣う男たちの思いは明確で、しかしその希望さえもなくなってしまった後半は、すべてをなげうって踊り狂うしかない、ということははっきりしています。が、アタシはシンクロ少女にもっと物語、もっと云うなら想いから発露する言葉を一方的に期待してしまうのです。その意味で、ちょっと肩すかしな感覚があるのです。

終演後のショーは、一般の場所だし外光がはっきり差し込んでしまう場所ではショーアップが厳しい悪い条件の中であっても、さすがに本職、あたしがオヤジで女性のハダカに喜んでるということを差し引いても、いわゆるダンスとは違う種類の、少々の大げさな振りも含めて、ちゃんと見せるものになってると思うのです。

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2008.08.29

速報→「国道五十八号戦線異状ナシ」国道五十八号戦線

2008.8.28 19:30

明治大学の劇団、鹿児島から那覇を貫く国道の劇団名を冠した学外初公演は勝負ということでしょうか。9月1日までシアターグリーン小。75分。

沖縄の民家に集う若者たち。ほとんど勢いで発表してしまった「沖縄独立宣言」に世間は半笑いの反応で。が、彼らにはその自信を裏打ちする力を隠し持っていて。そこに訪れる一人の男は、外務省を名乗り話を聞きたいのだという。

実際のところ、物語の背景となる道具建ては当日パンフどころかCoRichあたりの中にかっちりと書かれていますが、それがなくてもちゃんとわかる感じ。

沖縄、米軍基地、地域間格差というあたりから端を発し、でも荒唐無稽な独立を夢見る男と、半分は信じられないままに共感する男たちと、それを馬鹿馬鹿しく思いながら見守る女と、煽動する年かさの女と。酒をあおりながらのゆるい空間。

物語は荒唐無稽なSFと本人たちが云うとおり。これが彼の地の人々の気持ちの上でのリアルかどうかアタシにはわかりませんが、若い作家にとって沖縄という場所をこうとらえてる、という感じもします。格差も基地もそこには現実としてあって、そんな中だからこそ非核三原則という今ではだれも信じていない言葉も現実のものとしての重さがあって、なのかもしれません。

ネタバレかも

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速報→「15 minutes made」Mrs.fictions

2008.8.28 14:00

15分の短編をショーケースに並べるシリーズの四回目。場所をシアターグリーンに移し、6団体。10分の休憩を挟み、130分ほど。面会のあとトークショーは16:30終了。31日まで。

ハマのメリーの走馬灯「市電うどん」(横浜未来演劇人シアター)。縛られた男たち、15分の制限時間の中で「クロヒゲ」(青春事情)。作家を尋ねてきた女、二人で向かい合って坐るテーブルの間の謎「小説の形」(elePHANTMoon。
休憩をはさみ、
女三人、カフェに集い「ゴーテンノーベ」(あひるなんちゃら)。稽古場、云えない主宰と役者・スタッフたち「クレイジー」(アイサツ)。町工場、すこし壊れてしまったヒトと、まわりの人と「ねじ式(未来篇)」(Mrs.fictions)。

未来〜、もとになった野外劇は残念ながら未見。横浜住まいならば断片を知ってるハマのメリーについて、池袋という場所はあまりに遠い。時間が他より長いのは規定違反だから確信犯だとしたらほんとはダメだと思う。カーテンコールも売り込みすぎなのも、いろんな意味で前のめりにすぎる気がします。次の「市電うどん」をみなきゃ、とは思います。

青春〜、昔ならばこれはお笑いとかコントの領域。テレビでもなんでも5分や3分の勝負になってる昨今のお笑いではこういうドリフ的なものは成立しずらい、となれば演劇なのかもしれないけれど、ちょっと薄い。15分を全面に押し出したのはショーケースという場には似合います。

エレファント〜、上手に机、下手にテーブル。二人芝居15分でこんなにちゃんと展開させるのも、岡田あがさ演ずる尋ねてきた女の気持ち悪さが巧い。彼女はほぼ下手側ですから彼女を見るならやや上手へ。

あひる〜、女三人の会話。あたしが好きな領域です。同じような発音のテレビ番組みたいに昼下がりレストランでの会話。最近のあの番組は広告臭が強すぎてあんまり面白くないけど、初動のぎこちなさが楽しい。どこまでいってもあひるはあひるという演出なのだけど、女性ばかりという組み合わせは珍しく、その先にあひるの役者が見えないのは進歩だといえます。取っ組み合いがちょっと面白い。

アイサツ〜、確かに芝居をやっている彼らにはリアルな会話なのかもしれませんが、観る専門のあたしにはそれはわかりません。若い役者の対比は面白い。何回かある立ち稽古のシーンで上手側に役者がまっすぐ並んでしまうのはストレス。巧く説明できないことをどう発露したらいいか、というのは若者の特権で、それを自覚して書いてる感じはよくわかります。

Mrs〜、こわれたヒトとの会話と情。毎回最後に出てくる主宰団体は客席はあったまってるし、毎回やり口を知ってますから巧いもの。安心して見られるのは悪いことではありません。

おわりの会、と称しての終演後の面会時間は以前よりはちゃんとコントロールされています。そのあとにトークショーを持ってくることをはっきり云うのも進歩。トークショーは、マキタカズオミ×関村俊介×司会。盛り上がらない会話をぼそぼそ喋る感じは気楽。筆が止まった時、という何気ない司会の無茶ぶりから彼を守ったもう一人はオトコだ、さすが。

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2008.08.28

怒られるのは嫌いです。

乙女座A型と関係あるのかどうか、年齢が進んで多少のことには動じなくなりましたが、怒られるとか、あるいは何かの決定を詰め寄られるってことにはどうにも苦手感が抜けません。そんなこと云って許される年齢でも立場でもないのは、頭ではわかっていても、こういう性格ってやつはどうしたらいいのだろう、なんてことを悩みつつの昨今。

ここで指摘されている「表現がやさしすぎる」というのはアタシにも思い当たります。たしかに情報を読む側の視点はそうでしょう。極端な話マルバツの二択になってれば読む側は選びやすい。そういうすぱっとした視点の感想というのは明確な指針になると思いますし、アタシも読みたい。

でも、アタシは今のスタイルを変えたくないのです。人の作ったモノを切り捨てる言葉を、呑み会の内輪ではなく誰もが後からでも読める形式(blogです)で残すには、もうタダならない努力をしないととても書けないと思うのです。人見知りのアタシですが長く芝居を観ていればそれなりには知り合いも居たりします。知り合いならば多少は甘くなりがちです。それは、顔が浮かぶあの人に浴びせる厳しい言葉を選び取れない。子供を叱る、なんて経験があればまた違うのでしょうがそれはまた遠い話で(泣)。

仕事と酒の片手間でやるには、アタシのチカラはあまりに及ばない。自分の視点に自信がないというのももちろんあります。だから、誰もに同意されやすい制作面は書きやすいのです。

もっとも、読んで下さる方は、アタシのは好き嫌いがはっきり判ると仰るので、まあいいかと思ったり思わなかったり。

さて。コマがどうにも足りない。まわりにゴメンナサイして一日だけ、何とか休んで芝居を←ダメ人間

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2008.08.25

速報→「真説・多い日も安心」柿喰う客

2008.8.24 19:00

王子小劇場の公演からわずか2ヶ月。再演とはいえ40名近くの役者による疾走感と迫力。110分。31日まで吉祥寺シアター。

一人のAV女優が国の頂点に立ち、監督・男優たちがそれにかしずく国「ソフト・秦・デマンド」。それ以外の女優の存在を許さず、国民はそのAVに熱狂し、その熱狂を継続するために主演AVを次々とリリースしていく。国を守るために北方には城壁を築き、リリースの本数を増やすために生理を止めることすら厭わない。さらなる権力の増大と保持を狙って西洋のあの祭典を、この地で開催することにする。

あらすじを書いていて、トラックバックスパムが大量に来ると確信できるぐらい、下世話というかAV業界を外枠に。中枠に始皇帝とかの史実の枠組みだけを、核に女性の、という感じの構造に見せています。女性であり続けることとかの深い物語かと一見見えますが、妄想エンターテインメントの看板通り、物語の深みというところに作家の興味がない気がするのは相変わらず。それよりは沢山の役者、多くの関係、構造、見せ方のかっこよさという様々な要素をきっちり作り出し、劇場の空間を埋め、観客の脳の中を芝居の間だけでも埋め尽くしてしまうということこそが、作演の一番の快感なのではないか、と思い至るのです。

吉祥寺シアターはいい劇場ですが、この空間を埋めるのは生半可では無理です。これまで使ってきた王子小劇場やシアタートラム、モリエール、フジテレビのホールなどの劇場もそれぞれに難しさがありますが、彼らはきっちりと結果を出し続けているのです。あるいは終演後にほぼ全ステージに設定されているトークショーもそうかもしれません。ともかくその時間の間きっちりと観客の気持ちをつかみ取るのです。

24日夜のトークショーでの一つの話題が終盤での歌のシーン。アタシは10年からこっちのあの番組のフォーマットがどうなっているかということを知りませんが、ああいう大勢で歌う場面を見せることの胡散臭さのようなものはまったくの共感なのです。あるいは祭典が発揚の場とか、北方の兵士たちとか、細かいところでのシニカルな見方には気持ちが寄り添います。オンナたちのあれこれ、は判る気もするけど、アタシはホントはわからない。作家は興味ないだろうな、ということは薄々判る気がします。

トークショーで作家が喋っていたのは、歴史は好きで網羅しているのだといいます。その語り口の自信の強さには少々当てられる感はありますが、大局の史実には大して興味がないアタシでもそういう話なのだと思わせる構造は強固です。

が、作家が語りたい本当の「ものがたり」がそこにあるか、というと、アタシにはそれが見つけられないのです。万が一トップの一人以外はすべてフラットになっていろ、という心意気だとするとそれはちょっと怖いのですが。劇団客演問わず役者たちも、この芝居もほんとうに愛おしいのだけれど、作家のコアとなる本当の物語が一回ぐらいは観たいなぁと思ったり思わなかったり、というのは気楽な観客の戯れ言だったりするわけですが。

たとえば「ソフト・オン・デマンド」というAVメーカーがあるかとか、役名の監督や男優たちが実在しているもののもじりだとかなんてことに笑ってしまって周囲に女性の観客が沢山いることに気づいてばつが悪いなんてのも楽しみ。佐藤みゆき演ずるNo.2女優のパワフルが楽しい。中林舞演ずる先輩女優の落ち着き、くるくると廻るある種の才能の無駄遣いにも凄み。須貝英演ずる男優の北方守備のコミカルな哀しさ。七味まゆみ演ずる侍従長の冷徹に痺れ、終幕のあれにひっくり返り。深谷由梨香演ずる女帝のテンションの強烈さはこの広い舞台で真っ直ぐ真ん中に居続けるということの強さで、絶頂期の中森明菜のような(古いねしかし)、どうかなってしまうのでないかという凄みのようなものを感じさせるのです。

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2008.08.24

速報→「八月のバス停の悪魔」ミナモザ

200808241400

瀬戸山美咲のminamozaの新作。100分。24日までサンモールスタジオ。

太平洋戦争の末期、日本のどこかの田舎。物資不足で今は通わなくなったバスのバス停で何かを待ち続ける女。東京の山の手から疎開してきたが、地域に馴染もうとする姉に反して、浮き気味で一人ふらふらとしている。崩落の危険から閉鎖されたトンネルの向う側には不時着した飛行機と混血の米兵を匿っていて。

大戦末期の日本といういわゆるモンペものがあんまり得意でないアタシです。和服と洋装とモンペが混在し、それがどういうバランスがいいのかよくわからない気持ち悪さのようなものがあって、それは彼らのせいではないわけですが。田舎の村でのカエル養殖とか、疎開とか時代らしいことは見せてはいるものの、描いていることの主軸はそこから浮いている一人の女ににあります。全体を見渡してみると、人数の多い前半部分はぬるい感じの大衆演劇っぽい感じになっていて、全体のタイトさにはマイナスに働きます。もっとも、浮いているその時代の「世間」を描こうとする意図は見えていますが。

天皇のラジオ放送、という一大イベントのあたりから、物語は大きくカーブを切って史実を離れて戦争は終わらず、見せる感じになっていきます。何にもなりたくないのではなくて、何にもなれない自分に気がついてしまい、自分の将来に絶望をしてしまう女。世間では悪いものとされている戦争を、「すべてをリセットするもの」として前向きにとらえるたった一人の女の視点が物語の主軸に見えてくる後半は見ごたえがあります。そこに至って、単なるその時代の芝居ではない、今に通じる感覚に繋がる感じがあります。終幕を夢落ち的に捕らえることもできましょうが、逞しい妄想と紙一重なダイナミックな自閉はおっと思わせます。

木村キリコという女優を観るためにここに通っている感のある昨今のアタシなのだけど、そういう意味では印象は変わりません。結構な数の、しかも初見ではない役者も結構出ているけれど、群を抜いている感じがして。

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速報→「ペガモ星人の襲来」G-up presents

2008.8.23 19:00

13年前に後藤ひろひとが立身出世劇場に書き下ろし、演出した作品(えんぺ)の再演をその立身出世劇場の主宰だった関秀人が演出でキャストを一新して再々演(らしい)。懐かしい気すらする大王節満載で満腹な120分。大阪のあと、31日まで駅前劇場。

ラジオ局。音効の重鎮の男がかつて関わった伝説のドラマに興味を持つディレクター。それはアメリカでラジオドラマ・火星人襲来の噂を聞いて日本でも、と作ったSFドラマで、たった一回で打ちきり、しかもその最後のUFOの飛来音をどうやって出したのか、未だに判明して折らず。

