速報→「真剣恋愛」競泳水着
2008.8.31 19:00
佐藤佐吉演劇祭のトリを飾り、劇団としても第二期トレンディードラマシリーズ三部作の二本目となる、こってりと濃密で静かで優しく、しかしまっすぐな舞台。3日まで王子小劇場、110分。
まだ売れない役者、ふとした偶然で女子アナとして活躍している元カノに再会するが、その僅かに話した時間を写真週刊誌にスクープされてしまう。
高校の男子生徒からも他でもモテる養護教諭に想いを寄せる男子生徒は、コンビニ店員の相談を後押しに告白してしまうが、幼なじみの女子生徒はそれを知って気持ちが揺れて。
大筋の物語、という感じでは、好きだとか嫌いだとか、言い出せないとか、言い出すとか、想いを伝えるとかなんて具合の恋愛至上主義な「トレンディードラマ」のような、薄っぺらさがあります。 あんまり言葉が良くないのだけど、アタシとしては好意的な言葉で、ほぼ全ての登場人物の行動原理が恋愛になっていて、仕事や勉強やセックスすらも、それのおまけ、としているような書き割りのような、記号のような扱いで、それは逆に、観客のもっている恋愛の過去にいろんな形ではまり込んでいくような面白さがあると思うのです。
会えない二人が電話で話すうち、冗談めかして好きだと言い合っているうちにふと訪れる短い言い淀みとか、保健室でじゃれ合ううちに距離が近づいたり、別の男に会いに行くことが気になってしかたがないとかと恋愛に纏わる想いの、ごく微少な瞬間の気持ちの動きのとらえ方が実に的確。テレビドラマ的、と云われがちだけどこういう細かな作業はやはりこの小さな空間での芝居でこそ、という気もします。
コンビニ店員という役がちょっと面白い。恋愛相談のアニキだったり、恋に悩む乙女の相談相手だったりと物語の後押し役をこの一点に集約しているのはもちろんご都合主義なのだけど、いたずらに人物を増やさないのは巧い感じ。
当日パンフで作家が語るとおり、作家の構想が先だとはいいますが、女子アナの写真週刊誌のスキャンダルのあの実際の事件が思い浮かびます。アタシはかのアナウンサーが好きというよりはその秀一レギュラーでのラジオ番組が好きで、彼女に親しみを持っていただけに、格別の思い入れはあるけれど(陰謀説まで飛び出すし)、そんなこととは関係なく、事件をパクったとはあんまり思わないのだけどどうだろう。
それにしてもこの恋愛至上主義。アタシの頭のなかもそういう話が大好きだとアドレナリンを分泌しますが、それはもう遠い日の花火どころか、そんな花火はあったのかなかったのか(泣)。
大きく二つの物語。舞台を大きく5ないし6のアクティングエリアに分け、保健室、役者の男の部屋、女子アナの自室、コンビニを固定し、残りの場所を街角や事務室、控え室などに使います。複数の場所を並行させたり、カット割りのように複数の場面をスムーズに繋いでいき、隙間なく物語をどんどんと詰め込んでいる感じで、美形揃いの役者とあいまって、飽きることがありません。
細野今日子、大川翔子はこのフォーマットの中での何の不安もない安心感。客演の清水那保は、こういう普通のオンナノコの役というのは珍しい気がして実によくあっています。和知龍範のすこし悪ぶった教師は終幕でその声で説得力。
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント