速報→「ショウジさんの息子」渡辺源四郎商店
2008.5.24 19:30
渡辺源四郎商店の「店主」、畑澤聖悟が弘前劇場時代最後に作演した「ケンちゃんの贈りもの」の改訂再演。青森、東京の公演は終了。90分。
かつて、お笑いのコンビを組んでいた夫婦。その妻に先立たれ、妻の父と同居している男。その義父の 傘寿の誕生日に二人、ささやかながら祝いの宴。義父は見合いの相手をその席によぶが、男は受け入れず、帰してしまう。そのあと男がプレゼントだといって用意していたのは、義父の老人ホームへの入居だった。
もとになった「ケンちゃんの贈りもの」は「賢者の贈り物」をベースにしたところがあって、そこに今の日本の地方都市の風景を織り込んだ感じの話。義父と近所の酒屋のそわそわ感といい、食卓の上のこれみよがしな大学ノートといい、物語のキモとなる部分は早々にわかってしまう感じはあります。それでも、初演に違わず、やはり客席中がすすり泣きどころか嗚咽まで聞こえてしまうほどの泣きで溢れる力が確かにあるのです。
圧倒的な安定感のある戯曲。弘前劇場の幅広い役者陣には及ばなかった感のあるナベゲンですが、徐々に育ってきている感はあります。初演でローカル芸人という話だったかじつは覚えていないのですが、若い役者に違和感ないポジションだったり、前半のコミカルパートをしっかりと見せる効果があります。
本人は覚えていないのに、ラジオ番組の放送を克明に覚えている熱心なリスナーという構図。しっかりとリスナーに刻み込まれた記憶と、記憶を持てなくなっている本人のコントラストは見事で、それを「聴くしかない」本人の気持ちの深い暗澹。
いろんなひっかかりをそこら中に作り込み、その一つ一つのピースをピシッと寸部の狂い無くはめ込んでいくようなところがあって、「ずるい」という指摘もうなずけますが、ずるくても嬉しい、もっと観たいという気持ちにさせるのです。
劇団が新たに開設した青森のアトリエ製作の廃材と思われる木材をモザイクのように組み合わせてつくった美術はシンプルで効果的。記憶のモザイクさ加減がよく現れている、なんて書くとちょっと出来すぎな邪推ですが。
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