老人と若者の二人の静かな会話から始まる物語は50年前と現代をないまぜにして、時に境目がなくなるような不思議な感覚で進みます。「世界で一番速い女」(2000年)に至るような、切なさと笑いを併せ持つ、後藤ひろひと大王節。G2やパルコで大王作品は数あれど、駅前劇場の規模で小劇場の達者な役者たちで見られるのは格別なのです。その感覚は懐かしさすらあって、そういう意味ではたかだか10年少し前とはいえ、古いスタイルなのだとも云えますが、あたしはそれに浸りたいのです。リピーターが居ると言う噂もむべなるかな。

音効が何をしたのか、という謎は実は早々に見えてしまったのですがこれも大王らしい感じ。恋物語をいくつか織り込んでいるのだけど、それがほどよく本筋を邪魔しない感じで、見やすいのです。テレビ局の妙な番組の風景も、本筋にはまったく関係ないけど楽しい。

そう、この時代の後藤ひろひと作品には、本筋となる物語とは全く別に、いわば「にぎやかし」の役が結構あります。テレビ局ラジオ局の猥雑な感じを出していて効果的。もっとも、遊気舎での未熟なしかし大量の役者を舞台に上げるための手法だった気がするんですが、そこにすらこれだけの芸達者を当ててしまう贅沢、というよりいいキャストをいわば無駄遣いしているような感じすらあって、キャスト勝負のG-upの行き過ぎ感もあります。とはいえ、物語は濃密であっという間の時間。実に楽しい。

有料のパンフレットを1000円で売っています。中身を見ないで買ったアタシも悪いのですが、キャストや稽古場の写真を載せただけで上演記録すら載ってないという代物。上演記録は無償の当パンにはちゃんと書いてはあるのだけど、それはどうなのだ。G-upはパンフの意味がわかってないのでは、という気すらします。芝居がものすごくいいだけに勿体ない。

瀧川英次の老人の音効が実にいい味でほぼ主役。小椋あずきと岩井秀人のぶつかり合いが凄くて、明らかに変な人度合いは少なくてもがっつり組み合っている感じが実にいいのです。大内厚雄と町田カナのニュートラルが首尾一貫しているのは物語を見やすくします。それにしても関秀人のかなり卑怯な登場は、ええ、もちろん好きですが。

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2008.08.23

速報→「地獄のKiosk」スパンドレル/レンジ

2008.8.23 15:00

王子の演劇祭も盆休みの落語会を挟んで終盤。スパンドレルレンジの新作。100分。25日まで王子小劇場。

地中で暮らす人々。地上に出たことがなく、しかしここではない何処かに逃れたい気持ちもある。水場の前ににKioskと名付けた店を持って、地中から掘り出した缶詰を物々交換したりしている店主と妻と娘が居る、娘は明日実力者の嫁に選ばれてここから出ていくのだと夢見ていて。

生演奏のピットが上手奥、地表を摸した八百屋舞台。水場が下手手前。 全体の薄い照明以外は下側から照らす照明のみ、というわりと薄暗い中で進む芝居。 ランプや蝋燭を多用し、モグラの話を最初に入れて地中の話だと印象づけようとしているのですが、王子小劇場のタッパの高さが災いして、しかも奥の壁を隠したりしないものだから、広大な空間になってしまっているために地中に見えずにしばらく物語の場所を掴むために苦労します。

妻や娘は王の嫁になることでここから出ていきたいと願い、店主はまた別の方法でここから出ていくためのキッカケを持っていて、しかも機会を狙っている。空も海も見たことがない店主が手に触れることのできない「お宝」を知っていて、それを自らの希望にしていて。そこに集う人々もここから逃げ出したいという気持ちにあふれた人々。それでも逃げ出すきっかけを見つけづらいままの閉塞感の毎日。

地上に出る夢を見ている店主の言葉はさまざまな夢を語りはするものの、舞台のうえではそれが具体的な形になることはありません。店主が代変わりして何かは発見されたようでずいぶんとあか抜けたように見える終盤。妻や娘の態度や、あるいは戻ってきてしまった男など、何かが大きく変わったということはわかるのだけど、それがあたしの気持ちを揺らすまでには残念ながら至りません。男が戻ってくるきっかけとなったお宝、もあれほど引っ張ったわりにはわりとあっさりとしているのも伏線張りっぱなしな感じで勿体ない。

全体に薄暗く荒廃した感じの見た目で進む舞台の中では、娘と妻の変化が見た目にあたしの気持ちを鼓舞して楽しく、役者の中では健闘しています。それにしてもスクミ、という名前であの衣装というのはシチュエーションにはあっていますが、それはそれでどうなのだと思ったり思わなかったりします。何て云うんだろう、そういう「雑」な感じに見えてしまうのが、勿体ないのです。

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夏休み後。

演劇好きとしては、音を聞くと「ナツヤスミ語(辞典)」、なんですが。

先週の夏休みは歌舞伎を観て、初めて青森の街を歩き、乗れなかった青函連絡船を見て、芝居も観て、なんて一泊を堪能して王子で落語。

休み明けの一週間は隙あらば芝居を観ようかと企んでいたけれど、無理でした。大忙し、というわけではないのだけど、作業が残ってしまったりして。

来週は一日ぐらい、なんとか。

今週末、コマ不足が鮮明。

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2008.08.21

【落語】「王子落語会〜納涼寄席〜」(3日目)

2008.8.17 18:30

王子小劇場の演劇祭の狭間になぜか落語会。アタシは初めて拝見する方ばかりです。

演目、友人が書いていた日記から拝借。
講談とはなんて話から始まり、3分で忠臣蔵(未完:-)とか英語で講談とかをマクラにしつつ、「源平盛衰記より扇の的」神田京子。
怪しげな町中で怪しげな本を売る男。それだけあれば一生遊んで暮らせるような「秘伝書」桂都んぼ。
道具屋を贔屓にする旦那が幽霊絵の掛け軸を買うが取りに来るのは明日。いい儲け話にその掛け軸を前に晩酌を始めて「応挙の幽霊」桂笑生。
     仲入りを挟み、
出来のいい子供が父親の留守の間の母親への来客をネタに小遣いをせびる「真田小僧」笑生。
茶屋でみかけ一目惚れした若旦那は恋煩いで。親からの破格の礼金の依頼で相手を大阪中捜し回った男、もう見付からないかと観念した瞬間「崇徳院」都んぼ。

普段はほぼ一人の噺家の会にしか行ってないアタシです。王子がかけるというなら行かねばなりません。3日間の高座すべてに上がり、ほぼメインの都んぼの破壊力が際だちます。上方というと二代目の枝雀が印象的で、それに匹敵とはいいませんが、爆笑の渦に巻き込むパワフル。

