速報→「杭抗(コックリ)」乞局
2008.6.7 19:00
人間の気持ち悪いところを突き詰めて描く乞局の新作。15日まで、こまばアゴラ劇場。110分。公演前半には、終演後に20分ほどの短編「グレムリンの行程」を上演。
「平和島」をめぐる3つの時代の物語。戦後埋め立て地につくらえた戦犯の収容施設では、戦犯を認めない男が日本に居た妻が毎日のように通ってくるのに会わず、戦地で強姦した女を自分の妻だと言い張る。それから数十年、放置自転車の保管所のまわりでは、突然襲われ殺される事件がいくつも起こる。さらにその後、廃墟と化したその建物では密かに営まれている商売があって。
平和島をめぐる土地の記憶と現状、未来という3つの時代と、繋がっていく人々を描く一本。ことさらの気持ち悪さや退廃感は薄れ、ある種の大河ドラマのような「繋がり」を強く感じさせる物語になっています。もちろん部分部分ではその気持ち悪さが顔を見せますから、人によっては受付けないシーンがいくつもあるかもしれません。それに嫌悪感を感じないアタシの方がどうかしているともいえます。
どこかで聞いたことがあった気もするのですがすっかり忘れていた、平和島と収容所(文中にある写真のリンクは切れていますがここ)の話。平和島が島でなくなり、負の遺産ゆえに消し去ろうとされててきた、この土地の記憶が確かにここにあるのです。
かつてはもっと露悪的だったり、強い刺激だったりした気もするのですが、最近は、すくなくとも表面的には気持ち悪さ目一杯という感じではなくなってきています。もちろん細かいところである種の気持ち悪さはあるのですが、それよりももっと「人の繋がり」のようなものに、作家の興味が移っているという気もするのです。
ネタバレかも
戦犯と現地の妻や子供、その子供からのつたない日本語の手紙。戦犯が強姦の罪を認めない大きな根拠であり、それを「家族」だと信じる気持ち。物語はその戦犯を起点として、徐々に繋がっていきます。
来日してやってきて、差別を受けても日本を離れないでいる外国人の女。その娘達はもっと冷徹で、その場所に居続けることも、今の生活が不当であることに不満を持っている。日本を離れない理由が女にはあるのですが、それがきちんと示される終盤近く、手紙のシーンは印象に残ります。同じ境遇はどうしても集まってきてしまうというある種の差別や格差の固定と、それを超えようとする若い世代の気持ちのやりきれなさも、あたしの気持ちを揺らします。
古い時代2つのシーンはわりと強く繋がっているのだけど、未来となる3つめのシーンのつながりはどこか薄い感じは否めません。子孫としての繋がりはあるのだけど、戦犯ということが完全に過去のものになってしまっているという時代で、でも、調べればルーツとしての戦犯が見えてくる程度には遠くて近い感じの視点というのはちょっと面白い感じもします。
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