速報→「グローブジャングル」虚構の劇団
2008.5.25 14:00
鴻上尚史が若い役者を使って立ち上げた劇団の旗揚げ公演の千秋楽。110分、シアターグリーン大劇場。
書けなくなって仲間たちも離れてしまった劇団座つき作演の男。配慮のない書き込みでblogが炎上し写真住所名前まで晒されてしまった女。それぞれの事情で傷つき、それぞれの目的でロンドンの街に滞在を始める。
そのころ、日本人学校の児童たちに日本の民話を見せようというプロジェクトがたちあがり、日本人を募集しはじめる。
ネットに対するある種の洞察力について、アタシは鴻上尚史という作家をかなり信奉すらしているところがあります。彼の語る言葉がもし荒唐無稽であっても、それは時代の先を嗅ぎ取って書いている、と無条件に思ってしまうのです。 技術の最先端というよりは、今流行っていることを取り上げているように見えても、その先に内包されていることの萌芽が形はいびつでも書き込まれていて、それが数年後に見直したときに効いてくる感覚。 「朝日97」を初めて見たときにネットワークというものの切り取り方は先鋭的ではなかったけれど、ネットが傷つけるということと傷つけない関係が求められるだろうこととか、「ファントムペイン」(もしくは未見のスナフキンの手紙)で詠み人知らずのテキストが流布することの視点。今から思えばごくあたりまえのことを、その時点で書き込んでいることの凄さというか。
じゃあ、それに照らして本作は先々の何を書き込んでいるかということは、今現在のアタシにはやっぱり残念ながらわからないのです。blogの炎上のしくみやその過程(ロウソクを付けたり消したり日が増えていくという即物的な見せ方はちょっと笑った)が見えたり、YouTubeみたいなことはほんの少しだけ昔のことを書いていて何を今さら、という感じはするのだけど、ここに描かれた何かが、きっと数年後にああ、そういうことかと思う日が来る気がするのです。そのために、アタシは彼の現在進行形での言葉を聞き続けたい。
ネットでの傷つける側と傷つけられる側を端緒に、傷ついて逃げてきた人々、死にたいと思ってる人々の居場所。学校での芝居ということを設定して、元AV女優とか、危険な可能性があるというだけで撤去され続けるグローブジャングルという公園遊具など無難にし続ける日本の姿と合わせて描きだしていく過程は見やすく小気味いい。派手目のダンスも90年代だよねそれと云えば確かにそうなのだけど、若い役者が躍動する姿を見るのは、120分の芝居でちょっとぐらいあってもいいし、なんせ彼らは見目麗しいのです。
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