速報→「閃光」reset-N
2008.7.26 15:30
reset-Nの新作。作家の私小説な仕上がり、次の公演を決めずに背水の陣だといいます。28日まで王子小劇場。80分。
作家が物語をつむぎ始める。マンションの一室、男と女がじゃれあっている。隣に住んでいる劇作家はかけずに公演が危機を迎えている。女は昔の男からあきらめきれない電話が続く。作家には女が居る。
物語だけを読むとえらく陳腐な「書けない作家の独り語り」。が、さすがにこの座組。作家はさらに外側に作家自身が語る構造にして物語をミルフィーユ。四方を囲まれた役者もかなり色っぽかったり、台詞が心地よかったりと見せ続けます。
本作の評価は、いままでのこの作家の可能性を買っていたかということに左右される感じはします。買っていた人ほど、これを見たくないとは思うのです。むしろアタシはこの作家の面白さを理解するのが困難だったりしていたのです。アタシとしては作家の私小説なフォーマットを取ることで、この作家の語り聴ける面白さ。また、彼が巧いんだ。
物語として描かれている断片はちょっと素敵だったりします。「アイスクリームの正しい食べ方」のぞくぞくする感じはアテが無くてもいつか真似してやろうかとおもうぐらい。あるいは先生とのかつての研究室での日々を語るあたりもちょっと好きです。終幕で作家の恋人が自分を登場させた理由を詰問するあたりも実にいい感じ。が、これは断片で繋がりとしてアタシには迫ってきません。 こんな(モテな)風景をそんなには経験してない(泣)アタシとしてはそれがむしろ絵空事だから、というのはもちろん棚に上げて。
物語の背骨を担うのは、もちろん作家の視点でのあれこれ。となれば、もちろん終幕のそれも背骨ではあるのだけど、あたしは前半の軽妙さも捨てがたい。普通だったら正視に耐えなくなりがちな作家自身の「書けない節」。入り口右側にある譜面台に立つ作家と女の表情が見えることは重要ですが、二人の絶妙な物腰で抜群に面白い。これに物語が霞んでしまう感はあって、弱点といえば弱点なのです。
偶然とはいえ演劇祭の一つ前のラインナップが現実に公演中止になったりしているという事実は、そんな書けない節に現実味をもたせます。 何度も使える手ではないけれど(あったら困る)、スタイリッシュだけどとっつきにくい感じの多いreset-Nの中では異質な感じ。しかし、それがこんなにもあたしの気持ちのなかすっと入ってくるようなわかりやすさは意外な気もしますが面白かったのです。
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