速報→「ペガモ星人の襲来」G-up presents
2008.8.23 19:00
13年前に後藤ひろひとが立身出世劇場に書き下ろし、演出した作品(えんぺ)の再演をその立身出世劇場の主宰だった関秀人が演出でキャストを一新して再々演(らしい)。懐かしい気すらする大王節満載で満腹な120分。大阪のあと、31日まで駅前劇場。
ラジオ局。音効の重鎮の男がかつて関わった伝説のドラマに興味を持つディレクター。それはアメリカでラジオドラマ・火星人襲来の噂を聞いて日本でも、と作ったSFドラマで、たった一回で打ちきり、しかもその最後のUFOの飛来音をどうやって出したのか、未だに判明して折らず。
老人と若者の二人の静かな会話から始まる物語は50年前と現代をないまぜにして、時に境目がなくなるような不思議な感覚で進みます。「世界で一番速い女」(2000年)に至るような、切なさと笑いを併せ持つ、後藤ひろひと大王節。G2やパルコで大王作品は数あれど、駅前劇場の規模で小劇場の達者な役者たちで見られるのは格別なのです。その感覚は懐かしさすらあって、そういう意味ではたかだか10年少し前とはいえ、古いスタイルなのだとも云えますが、あたしはそれに浸りたいのです。リピーターが居ると言う噂もむべなるかな。
音効が何をしたのか、という謎は実は早々に見えてしまったのですがこれも大王らしい感じ。恋物語をいくつか織り込んでいるのだけど、それがほどよく本筋を邪魔しない感じで、見やすいのです。テレビ局の妙な番組の風景も、本筋にはまったく関係ないけど楽しい。
そう、この時代の後藤ひろひと作品には、本筋となる物語とは全く別に、いわば「にぎやかし」の役が結構あります。テレビ局ラジオ局の猥雑な感じを出していて効果的。もっとも、遊気舎での未熟なしかし大量の役者を舞台に上げるための手法だった気がするんですが、そこにすらこれだけの芸達者を当ててしまう贅沢、というよりいいキャストをいわば無駄遣いしているような感じすらあって、キャスト勝負のG-upの行き過ぎ感もあります。とはいえ、物語は濃密であっという間の時間。実に楽しい。
有料のパンフレットを1000円で売っています。中身を見ないで買ったアタシも悪いのですが、キャストや稽古場の写真を載せただけで上演記録すら載ってないという代物。上演記録は無償の当パンにはちゃんと書いてはあるのだけど、それはどうなのだ。G-upはパンフの意味がわかってないのでは、という気すらします。芝居がものすごくいいだけに勿体ない。
瀧川英次の老人の音効が実にいい味でほぼ主役。小椋あずきと岩井秀人のぶつかり合いが凄くて、明らかに変な人度合いは少なくてもがっつり組み合っている感じが実にいいのです。大内厚雄と町田カナのニュートラルが首尾一貫しているのは物語を見やすくします。それにしても関秀人のかなり卑怯な登場は、ええ、もちろん好きですが。
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