講談は多分初めて、眠たくなるのも芸って感じの講談だけど、アキさせない。英語も日本語的な発音で気楽に楽しい。「秘伝書」は新作かと思うとさにあらず、ググってみれば出てくる噺。小咄的なさまざまな仕掛けが楽しいし、ネットのいわゆる「情報商材」ってものの怪しさは大昔からあるんだよなぁという感じ。「応挙の〜」はたぶん艶のある話なのだと思うのだけどそこまでは行っていない感じ。「真田〜」は途中のまでしか聞いたことがなくて、父親が好きな講釈をそっくり口まねしてアリバイを作り六連銭をネタにもう一歩せしめるっていう後半は初めて。だから真田なのね。「崇徳院」は似た話をどこかで聞いた気もするけど多分初めて。欲の皮からくたくたになり、走り回りなんてあたりが楽しくて。

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2008.08.17

速報→「修学旅行」渡辺源四郎商店

2008.8.16 19:30

もともと高校演劇用として書き下ろされた「修学旅行」を渡辺源四郎商店の公演としては初めて。70分。24日 までアトリエグリーンパーク。

物語はほとんど中学生版と同じ。高校生の設定にしてあるとはいえ、役者はそれより遥かに超えた年 齢ですから、正直、見た目にはそこかしこに無理があります。が、パワフルにコミカルに突き詰めた結果、 物語の意図は笑いとは別のところにあるとはいえ、きっちり爆笑編に仕上がっているのです。役の男女が正し く振り分けてられているのも、よりわかりやすい感じ。

あきらかに特定の国が透け見えるように見せるキャラクタの設定。それはマイノリティだったり、ワ ガママな大国だったり。そこかしこにわかりやすくちりばめられたキーワードが、世界の箱庭な感じ を明確に見せていて、学校の先生は好きだろうなぁというところや比較的短い上演時間も含めて、多 くの学校や青年劇場で上演されているスタンダードなのだ、という売り文句はよくわかる感じがします。

工藤由佳子演じる生徒会長は明らかに大人の妖艶でその行き過ぎ感も我がままっぷりも楽しい。山上 由美子演じる班長のあたふたっぷりはこの芝居の要で巧い感じ。報われない男の子・クスミを演じる 工藤良平の胸焼けするような濃さは好みが分かれるところでしょうが、全体の方向がこの爆笑編なら ばバランスはいい感じ。もっとも一番最初のシーンで突っ走らなければならないのは大変なところで すが。

JR青森駅からは歩くと30分ほど。港の倉庫のすぐ近くで、昼間はそこでのんびりするもよし。夜は確かに真っ暗になりますから、対策が必要かもしれません。ほろ酔い気分で歩いたあたしは苦もなくホテルにたどりつけましたが。チラシやwebに記載された地図には駅やスポンサードしてるホテルの位置の記載がないのはもったいない感じですが、まだオープンしたばかりのアトリエですから、これからこれから。こういう拠点を持ち続けるということがしっかりと芝居を生み出す土壌になれば、と思うのです。

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速報→「修学旅行」渡辺源四郎商店・中学生ワークショップ発表会

2008.8.16 15:00

畑澤聖悟の学生向けにいくつも上演されているスタンダード、「修学旅行」を青森県の中学生に7日 間のワークショップの発表会公演。65分。18日までアトリエグリーンパーク(青森)。アタシは演目 初見です。予定通りに冷房設備を据えつけられなかったとのことで、これからご覧になるなら対応を 。もちろん東京ん比べれば数段涼しいのですが。

修学旅行で平和学習を兼ねて沖縄にやってきた青森の女子学生たち。班長はグループの盛り上がりが 今一つなことを気にしている。学級委員長や試合が間近なソフトボール部員や漫画研究会などの見事 にばらばらな班で。盛り上げようと班長が考えたのは、オトコノコの噂話だったが、それは火種とな り。

修学旅行の一夜のわずかな時間、些細なことがわだかまりやすれ違いや争いを生むという、ごくあり ふれた風景を描くうち、戦争ってものの本質的なところを箱庭のように描くのです。

正直にいえば、短期間でしかも半分以上が演劇未経験という役者たちですから芝居として安定してい る感じはしないし、セリフ一つとっても発表会という粋を出ません。が、後半、枕投げのあたりから会話が熱を持ちテンポが格段によくなり、どんどん面白くなっていきます。もともと高校生用に書かれた話なので、中学生には少し背伸び感もありますが、ナベゲン版もあわせてみることでその対比の妙も楽しく。 す。

男性はたったひとり。おそらくは応募自体が女性に偏っていたのでしょう。結果、男子生徒を・演じ るのが女優という役がいくつかあって、もちろん彼女たちは頑張っているのだけどちょっと無理があ る感も。

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2008.08.16

速報→「八月納涼大歌舞伎」松竹

2008.8.15 18:15

月替わりの演目の歌舞伎座。夏はかつて歌舞伎が売れない(二八ですな)月で歌舞伎以外の演目をこの劇場でやっていたようですが、歌舞伎のフォーマットの中で、三部制にするなどして19年目の夏歌舞伎。歌舞伎座も120周年、なんだそうです。第三部は65分+休憩30分+85分。27日まで。幕見もあります。

紅葉の季節に通りかかった従者と将軍。幕の向こうで宴の最中の女性たち。宴席に誘われても女性ばかりだと断っても結局は呑むことに。踊りを見て、こちらも返礼しつつ、やがて夢見心地。が、姫は「新歌舞伎十八番の内・紅葉狩」。
美濃と尾張の争い。城下町で評判の祈祷師(実はインチキ)を城に呼び寄せた美濃の城主の息女。意中の男の箔を付けようとして大将として選ばせるための策略。しかしその男は敵国の捕虜として使われる端女(はしため)の愛陀(あいだ)姫に恋していて「野田版・愛陀姫」。

誰かのチケットとか、野田版というモチベーションがなければ歌舞伎にはなかなか足を運ぶことはありません。パソコン通信の時代のオフでは小劇場もミュージカルも歌舞伎も落語も宝塚も同じ会議室の中でオフが開催されていましたから、アタシは今よりもいろんな種類のモノを観ていた気がします。その流れで取って頂いたチケットの観劇は正面、いい席。まさか、あのときの人々がそのまま持ち上がって再会、とは想像していませんでしたが。

「紅葉狩」は歌舞伎らしいフォーマットを堪能。酒を勧め、舞う女のシーンでつられて眠気がきてしまっても、足を踏みならし見せ場ではちゃんと見せます。もちろん所作のひとつひとつが美しく、何一つ不安がないというのは伝統芸能の強さ。アタシが好きなのは左右の従者。どこかコミカルで凛々しさもちゃんとあって。

