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2008.06.23

速報→「水平線の歩き方」キャラメルボックス

2008.6.22 16:00

ハーフタイムシアター二本立てのもう一本は新作。こちらも29日までアプル、神戸、名古屋。60分。

男が酔って帰宅すると、女がひとり待っていた。気がついたらここにいたといい、母親なのだと名乗る。23年前に亡くなった母親は、それからの男の生きてきたことを聞きたがって。

少年が一人立ちしたいと願う「ハック〜」とは合わせ鏡のように、一人で生きてきたと思っている男と、若くはない男が歳を重ねていく諦めきれなさと自暴自棄の相半ばのバランス。スポーツ選手を設定することで、普通に暮らしてる人よりも早く「衰えを自覚する」物語に説得力。

ネタバレかも。

死んだはずの母親とはなし、それまでのことを再現し、半分ぐらいのところでかかってくる 電話という時点でかなり早い段階で構造は見えてしまいますが、まあ多分意図したことなのでしょう。 ある種の走馬灯というシンプルなワンアイディアがベースになっていると思うのです。大人視点の男の話の成井戯曲では、なぜかネガティブだったり泣き言だったりする言葉が語られがちな印象のアタシなのですが、今作もその印象はかわりません。

全体としては平坦になりがちな話なのですが、前半を爆笑編に仕上げ(途中までコメディをやるんだと思ってたぐらい)、落差をきちんとつくることで、見やすい芝居に仕上がっています。

久保田晶子という女優はずいぶんと若いと思うのですが叔母というポジションをきちんと。傍系の親戚をコミカルに描きすぎることの多いキャラメルの演出の中ではちょっとびっくりしますが、正しい。

「ハック〜」のように一人になりたいのではなく、一人で生きるしかなかったと思っている男の心の支えであるラグビーを失ったときの喪失感、それを支えている周りの人々が居るのだ、ということを35にもなって気づく男の姿はアタシの泣かせツボを直に刺激してきます(が、ギリギリで持ちこたえつつ)・

正直にいえば、前後半の落差も終盤の泣かせも役者の力に支えられている感じはします。題材がネガティブで内向きになっているために、物語単独ではどんどん自閉してしまいそうな印象がありますから、前半のあれだけのはじけ具合は絶対に必要だと思うのです。

水平線までの距離は遠いようで近い、ということと、その向こう側にだれかがいるのだという言葉はアタシの気持ちに染みこみます。最近の数本では、キャラメルボックスの芝居の青い空(まつさをな、ですが)が印象的で、今作もその美しさは群を抜いています。

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