「愛陀姫」は音の通り「アイーダ」の翻案。アタシはオリジナルを観てませんし、11場からなると聞いて身構えますが、そう難しい話ではありません。台詞はちゃんと現代の言葉だし、笑わせどころも散りばめられていて。というか、役者以外のほとんどの部分はNODA MAPそのもの、という気がします。音楽もそうだし、台詞回しも多い。NODA MAPでの野田秀樹自身に代わるのは扇雀でそのコミカルさと確かさを観ると筋書きで野田秀樹が話す「訓練された役者たち」ということをはっきりと感じることができるのです。

思えば新感線も野田もキャラメルボックス(サンシャインとアプルだ)も松竹のラインナップ。そうかぁ、そういうことか、なんて感じたりしつつ。それは悪いことではなくて、ちゃんと育てたりあるいは投資するということだと思うのです。

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速報→「星影のJr.」庭劇団ペニノ

2008.8.15 14:00

アタシは結構久し振りに拝見しましました。ペニノの新作。105分。20日までスズナリ。

親子三人の家。夫の会社の同僚が時折家を訪れる。子供は庭でばかり遊んでいて引っ込み思案な感じ。夫が妻を抱かず妻は少し不満。子供には小さなヒーローが見えていて。

当日パンフとは別紙に、「来日二年目の子役のために」ということを当日のパンフで謳い、開演前のアナウンスでも読むように促します。

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2008.08.15

速報→「ボクコネ」タカハ劇団

2008.8.14 19:00

早稲田を出自、王子、駅前と駆け上るタカハ。旗揚げ公演(未見)の改訂再演。17日まで。105分。

アパートの部屋、ベルマーク集めると家賃が割り引き。ある朝、テレビが映らないと、みんなが集まってくる。そこにやってくるスーツ姿の男女が告知したのは。

大家という役は前半から「お婆ちゃん」と呼ばれますが、役者は若くて可愛らしい女優。ならばそこに何か仕掛けがあるんじゃないかと訝りながらみてしまったために、ものがたりの流れに序盤乗り損なった感じがしばらく。

ずっと明かされない謎、ボタンを押すことについての相談。それをピュアに遂行出来る人、させてしまう人々の物語。

正直に言うと、その謎が謎のまま進んでいく時間が長く、落としどころが見えないと思っていたのです。スーツ姿の二人の女性の想いは報われない感じなのだけど、こういう役をやらせると鈴木麻美は巧い。あるいは二階に住んでいて家電がぜんぶ無くなった役を演じた異儀田夏葉もどういうわけかこういう役が多いのです。前半を支えるのは川島潤哉でキチガイっぽいテンションの高さは凄い。

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速報→「Hula-Hooperの、部活動『鱈。』」Hula-Hooper

2008.8.14 16:00

フラフーパーの団長、菊川朝子の部活動、「悪友(あくゆう)ナイト」と題して音楽を交えて。公演は14日まで。7th floor、140分。

夏、妖怪が闊歩する場所。ヒバリと狼、サーナとレア、ニャンと昔の、パリンと透明人間。さまざまな恋。

バンドを入れられて舞台があって、食べ物もちゃんとおいしくてという場所で続ける公演。さすがに夕方ですからアルコールも食べ物もそう頼まれてませんが、あたしは勝手にメートルをあげつつ。

詩の凄さはまちがいなくあるのだけど、口ずさんだりできるメロディー(白河夜船なんかまさにそうだ)が多用されてて、しかも女優が舞い踊りなんてことでも喜ぶアタシなのです。

最初6人の筈だった 役者が5人の布陣。初日はそのまま公演したようですが、2日目は昼公演を中止して立て直し、あたしが観た回は、その女優の役を主宰がちゃんと。ちゃんと笑いどころも多く作られています。

好きなのに踏み込めない踏み込んではいけない男女。そこを超えて踏み込んで長く続くベターハーフ。あるいは昔の男を断ち切れないまま、それは妬みになったりしつつ。女ってものは、という男からは見えない気持ちの動きは必ずしも明るくないのだけど、それをこんなにポップに描くのです。

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2008.08.13

夏休み。

世間はお盆週間。アタシの会社、いままでは夏の一斉休業ってのがなくて夏はほとんど休まなかったのですが、エコを理由に(そうなら休日出勤一つも許すなよな、みてるからなー。)一斉休日2日間。

すぐ近くの実家に帰らなきゃとは思いつつ、遊びほうけてしまう。

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2008.08.11

【芝居】「動員挿話・顔」横濱リーディングコレクション#3 Aプロ

2007.8.11 14:00

横浜でのリーディングシリーズ、岸田國士を題材に得て。二本を一組にして。「動員挿話」と「顔」の二本。12日まで相鉄本多劇場。二本の間に10分の休憩を挟み、120分。

主人に仕える馬丁。主人が出征にあたり、連れて行きたいという。国を挙げて戦争に突き進むなか、その妻は頑固に「軍人でなく選べるなら行かないで欲しい」と主張する。結婚前に激情した過去もあり周りも少し気を使う女だが、男にも世間体があり「動員挿話」。
海の見えるホテル、夕刻。「太陽室」と呼ばれる見晴らしの場所。夫婦らしい男女や婦人、若い男が行き来する。ディナーの時間少し前、職員の老婆がレコードの番のために現れ、蓄音機の横に座る。婦人が話しかけると、老婆はかつて船に乗っていたころの昔話を始める。

リーディングとはいいながら、わりと演出をつけていて時には装置もあるような形態での公演シリーズ。チャリTの方は、「劇団がやるリーディング公演」という薄い皮をかぶせ、前幕・後幕の間とはじめにトークを挟む形にはしつつ、基本的には「読む」事に主眼。国のあり方とかを揶揄する彼ららしい題材なのだけど、テキスト自体が、おかしいな、と想う時代批判を持っていることの力。確かに演出していることの意味は薄まってるのかもしれないけれど、イデオロギー的に好きだという事もあって、あたしはこのテキストに出会えたことの幸福を感じます。

「国の利益」に向き合うのは「別れたくないという気持ち」。だからオンナの理屈はわからない、と云われがちな「大切だと思う軸の、埋めがたい違い」が主軸。物語の中で後者は決して勝つわけではないのだけど、時間を経た今、アタシはそちらを大切にしたいと思ってしまうのは、そうか、これがイデオロギーか。

一方のShelf組。こちらも女視点の物語。あからさまには何一つみせないのだけれど、男性の演出がこの二本を選んだというのはすこし面白いのです。ただ、こちらは演出が強すぎる印象。テキストと演出の間に乖離を感じがちなあたしです。激しく入れ替わる役や、テキストとは別に動きだけで役者がやっている何かの別の物語など、演出をしているということははっきりわかりますし、もちろんかっちり作り込まれていると思いますが、わざわざテキストから乖離させている動きに、アタシは有機的な相乗効果を感じ取ることができなかったのが残念な感じもします。

善し悪しではなくて、アタシにどちらがあっていたかという点ではチャリTに軍配を上げるあたしですが、こればかりは見比べるたのしさ。是非とも4本を。

横濱リーディングコレクション#4「岸田國士を読む」
2007.8.9 - 8.12 相鉄本多劇場
作 岸田國士
◆「動員挿話」
演出 楢原拓
出演 松本大卒 ザンヨウコ(危婦人) 内山奈々 楢原拓 竹内洋介 小杉美香 長岡初奈
◆「顔」
演出 矢野靖人
出演 川渕優子(shelf 甲斐博和(徒花*) 高田愛子(ユニークポイント) 円谷久美子 西山竜一(無機王) 百花亜希

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速報→「生憎」劇26.25団

2008.8.10 19:30

今回の佐吉演劇祭では唯一の女性作演であるニイロクテンニイゴウ団の新作。モヤモヤはそのまま感じるのが吉。100分。12日まで王子小劇場。これからご覧になるならば場内アナウンス通り、入り口から見て奥の方がバルコニーや入り口のあたりもよく見えます。

人里離れた村につくられた新しい素材の食肉加工工場。多くの人員を抱えているがその多くは休みでもこの村を出ないし面会にくる人も少ない。それでも、面会にくる親戚や友人が居て。

前作(OFF OFFシアター)でもかなり建て込まれていた舞台ですが、今作もその強みは健在。劇場を横使いというのはありますが、舞台の中に階段を仕込み、キャットウォークの殆どを黒く隠し、あるいは別の場所をうまく設定し、バルコニーやエントランス部分をキレイに作り込んでいるのです。

ネタバレかも。

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速報→「かば2」メロン記念日

2008.8.10 15:30

メロン記念日の主演舞台、わずか4カ月でのほぼ同じキャストでの続編。散歩道楽の太田善也の作演で。10日までシアターグリーン。110分。

母を幼くしてなくし、父が育てた四姉妹。父がアフリカでカバに殺された彼女たちはそれでも日常を取り戻しつつあった。三回忌を迎えたころ、三女は不思議な夢を見るようになり、身体の弱い四女を気にしている出戻りの長女は見合いをしつこくすすめられたりして...

一回目は見ていませんが、がっつりと一本目に繋がる物語。そんなアタシにも小出しにはなるものの背景の多くはきちんと説明されます。もちろん順をおってというわけにはいきませんが、そう大した問題ではありません。

メロン記念日(wikipedia)はハロプロ系だということと、ユニット名と人数ぐらいしか知らないアタシです。それどころか、美人めの役者が並ぶと不思議と見分けがつかなくなてしまうあたしです。

観客席は芝居の現場でそうそう見られないぐらいに男性の割合が高く、しかもアタシが混じっていても見た目には浮かない位には年齢層もそれなりに高く。開場時間中にDSで遊ぶ客が多いというのも、新鮮な体験。(かと思ったら夜に見た王子小劇場でも初めてDSやってる客を見かけましたが。夏休みだからか、もしかして)。もっとも、やはりファンという感じではあって、もう、アタシは圧倒的にアウェイな感じの開演前。

いわゆるアイドルを中心に据えた可愛らしさ押しの芝居かとおもえばさにあらず。年齢は少々高いこともあるのでしょうが、妊娠同棲出戻りと年齢なりのさまざまな行き方を凝縮した四姉妹という描き方。 2時間弱という時間のわりには、びっくりするぐらいにエピソードを詰め込み放題。映像を一切使わない割に、シチュエーションコメディ的な組み立てや出落ちに近い脇の役者だったりとあの手この手を駆使しながら、テンポ良くたくさんの物語を描ききります。前回はわりと暗めだったとも聞きますが今作は全体に明るくコメディの要素が強く、バラエティのようでもあって気楽に楽しめます。

いわゆるアイドルを、単に可愛らしいものを愛でる以上の物語のある芝居として見る場合、客席の殆どを占める男性の観客の視座をどこに置いて描くのだろうと不思議に思ったりもします。同棲している芝居音響で貧乏な彼か、嫁としっくりいかない酒屋の彼か、もの凄く可愛い彼女をゲットしてしまっているがどう見ても美形ではない彼か。それぞれの男にもコミカルではあるけどしっかりと見せ場を用意してるのも、アタシとしては見やすい。いわゆる芸能人のオーラに小劇場の役者が束になってもかなわない、ということがありがちなのだけど、何かがきちんとコントロールされているのか、そういうバランスの悪さは感じずにすんでいます。

病状は安定したがまだまわりに心配をかける四女と過度に心配する長女、彼氏と相変わらず同棲していて妊娠してるのに頑として結婚はしたくないという三女のあたりが今作のポイント。ごく少ない人数の人間関係があまりにあれこれと関係しすぎる、というこの手のシチュエーションコメディではありがちな強引さはあるのですが、結婚式と不動産の話をとりちがえて混乱するあたりとか、結婚という形式的なものに意味はあるのか、なんてあたりが書き込まれていて楽しめます。

自分が幸せになることに躊躇をしてはいけない、というあまりにもシンプルでまっすぐな視線のメッセージ。役者も作家もあたしを含めた観客もそう若くはないのに、こんなにもまっすぐでベタな話に、油断すると持ってかれそうになってしまうアタシの気持ちもあって、これはなんだろうとも思うのです。

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2008.08.10

速報→「阿片と拳銃」M.O.P.

2008.8.9 19:00

ラスト三本を宣言したM.O.P.の新作。休憩・演奏付き155分。長めの公演期間は席を埋めきっていないようです。一部ぴあでハーフプライスチケットがあります。

上海、久々に出会った三人。むかし東京でひと晩すごした男女。二人は結婚していて、もう一人もこがれていて。

1979年頃・浜松の老人ホーム、1939年・上海のフランス租界で暮らす実業家のリビングを主軸に。その間を繋ぐ1959年・京都の撮影所、とその前段としての1931年・東京の街角を添えています。

三人の男女が偶然出会い、再会し、別れ、老いていくという長い長い時間の流れ。主役の三人は同一人物のその長い時間を演じていて、役者に恵まれるM.O.P.の真骨頂。

独立の映画会社(マキノプロのマキノ省三と作家は関係あるのかなぁ)、「巴里の屋根の下」や満州映画協会などのさまざまな歴史上の事実を巧みに取り入れるのは映画好きの作家の特性なのでしょう。

物語の運びは長い時間の流れをゆっくりゆっくりと歩を進める感じ。あたしの体感のリズムよりはずいぶんとゆっくりで、よく云えば丁寧、悪く云えば冗長。一見無駄なシーンもけっこうあるのです。あるいは休憩前後でセットを変えないで、その中間に休憩を入れるというのも理由を量りかねます。作家の中では必要な場面を重ねているとは思うのですが、120分に納めるように切れない、という印象を持ちます。

いえね、好きな作家なのです。これだけの想いと老いを、虚勢を張り互いを思いやる人々のことをきちんと描ける作家はそうはいません。

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速報→「7の椅子 4」7の椅子

2008.8.9 14:00

短編オムニバスを固定メンバーで上演するナナイスの新作。105分。10日まで劇場MOMO。

不倫のカップルを別れさせるよう依頼された別れさせ屋が仕組んだのは、男を威した情けない姿を見せて女を失望させようという作戦で「脱皮しないヘビ」。 町で妻がみかけた夫の姿は、路地で地面に向かって何かを執拗に調べている風で疑問は疑いに変わり「ジグザグカメレオン」 修学旅行の積立金が紛失した学校の職員会議。教育委員会から調査官が送り込まれてきて「イグアナの目」

固定したメンバーで客演を呼ばないスタイルの本公演。以前はもう少しコミカルな色が強かった気がするのですが、両生類をタイトルに掲げた三つの話は少しずつスタイルが異なります。

ネタばれかも。

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2008.08.09

速報→「流れる」野の道

2008.8.8 19:30

津島めぐみの演劇企画、野の道のほぼ二年に一回公演の三回目。今までとはがらりと雰囲気の異なるオムニバス三本構成。100分。10日まで下北沢・楽園。L字型の劇場で客席が2ブロックになっていますが、アタシがみた入って右側が見やすい感じがします。

引っ越してきたらしい夫婦の家にやってきた水道工事の男、洋服などの子供用品を見つけて世間話をしようとした男だが、妻の云うことと夫の云うことは微妙に違っていて「空室」。
周囲に交際を反対されて駆け落ち同然で荷物をまとめて出ていこうとする女と手伝う幼なじみの男。行き先で落ち合う筈だった相手の男が部屋を訪ねてきて「ムグンファ」。
金と引き替えに男を連れ込んでいる女の部屋。昔その部屋に居たという女が押しかけてきて、その部屋に通ってきた唯一の男が居たといい「流れる」

役者の台詞も舞台もすべて大阪の話。作家が生まれた土地なのだといいます。いままでの公演では劇場(アレイホール)の特性もあって、広くて綺麗なリビングを舞台にした家族の話だったのだけれど、一転、あまり幸福でない風の狭い一室で待っている風の女の話三本。作家に何があったんだ、と勝手に勘ぐってしまうほどの変化。いえ、もちろん何も知りませんが。

大阪に住んだことのないアタシには言葉の自然さや、それぞれの芝居が題材にしているある種のマイノリティがどれだけリアルを描写しているか、ということは正直わかりません。なのでネイティブにはまた違う感想、という気はしますが、関東の役者ばかりということを考えれば、ことさらに誇張するでもなく自然な会話だと感じられます。京都でも神戸でもなく大阪だということは掴めてもその街の中のどんな場所かがわかる観客にはもっとリアルに見えてくるのかもしれません。中心部ではなく周縁部、という雰囲気だとは思うのだけど。

「空室」は不条理すら感じさせるつかみどころの難しさ。妙なことを口走ったり行動したりする妻がヘンなのかと思うと工事夫も怖かったり、救いになるかとおもう夫も決して普通ではなくて。アタシの視座を何処におけばいいのか、どこに手足をかけて取っ組み合えばいいのかということを迷ったまま流れてしまう感じ。

「ムグンファ」はそういう意味では背景も物語も実にわかりやすくて、シンプルな話。見送る側の男の想いを、あからさまな台詞にはしないでどれだけ想いとして伝えられるかが、このシンプルな話に奥行きを持たせるポイント。

この三本の中では最も見応えがあった感じがする「流れる」は、時代背景の違う女二人の不思議な空間に頭をかき回される感じ。ひどい恋愛の話だと思っていると終盤で鮮やかにひっくり返すあたりは、背景にシチュエーションを借りたチカラワザではあるのだけど、そのテンポがよくて、あれよあれよという間に「背負い投げ」を決められた気分なアタシなのです(ほら、オリンピックだし)。

下西啓正のいでたちが他では見られない風で、ちょっとレアで楽しい、というのはまあ、この役者の様々な舞台を知ってるからですが。高野ユウジの真っ直ぐさは雰囲気によくあっています。雨森スウとの二人の身長差、叩くじゃれ合いも気持ちを温かくします。狭い舞台ゆえに大きな舞台も経験のある兵藤久美は突出していて、動きも台詞も美しい。いえ、もちろん三本目冒頭でドキドキもしてしまうのだけど。(←オヤジ)

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2008.08.08

出会うこと。

そうそう。「私もあなたの数多くの作品の一つです」という弔辞が読まれた日本人が殆ど知ってる漫画家。もうひとり別の、世間的にはマイナーなクリエイターの訃報も聞きつつ。

思い立って、会社の人と面接の一週間。それほど大勢というわけではないけれど、どんな人々か、アタシに出来ることは何か、アタシに出来ないことは何かを考えながら。人と話すのは楽しいとは思うけれど、ひとみしり道(amazon, webコミック)初級(←嘘)のアタシはキッカケが掴みづらかったので、実はアタシにとっていい機会。そうそう、思い出した。目を見て離さなきゃね。

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2008.08.04

速報→「僕らの声の届かない場所」空想組曲

2008.8.3 19:00

空想組曲の新作は額縁をモチーフにした舞台美術が印象的な120分。4日まで王子小劇場。

若い画家の卵が集うアトリエ、どこかゆるい雰囲気の中、一人他人と交わることを嫌う男。抽象の手法で沢山の「物語」をキャンバスに焼き付けようとしながらも、一枚も「完成した」と思えるものが出来ないし、それを他人が理解出来ないのがもどかしい。ある日、アトリエにある日現れた少女は彼の絵を見て絵が未完であることを感じ取り、感性の暁にはすぐに見せて欲しいと懇願する。彼女は時間が無いのだといいアトリエに通うようになる。

若い画家、ある種の足の引っ張り合いもあったり、才能がどうにも無いのが混じってたり、という背景と云えば「コンフィダント・絆」(1, wikipedia)が思い浮かんだりしますが、友情を軸に描いたあれとは違い、理解されない溢れる才能と、それを理解できるベターハーフとの出会いを描くいう点で別物だという気がします。

たとえば美術館で絵を見ることがあまり得意ではないアタシです。たった一枚の絵に込められた「ものがたり」という時間軸の深みを読み取る技量はなかなか難しい。今作は画家がスケッチブックやキャンバスを抱えて描いている最中、そこに画家が思い描いた物語を見せる、という手法で「画家の頭の中」を可視化することに成功しています。このやりかたはアタシにはとても有効なのです。画家達の描く絵そのものはほとんど観客が目にすることはありませんが実にスマートなやりかたで見せていると思うのです。

前回の王子に続きいわゆる八百屋舞台の急傾斜(前回よりは浅いようです)。キャンバスを舞台にその額縁は更に傾いています。客席はL字状。出捌けの基本となる下手側奥は現実の世界の出入り、上手側奥はキャンバスを剥がすようにして、画家の描く世界の物語の人物たちが黒一色の衣装で出入り。人が混じっても二つの物語世界をしっかりと分離してみせることができていて、実に親切なつくりで観やすいのです。役者には負担がかかりそうな感じもしますが無事に楽日まで走れますように。

ネタバレかも

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速報→「ピース」グリング

2008.8.3 15:00

新作と他団体向けの再演を6本のゆるやかに繋がる短編集。110分。11日までスズナリ

病院の喫煙部屋での話「Episode 0」。
バーベキューに来た二組の夫婦、事故に遭った義兄の介護のために引っ越してきたが気乗りしない妻。もう一人の妻は夫の浮気を心配していて「花火の約束」。
病院でであった女は不動産を営む男の息子のもと担任だった。市民運動を熱心にしている女は署名を頼むが、車いすの男はやめた方がいいと耳うちして「僕の好きな先生」。
同居をはじめた兄と弟夫婦だったが、ふとしたことから起こした事件を弟夫婦はひた隠しにしていて「朝顔」(初演/oi-scale)。
売れないマンションを営業する男、難癖をつける女はじつはかつての同僚で訳ありの待ち合わせで「北向きの女」。(初演/パルコ LOVE30 vol.2)
花火大会が終わった。偶然再会した元教師の女と不動産業の女、おなかの子供のことを向き合って考えようと「ピース」

横須賀らしい場所。蛾の異常発生、原潜の放射線漏れとの関連を疑う人も居る。壊れそうな地球の話を舞台の素地に、中身は不倫心や恋心だったり、事故にあって生まれる猜疑心だったり。懸命に生きている人々、少々カッコ悪い感じはあるのだけど、それぞれの人生。

設定や人物は繋がっているものの、正直な話、全体を並べたときにテーマという感じのつながりは薄い感じがします。その意味でオムニバスだと名乗るのはまったく正しい。

会社のあこがれていた先輩女子社員だった女のさまざまが徐々に見えてくる「北向きの女」がわりと好きです。途中の過程があまりにもどうか、という後味の悪さはあるし、逆に最後はまっすぐすぎる感じもするのですが。全体の中では毛色も時代もちょっと違う手触りがあって、でもストレートな応援歌的な話は嫌いじゃない。

これも含め全体に安定していて何の不安もなく観られます。星野園美がコメディエンヌの本領発揮。佐藤真弓がやけに色っぽい感じがしてしまう、というのはあたしだけですかね。やっぱり。

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2008.08.03

速報→「ローションパック」♂本番ナシ♀

2008.8.2 19:00

根津茂尚, 三谷麻里子, 池田ヒロユキというバックグランドの違う三人が二人芝居を上演するユニットの旗揚げ。それぞれ二本出演し一本演出するという構成で三本組、60分。4日までアトリエセンティオ。少々わかりにくい場所、靴を脱ぐので対応した格好で。

ベットまわりで会話する訳あり風男女、通りすがりではなく過去もあって今こうしている理由もあって「No Other One」(脚本:名執健太郎/ex smartball)。畳の上で向かいあって会話する夫婦らしい二人、狭い部屋の真ん中は大きくて邪魔なものが「赤い石」(脚本:関村俊介/あひるなんちゃら)。並んで折り紙としりとりをしつづける男二人には乗り越えられない差があって「ピサロ」(脚本: 澤唯/projectサマカトポロジー)。

一般民家のような建物の一階を改造したアトリエ。路地には子猫が沢山いて。アタシの観た夜の回は開演前に舞台に迷い込んだ子猫まるで演出されたかのように。いや、アクシデントだしスタッフはちゃんと外に出したりしてるのだけど。そんなのんびり感も楽しい。

<なんせ短編、ちょっとかけば即ネタバレ。

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速報→「血が出て幸せ」クロムモリブデン

2008.8.2 15:30

クロムモリブデンの新作。3日までシアタートップス。90分。

深夜のファミレス、遠距離恋愛の彼氏と電話で話しているらしい上京しばらくの女は少々の虚勢を張ったりもしている。客が増えていく。カッコイイ男、それに惚れて即辞めちゃうウエイトレス、物語を書く女、業界っぽい男とか。厨房の男一人で店は混乱して..そこにもう一人、保健所から来たという彼女は。

物語という嘘を望む女王、でも物語にはすぐ飽きて次の嘘を所望する。頭の中の物語でもあるけれど、前半で見えているそれは世間の目だったり自意識だったり。やがてパーソナリティを切り売りするような一見、地味な事実すら物語として消費したくなって、という感じ。

今のリアルな日本で起きている、衝動的な殺人のさまざま。作家はそこから発想して、だれでもいいから殺したいという衝動だけではなく、それを見物したり、自発的に殺されたりということすらも娯楽になってしまっているように描きます。それは今の日本の現実のそのままではないけれど、ネットでの騒ぎ、秋葉原で多く撮影されたビデオの映像、なんてものを補助線にしてみると、ちょっと斜めから切り取ったようなリアルだったりもします。

じゃあ、その犯人の頭の中で起きていることななんだろう、というのが終盤の中心。 頭の中で騒いでいる何人かが自分を衝動的につき動かしてしまう。前半はその頭の中の風景で、後半はそんな犯人を外から見ている感じで。

陰惨なリアルを切り取りながらも、舞台はきわめてポップなのが彼らの真骨頂。キャラクタが多彩で癖があってカッコよくてという役者の魅力もそのまま。トップスの空間は広さという点ではこの物語にちょうどいい感じはするのだけど、たとえば王子小劇場で観たときのような爆音に包まれる感という点では、舞台にスピーカーを吊ってこれ見よがしにしてる割には、彼らのウリだけに少々物足りない感じも。まあ、劇場なりの理由もあるのでしょう。

若手だとおもっていた渡邉とかげを強力にフィーチャー。対になるかのような木村美月は見た目、どっかで見たことあるような感じになってしまうのは、美人ゆえに悩ましいところ。(鳥居みずき、だと云った方、うまい。似ているあのタレントも美人だと思う、あたしは)客演・伊東沙保は一気に変な世界に観客を引き込んでいくところが強力で無機質な喋りも可愛らしい。男にまとわりつくシーンがちょっと好きだったり、びっくりの早変わりも注目。

顔も服も変わっていく彼女の姿をずっとみていた、というあたりのくだりがちょっと好き。 偽装をめぐる謝罪のシーンもたくさんある謝罪会見をリミックスしたようで楽しい。

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2008.08.01

ばたばたしつつ

仕事引き継いでみたり、増えてみたりしつつ。まだまだ世の中には知らないことが沢山あるのですが、ぼちぼちと進みます。何かの役に立ってる実感はないけどこれからこれから。

盆休み連休がそろそろ地平に見え始めて気持ちはそっちにいってしまいがち。青森に芝居見に行くかなぁとぼんやり考えたりもしつつ、いやいや、この繁忙期にと思い直して。

週末

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